05.脱出
「じゃあ俺はそろそろ……」
俺は静かにフェードアウトしようと思ったが、「まあ待て」とローランドさんに捕まった。
「ギルドへの報告をしなくてはならんからな。もう少しだけ付き合ってくれ」
「あ、はい」
こうして、俺は強引に受付があるというところまで連れてこられた。
受付にはミニスカートの綺麗なお姉さんが受付に立っている。カウンターはテーブルの様になっている為、ミニスカから出ている長い足を拝むことができるようになっている。
これはきっと冒険者を呼び込むための罠に違いない。
そんな妄想を繰り返している間に、疾風の5人は結果の報告と素材の提出を行った。珍しい素材もかなりの量あったようで、見物の輪が出来ていた。
そのままギルド長に挨拶すると伝え、カウンターの横をすり抜け奥へと歩く。俺は引きずられるように同行を強要された。
「あの、ローランドさん、俺はあまり面倒事は困るのだけど……」
「なーに、ちょっと挨拶するだけだ。それに、冒険者登録もするんだろ?ギルド長と面談しておけば優遇もされるし、俺の顔も立てて少しだけ付き合ってくれ」
「わ、分かった。少しだけだそ?」
その後、乱暴に扉をノックしたローランドさんと一緒にギルド長の居る部屋に入り、ピエールという髪が薄くなったおじさんと対面した。こう見えても元Sクラスだというギルド長に、ローランドさんが俺に助けられたことを伝えた。
「本当に1人で10階層にいたのか?」
ギルド長に睨まれる。
一応、俺の指には偽装の指輪があるので、もし鑑定スキルがあっても能力値を100分の1に見えているはずだ。
「そうだな。それなりに強いが、さすがに一人で10階層となると疑わしいが……」
どうやらそれでも少し強い程度で見られるらしい。
鑑定スキルがほしいなと切実に思った。
証拠を見せろといわれたので今度は控えめに、10階層で助け出す直前に手に入れたダークウルフの毛皮を出した。
素材を確認したギルド長は「たしかに……」と驚いてはいるが、そのギルド長にローランドさんが耳打ちをする。嫌な予感は的中したようで、引き攣った笑顔のギルド長が、「他にも、あるのだろ?」と優しく声をかけてくる。
俺はため息をつきながらいくつかの素材を適当に取り出した。
一つだけ77階層の4本角のブラックオーガ(闇)の魔石を入れておいたのは出来心だった。
ギルド長はオーガの魔石を見て……そのまま白目を剥いて気絶した。
室内は大騒ぎになってしまったが、55階層で獲得したスキル、超回復により正気に戻ったギルド長に、出所は内密にしてもらう条件で出した分については買取してもらうことを了承した。
「現金払いがいいなら買い取り金額は安くなるが……」
そう言って手を揉みながら言ってきたがそれを了承する。
即座に机の下から金貨がぎっしり詰まった袋が出てきてそれを手渡された。中には金貨が300枚程度入っているというが、数えるのが面倒だった俺はそれを無造作に次元収納にほ放り込んだ。
ギルド長の部屋を出ると俺は疾風の5人に「この世界について詳しく聞きたい」と伝える。
「じゃあ私の宿に来い!」
顔を赤くしたレベッカに誘われる。
他の4人は「まあ頑張れ」と苦笑いをしていた。
俺の腕にはレベッカの柔らかなふくらみが押し付けられ、抗う事ができずにお持ち帰りされてしまった。
レベッカに連れられたのは王都一のホテルだという場所の上階であった。
そう言えばゲームでもこんなホテルが有ったなと別の事を考えて気を散らしていた。金はかかるが体力なども一気に回復し、その上で1時間の全能力向上のバフが与えられるシステムであった。
まあ10%程度のバフだし装備に頼れない初心者向けのオマケ機能だった。
大きめの部屋のソファーに2人並んで座ると、この世界の事を色々と教えてくれた。
レベッカは常識をまったく知らない俺に驚きながらも、丁寧に俺の質問に答えてくれた。だが、俺の腕にはずっと密着してくるその心地よい柔らかさと、女性特有であろう香りが気になり色々とやばい。
そう言えば、と最初に助けた時のあの手の感触も思い出してしまう。
童貞の俺には刺激が強すぎる。
ここは一旦離脱して……
「あ、今日はもうそろそろ、世話になったな。また後日、お願いむぐっ」
気付けば俺の唇には柔らかいレベッカの……
真っ赤な顔のレベッカにそのまま押し倒された俺は、大した抵抗もできずに初めての朝ちゅんを迎えた。
天国だった。
朝日に照らされる中、薄手の布団で胸元を隠すようにして顔を赤らめるレベッカがハニカミながら「おはよう」と挨拶をする。
さてどうしたものか……
俺は、覚悟を決めてレベッカに秘密を打ち明けた。
俺が転生者であること、ダンジョンの最下層に送られたこと、天賦の特性で何とか生き残れたこと、今は多分人外のような強さを身につけたこと……そして勇者に、さらには王国に復讐をしなければいけないことを話した。
レベッカはそれを聞き頬を伝う涙を拭った後、笑顔で「私も連れてって」と言ってまた唇を合わせた。
そのまま彼是といたしてしまった後、小腹が空いたと生肉を出し食べ始める俺。
レベッカも当然ながら驚いたが、俺が食べているのを見て一緒に食べ始めた。恐る恐る食べた一口目と違い、二口目からは鼻息荒くガツガツと食べていたのでお気に召したのだろう。
お腹を満たした後、部屋を出て他の4人と合流する。
合流する為にギルドまで歩きながら、個別チャットができることも知る。ゲームの世界の様な仕組みに胸躍らせ、高額なマジックアイテムではあるが、金貨20枚程度で買えると聞き、後で一緒に選びに行こうと話していた。
ギルドで合流した俺たちを見て4人は色々と悟ったようだ。
確かに腕を組み、少し内またで辛そうにして歩いているレベッカを見れば一目瞭然だろう。
カトリーヌとローザも加わり3人でキャーキャーと盛り上がっていた。
その後、ギルドの売店で念願の通信用の板のようなマジックアイテムを購入。オマケは無かったがそれぞれとフレンド登録をしておく。そして掲示板などの存在もしっかり確認しておく。
そして、いずれは別行動になること、レベッカもそれに着いて行くことをみんなには伝えておく。特に女性陣は寂しそうではあったが、納得はしてくれたようだ。
俺も「すぐにここを出るわけじゃないから」と伝え、一緒に昼飯を食べて別れた。
レベッカと一緒に部屋に戻ると掲示板を見る。
勇者についていくつもの書き込みがあった。
これは良いな。なんでも団長と呼ばれるものに余裕で勝てる力を手に入れたようだ。今はダンジョンに入って本格的にレベル上げを行っているようだ。
「レベッカ、騎士団長って強いの?」
「うーん、多分対人戦ならローランドより強いかな?」
やはり気は抜けない。
俺はレベッカに少しだけ出ると伝え部屋を出た。
そして転移でダンジョンの70階層へと移動した。
この階層はエンペラーリッチが多数の上位スケルトンを率いてポップするので数をこなすには最適だった。
次々に出現する魔物を狩ってゆく。
箱もいくつか落ちる中、休憩を挟みつつも10時間程度は狩ったのだろう。ホテルへ戻る頃には真夜中になっていた。
大量の素材は片っ端から次元収納に入れてある。
俺はホテルの廊下に戻ると部屋のドアをノックした。
暫くするとドアが開き俺の姿を確認したレベッカが抱きついてきた。戻ってこないかと思ったそうだ。そう言われ嬉しくなった俺は、抱きしめ返そうと思ったが、自分の匂いが気になった。
「ダンジョンに潜ってたから先に風呂に入っておきたい」
そうと伝えると結局レベッカも一緒に入ることになった。
長風呂になった。
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