絵画に感銘を受ける男に見られたい

歩きながら、考え事をしている。美術館。絵画。後ろで手を組み、一枚一枚、丁寧に見て周る。感情的な絵に、感銘を受けているタイプの男に見られたいので、凄く凄く、時間をかけて、顎に手を当て、遠くから全体を眺めたり、たまに何かに気が付いたかのように、絵に顔を近づけ、しかめっ面で一点を凝視したり、頷くか、傾げるかをしながら、丁寧に見て周る。「これもしかして」と、先程の絵との繋がりを感じ取ったかの様、急激に戻ったりする。後ろに続く客が、腫れ物を見るかのような目線で、僕を抜いて行く。その度「おれの方が感銘を受けている」という自信が生まれる。

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