未使用

 今年も師が走り出し、

 部屋の掃除をするついで、

 断捨離しようと心に決めて、

 クローゼットの奥までひっくり返した。

 むかし使っていたペンポから

 角張った消しゴムが顔を出す。

 ああ、これは君からもらったモノで、

 どこかの土産だったはず。

 微かに残る甘い匂いは

 記憶の中とおんなじだ。


 どうせなら、もっと早く気付きたかった

 私は君が好きだって

 誰か、教えてくれたら良かったのに

 私は君が好きだって


 居なくなってからじゃもう遅い。

 もう分かれたつもりなのに、

 楽しかった苦い記憶が、

 今、鮮やかによみがえる。

 はじめましての日に舞い戻り、

 今までの全てを消し去って、

 もう一回

 君と手を握りたい。

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