トジョーの読書研究録——それをどう自作に活かすか
途上の土
第1話 アルケミスト 夢を旅した少年
パウロ コエーリョさん作の有名な1冊。
羊飼いの少年が、ピラミッドに宝物があると啓示を受け、浪漫を追いかける冒険物語。
この本は、ストーリーが面白いとか面白くないとか、そういう読み方をする本ではない。
物語はもちろんあるのだけれど、ハラハラドキドキの展開を楽しむというよりは、『この物語から好きに学んでよい』といった自由な解釈が楽しかった。
俺は以前、聖書を読んだことがある。別にクリスチャンという訳ではないけれど、旧約聖書から新約聖書まで全部読んだ。どちらかと言えば新約聖書の方が好きだった。あと、旧約聖書で言えば、あの有名なノアの方舟の話が出てきた時は「おぉ〜! これが本場のノアか」と少し熱くなった。
このアルケミストという小説は聖書と似ているような気がする。物語としては、淡白で、少し味気ないけれど、その中に金言とか教訓とか、ハッとさせられることが散りばめられている。
しかもそれは啓発本みたく押し付けるように提示される訳ではなく、自分で気付き、解釈して、学ぶようにできている。
おそらく読む人によってこの本から得られるものは千差万別だろう。
人生観に新しい風を取り入れたい人にはおすすめの1冊。
一方、物語が好きで、ハラハラドキドキしたり、感情移入したりして楽しみたい、という人にはおすすめしない。そういう本ではない。
正直、この手法を俺の小説に取り入れるのはかなり難しい。というか、目指すところが違いすぎる。
ストーリーの面白さをメインに据えつつ、読者が何か大事なことを学び取る、なんて出来れば最高だが、なかなかにハードルが高い。
でも、ずっと思ってきたことだけど、小説の中で「えー知らなかった。なるほどなぁ」と思わせるような『少しマニアックな知識』が売れている本には必ずある気がする。
例えば殺人に使われた毒でもいいし、サバイバルで役立つ知識でも、ボブ・ディランの音楽に関する知識でもいいのだが、何か現実世界と繋がる知識が1つでも2つでも書かれていると、読者はある種の充足感を与えられる。
それが俺の作品——というか、なろうやカクヨムのほとんどの作品——にはない。
多分、取材とか下調べとかほぼ無しで突っ走るから、すべてが『自分の頭の中から出てきたもの』だけで完結してしまうのだろう。
結果として、『面白いけど、学ぶことは何もない』という事態に陥る。
まぁそれはそれで良いのかもしれないが、心に残る1作にはなりにくい気がする。
読んだ後に読者に何か一つでも『得るものがあった』と思わせることも、大事なことなのだと俺は思う。
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