第32話 これは自己満足

「お?もうそんな時間か?」


 新井さんから5時を過ぎたので上がりますとメッセージが届いた。

 4階層のジョブ部屋は危険がないと判断されたようで、今日は開放されていた。

 それでスキルポイントを貯める為に1日ここにいたんだけど、考え込んでいる内にいつの間にか午後5時を回っていた。

 まあ考えながらもジョブ部屋の出入りはちゃんとやっていたので、ポイントは0.9程貯まっている。

 夢のの1日15万円は今日も叶わなかったが、それでも13万円くらいかな?

 十分なので俺も帰ることにしよう。

 欲を言えば新井さんに換金してもらいたかったけどね。

 それは明日にしておこう。


「ポーション、か……」


 何を考えていたのかと言えば、小山の怪我のことだ。

 52階層に行けばポーションが手に入るかもしれない。

 各階層で2個は出るらしいので、手付かずの階層に行って、エリアを虱潰しに探せば俺でも見つけられるはずだ。

 今の俺ならそれぐらいは出来るはず……。

 だが問題なのはポーションを手に入れたとして、それをどうやって小山に使わせるかなんだよね。

 金はあるんだから、使わないのはやはり世間体の問題なのだろう。

 その説得する手段って言うのを今日は考えてたんだけど……。


「そもそも会うことすらできない可能性があるか?」


 ニュースでは日本に帰ってきて手術を受けるみたいな話をしていたけど、中学卒業以来連絡を取ってないので連絡先すら知らない。

 アイツはスポーツ推薦で甲子園の常連校のある県外に行ったからね。

 誰か知ってそうな人に連絡する?

 いや、中学の時の連中とは疎遠なんだよね。

 なんなら高校大学の奴等とも……。

 もうすぐ会社の同僚たちとも疎遠になりそうだな……。


「うっ。なんか悲しくなってきた」


 誰か、誰かいないのか?

 ガリ子は……、ダメだな。

 俺と同じく中学の連中とは疎遠だろう。

 そうなると小泉か?

 俺やガリ子とは違って。友達がたくさんいたからね。

 聞くとしたら小山が日本に帰ってきてからだろう。

 帰国はニュースでやるかな?

 ついでに泊っている場所とかも報道してくれるといいんだけどね。





「……行くか」


 準備万端と言うことで、玄関で靴を履く。

 自己満足なのかもしれない。

 小山本人はポーションを使うくらいなら引退した方がいいと考えているのかもしれないし、その意思を確認する前にこうしてポーションを取りに向かうなんて馬鹿のすることである。

 でも確認してから探しに行くと見つからなくなるのが俺のパターンだからね。


(色々説得する方法も考えたけど、受け取らなかったらその時は自今満足だったでいいさ……)


 あれから数日が経っている。

 行くと決めてから色々準備期間していたのだ。

 まず地図やら食料の準備を始めたんだけど、52階層まで行くとなると流石に新井さんには聞けなかった。


「51階層のボス部屋がなぁ」


 52階層に向かうに当たって色々と調べている内にまた一つ大きな問題が出てきた。

 もちろんボスモンスターではない。

 たぶん、そのクラスでも一撃だろう。

 じゃあ何が問題なのかと言うと、倒した後、そいつが復活しないということである。

 毎年1月1日に世界中にあるダンジョンは構造が変わり、宝箱と各ボスが復活するのだが、裏を返せばそれまでは各階段を守るボスは復活することはなく、誰でも次の階に進むことが出のだ。

 こっそりやるつもりなのだが、その内誰かが51階層の階段の部屋にボスがいないことに気が付くだろう。

 それが発覚した時に近々で俺がその辺のことを調べていたとバレるのがマズい。

 堺達のこともあったし、レベルはますます内緒にしておかなければならないことになったからね。

 平松警部には疑いの目を向けられているし……。


「という訳で取り出しますのはこの頭巾。これを被れば……」


 あら不思議。

 どこからどう見ても不審者です。

 本当にありがとうございました。

 今までの俺のならこの格好で家を出た瞬間に捕まるところだけどね。

 今の俺はレベル9999。

 外でも999相当。

 もう道を歩かずに家の上をピョンピョン移動していくので、見つかる可能性は低い。

 可能性が低いってことは俺にとっては100%!

 だがようは誰かに見られても俺だとわからなければいいし、警察に職質されなければ問題無しである。

 今日は新居の方なので直ぐそこだからね。

 じゃあ、いざ52階層へ!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る