第8話  特訓の果てに⁉ 弱点を乗り越える絆!

 ルミナとの共演を果たしたリリカとステラは、そのステージで自分たちの限界を感じつつも、観客の温かい反応に自信を得ていた。


 だが、次のステージに向けてさらなる成長を目指す二人は、互いの弱点を克服する必要があると考えていた。


「リリカ、次はもっとレベルアップしないとね。この前のステージで、まだまだ自分たちに足りない部分が見えたから」


 ステラはリリカに真剣な表情で話しかけた。


 リリカもその言葉に頷きながら、自分の弱点に目を向けた。


「うん。私、まだダンスのステップが安定しないところがあるし、もっと表現力を高めたい。でも、どうやって特訓したらいいのか……」


 リリカの悩みを聞いたステラは、リリカの手を取り、穏やかに微笑んだ。


「一緒に特訓しようよ。リリカには私にない強みがたくさんあるし、お互いに教え合うことで、もっと成長できると思うの」


 ステラの提案にリリカは嬉しそうに頷いた。ライバルとしてだけでなく、共に成長するパートナーとして特訓することに二人は意気投合した。


 リリカとステラは、毎日一緒に特訓を始めた。


 リリカはダンスのステップを完璧にするため、ステラの動きを観察し、細かい動作のコツを学んだ。


 ステラはリリカの柔らかい表現力と感情の込め方に感心し、それを自分のパフォーマンスにも取り入れようと努力した。


「リリカ、その動きはもう少し滑らかに、リズムに合わせて体を流す感じでやってみて」


 ステラがアドバイスすると、リリカはその言葉を胸に動きを調整する。何度も繰り返すうちに、リリカの動きは徐々に滑らかになり、自分でも驚くほどの成長を見せ始めた。


 一方、ステラもリリカから多くを学んでいた。特に、観客との心の繋がりを感じさせる表現力はリリカの得意とするところで、ステラはその感覚を掴むためにリリカに質問を重ねた。


「リリカ、どうやってそんなに自然に感情を表現できるの?観客も自然と笑顔になるような」


 リリカは少し考えたあと、ステラに答えた。


「私は観客との一体感を大切にしてるんだ。ステージに立つときは、自分も観客の一部になったつもりで、みんなと一緒に楽しもうって思うの。だから自然と心が繋がる感じがするんだよ。」


 その言葉に、ステラは新たな視点を得たような気がした。ステラ自身は、歌や踊りのクオリティをいかに高めるかを常に考え、そのために全力を注いできた。自分が納得するパフォーマンスができれば観客は喜んでくれると考えていた。


「私はいつもいかに上手く立ち回るかばかり考えてたけど、リリカのやり方を見てると、一体感も大事なんだなって思うようになった」


 ステラはリリカの自然体な姿勢と、自分の内側から溢れる感情を大切にするアプローチに感銘を受けた。


 そして、自分のパフォーマンスにもその要素を取り入れることを決意した。


 特訓が進む中で、リリカとステラはそれぞれの弱点だけでなく、曖昧な記憶についても話すようになった。


「私たち、前にいた場所のことはあまり覚えてないよね。何か大事なことを忘れてるような気がするけど、それが何なのか思い出せなくて…」


 リリカが静かに告白すると、ステラも同じように自分の心の内を打ち明けた。


「そうなの。私も、自分が何者だったのか、何をしていたのかがぼんやりしてて。でも、この世界で何かを見つけた気がするんだ。それがリリカとの出会いかもしれないって」


 リリカはステラの言葉に驚きつつも、同じような気持ちを抱えていることに安心感を覚えた。


 リリカもまた、記憶の断片の中で、猫をかわいがっていたことや、メイド服姿の自分を思い出すことがあった。


「私もね、時々思い出すの。猫が好きだったこととか、メイド服着て楽しんでたこと。でも、それ以外で何をしていたのか、詳しいことは覚えてないんだ。」


 ステラはリリカの話をじっと聞きながら、共に曖昧な記憶を抱えていることに共感した。


「リリカ、それでも私たちがここにいる理由を見つけられるかもしれないね。曖昧な記憶でも、それが私たちの力になっているんじゃないかな」


 リリカはステラの言葉に深く頷き、自分の中にある断片的な記憶も、きっと何かの意味があるのだと信じることにした。


 特訓の日々を経て、リリカとステラは自分たちのパフォーマンスが明らかに向上しているのを感じていた。


 ダンスのステップは滑らかになり、表現力も豊かになった。


 特訓の中で培った絆が、二人のパフォーマンスに新たな輝きを与えていた。


「リリカ、私たちならもっと高く飛べるよ。これからも一緒に頑張ろう」


 ステラの言葉にリリカは笑顔で応え、二人は次のステージに向けて新たな決意を固めた。


 今回の特訓で得たものは、単なる技術的な成長だけではなかった。


 互いの弱点を補い合い、支え合うことでしか得られない強さと自信を手に入れたのだ。


「うん、これからも一緒に成長していこうね、ステラ!」


 夕方の練習場で二人は軽くハイタッチを交わし、満足げに微笑んだ。


 リリカとステラの間に芽生えた友情は、ただのライバル関係を超えて、真のパートナーシップへと進化していた。


 これからも二人の挑戦は続くが、リリカとステラは互いに手を取り合い、どんな困難にも立ち向かう準備ができていた。新たな目標を胸に、彼女たちは次のステージに向けてまた一歩踏み出していく――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る