早百合の告白

 空港の中に入り、周りを見渡す。

 一回深呼吸しよう。久々に全速力で走ったな。一向に落ち着かない心臓。

 ふうー。はー。

 深い深呼吸をする。

 そして再び周りを見渡す。

 奥側に一人で寂しそうに座っている早百合を発見する。

 まるで迷い込んだ天使のように美しいけど、どこか不安そうにしている。

 俺は、ゆっくりと近づく。

 近づくにつれ、早百合が震えているのが分かる。最初から一緒に行けばよかったよな。

 本当に一人で行くんだな。早百合の周りには誰も居なかった。お姉さんはどうしたんだ。今は考えないでいよう。今は早百合と向き合う時間だ。

「よ」

「なんで、なんで、なんで来たのよ」

 震える声で言う。

「早百合を選ぶよ、一緒に行こう」

 手を伸ばす。けど早百合は俺の手を無視する。

「それは、私が可哀そうに見えたから」

「違うよ」

「じゃあ、一番悲しむと思ったから?」

「違うよ」

「じゃあ、なんで、なんで来たのよ、せっかく諦めたのに」

 小さな手で俺を叩く。

「ただ、考えたんだ早百合が隣に居ないって考えてたら無理だった」

「な、なによ、何よそれ」

 今にも溢れそうな目で俺を見る。

「本当だ、いつも楽しそうで、いつも笑っていて、必ず隣に居てくれる。そんな君が、二か月間いなくなるって考えるのが無理だったんだ」

「ばか、ばか、ばか」

 俺を叩く早百合。

「だからさ、一緒に行こう」

 俺は手を伸ばす。

「私はまた迷惑を掛けるかもよ。まして、二か月間一緒なんだよ。こんなどうしようもない私だよ、それでも、それでも、いいの」

 泣きながら言う早百合。

「うん。もし居場所がなくなるかもって不安なら俺が絶対になくならな居場所を作ってやる。ずっと笑っていられる場所を作ってやる。だから、俺の手を掴んでくれ。けして離すことも、無くなることもないから、俺の手を掴め」

 震えている手で俺の手を掴む。

「ねえ、拓哉、私拓哉のことが好きだよ」

 

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