藤波志保
藤波志保はゆくっりと語る。
私は、中学の時好きな人がいた。その人は、誰にでも優しかった。
私は、静かな人で、友達も少なかった。こんな私でも彼は優しくしてくれた。それが、嬉しかった。
いつしか、彼とはよく話すようになっていた。
彼と、私は住む世界が違った。
誰にでも優しくて、スポーツ万能で勉強もできる。完璧な人だった。
それに比べて、私は地味で勉強もあんまりできない、もちろんスポーツも苦手。
まるで、天と地だった。それぐらい差があった。
ある時、彼と隣の席になったの。私は、嬉しかった。彼と、話せるって、気持ちが高ぶっていた。
授業中も彼と話してたの、それから、毎日が楽しくて。彼と会うために学校に行っていたの。
幸せだった。ただ、彼と話すのが幸せになってた。
私は、休日に彼の試合を観に行ったの、その時彼が怪我をしたの。
怪我をさせた人を殺そうかなって思った。私の彼に何をしてるのって、怒りが沸いた。
その時に、気づいたのこれが恋なんだって。
彼だけを愛して、その他の人は邪魔者。彼の邪魔をするのは全員敵って。これが恋なんだって。
私の気持ちはどんどん大きくなっていった。
彼は優しいから女子の友達も多くてね、嫉妬もした。私の彼と話さないで、誰も近づかないでって。そんな気持ちしかなかった。
そして、私は彼に告白しようと思ったの、私の気持ちは絶対に間違ってない、愛をもらってくれる。
告白しようと思って彼を教室に呼んだの、けど、いくら待っても来なかった。
次の日に何があったの?って聞いたの、そしたら、「お前ってキモいよな」って言われたの。
そう、彼は優しい人ではなかったの。性格が悪くて私を弄んでた。でも、私もどこかでわかってたの、こんな私に優しくしてくれる人なんていない。
こんなに性格が悪い彼がまだ好きだった。私はおかしくなってたの、好きで、好きで、たまらなかった。
彼から話をかけられることはなくなった。そして、関係は終わったの。
でもよ、でも、高校に入学した時、彼に似てる人を見つけたの、それが、真治拓哉、君だったの。
初めて見たとき、興奮した、もう一度彼を好きなれる。そんな考えで頭がいっぱいだった。
でも、君は優しい人だった。また、同じ展開になってしまう、何とかしなきゃって思って噂を流そうと思った。
君を地獄に落とせば私の隣にいてくれる。そう思って、君を地獄に落として私を愛して欲しいかった。
君は選んだ理由は彼に似ていただけ。つまりさ、私君なんか好きじゃないの、ただ、彼が好きなだけで、拓哉なんかに興味なんかないんだよね。
話し終えると酷く泣いていた。
志保の話を聞いて俺は悲しい気持ちになっていた。俺にできることは何があるのか、いや、なにもない。
なにもないんだ。ただ、志保が目を覚ますしかない。俺は、志保の好きだった人じゃなくて、真治拓哉で、全くの別人だということを。
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