第13話 ギルドランク
自分一人で生活するのは、何か変な気味がする。社畜時代は一人で生活するのが当たり前だったが、転生後は家族で生活していたからな。家族と過ごすことで得られる温かさや安心感を改めて感じていたから、今の一人の生活がより寂しく感じるのかもしれない。
この前の洞窟で採集した木の実や果物を使って、朝食を簡単に済ませた。もともと料理の腕前はそこまでではないが、家族と一緒に食べることで得られる満足感は大きかった。今はその温かさが欠けているが、頑張って前に進むしかない。静かな宿を後にして、ギルドへ向かう準備を整えた。
市場では商人たちが活気に満ちた声を張り上げ、色とりどりの商品を売り込んでいた。新鮮な野菜や果物、手作りの工芸品など、見るもの全てが目を楽しませてくれる。道端では子供たちが笑い声を上げながら遊んでおり、その無邪気な様子に一瞬心が和む。そんな光景を横目に見ながら、俺は足早にギルドへと急いだ。ギルドでのクエストが今の生活の糧であり、そこで得られる報酬が生活費となる。
今回のホーンラビット討伐による報酬は、ホーンラビットの角と銀貨4枚。正直言って、これだけでは生活費を賄うには全然足りない。ホーンラビット討伐はかなりの労力を要したが、その報酬は期待したほどではなかった。特に、銀貨5枚を支払って宿を25日間借りているから、残りの23日間で銀貨30枚を稼がなければならない計算だ。クエストの難易度が上がるにつれて報酬も上がるとは思うが、それでも簡単な道のりではない
ちなみに、この異世界での通貨は
銅貨 10円
大銅貨 100円
銀貨 1千円
金貨 1万円
となっているらしい。あくまでも、俺の予想に過ぎないが、現実世界と照らし合わせるとこうなる。つまり、銀貨30枚は3万円ということだ。3万円でもかなり鬼畜だけどな...。
ギルドに到着し、受付に向かう。受付の女性にホーンラビットの角を渡すと、男性は、
「お疲れ様だ。ホーンラビットの角だな。今確認してくるから待ってろよ」
と言った。しばらくして、
「これがホーンラビットの角の報酬の銀貨2枚だ」
と銀貨を手渡してくれた。2枚か。できればもうちょっと欲しかったが、まあ良いだろう。
「どうだ? ギルドには慣れてきたか?」
「あぁ。最高だ」
「それは良かった。お前のこのままギルドランクアップを目指せよ」
俺は、その後もクエストを難なく達成していった。
2週間後...。
俺はこれで、ちょうど10つのクエストを達成した。採集クエスト、討伐クエスト、探索クエスト、配達クエストなど、様々なクエストに挑戦し、そのたびにスキルと自信を少しずつ積み重ねてきた。最初は簡単だと思っていたクエストも、次第に難易度が上がり、手ごたえを感じるようになった。森の中で珍しい植物を探したり、強敵のモンスターを討伐したり、失われた遺跡を探索したり、そして重要な物資を届けたりと、毎日のようにクエストに挑戦していた。
それでも、日々の生活は厳しい。クエストの報酬は思った以上に早く消えていき、日用品や食べ物の購入に使うと、あっという間に残金は減ってしまう。現在、手元に残っているのは銀貨10枚のみだ。宿代や食費、装備の補充など、出費はかさむ一方で、稼ぎが追いつかない。次のクエストではもっと効率よく稼ぐ方法を見つけなければ、すぐに手持ちの銀貨も底をついてしまうだろう。
このペースでは、銀貨30枚を稼ぐのは容易ではないが、何とか頑張っていくしかない。
今日も今日とて、ギルドに向かう。
「この前のクエストの報酬を受け取りに来たんだが」
と受付に向かい声をかけると、受付の男性がこちらを見て、
「おう。待ってたぞ。これが報酬の銀貨3枚だ」
と手渡してくれた。銀貨3枚...。こんなにチマチマ稼いでいたら30枚を貯めるのは厳しい気がしてきた。
「ところで、ヨウマ。お前、もう10つのクエストを達成してるだろ?」
と男性が続けた。
「あ、あぁ。それがどうしたんだ?」
俺は少し訝しげに答えた。
「FランクからEランクに上がるための、ランクアップクエストを受けるためには、クエストを10つ達成しないといけないんだ」
と彼は説明した。
「それってつまり...」
「お前にもランクアップクエストを受ける権利があるということだ」
受付の男性は微笑みながら言った。
「ランクアップクエストか...」
俺は少し緊張しながらも、挑戦してみたい気持ちが強くなった。
「どんなクエストなんだ?」
「今回のランクアップクエストは、スケルトンの討伐だ。スケルトンは不死のモンスターで、普通の攻撃では倒せない。お前ならきっとやれるはずだ」
と受付の男性は自信を持って言った。
「わかった。やってみることにするよ」
俺は、決意を新たにし、クエストの詳細を受け取り準備を始めた。
目的地は街外れの古い墓地。そこに長い間封印されていたスケルトンが蘇ったという報告がある。俺は装備を整え、心を落ち着かせて墓地へ向かった。
墓地に到着すると、冷たい風が吹き抜ける中、不気味な静寂が辺り一帯に漂っていた。朽ち果てた墓石が立ち並び、夜空に浮かぶ月明かりがそれらを幽かに照らし出す。墓石の影がゆらゆらと揺れ、まるで亡霊が舞い踊っているかのように見える。この不気味な雰囲気に包まれながら、俺は緊張を隠しつつ歩みを進めた。
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