第8話 試合


「まだまだ!!」


 まだ朝の森。小鳥やらが飛び交うもさえずりは俺等の戦いでかき消されていた。


 再び「マナショット」を放つが、またもや彼女は素早く回避し、再び風の刃を生成してこちらに向かってくる。


「ウィンドウブレード!!」


 風の刃が迫ってくる中、俺は「リフト」を使って素早く浮かび上がり、風の刃を避ける。直撃は避けたが、暴風が俺を襲う。俺はその勢いで後方に吹き飛ばされる。木にぶつかる瞬間に「テレポート」を使い、瞬時に移動する。


 こんなのの繰り返しで、一向に責められずに俺は頭を悩ませていた。


「___自分の手の内を見せずに、私の魔力を消費させる作戦ね」


 ん〜。なんか違うんだが...。そんなつもりは全くない。


「さ、流石だな。俺の作戦がわかるとは」


 ここはできるだけ悟られないようにと帳尻を合わせてみたものの、その作戦結構よくね?って思っているところに


「じゃあ、ここからは本気でいくよ!!」


「え?」


 その瞬間、俺の頬を何かがかすめ、浅いが切れる。


「ウィンドウエッジ。風属性の中級魔法よ」


 中級魔法!? いくらなんでもおかしいだろ...!

 冗談はよしてくれよ…はは。


「まだまだいくよ!!」


 風の斬撃が俺を襲う。リインフォースでなんとか深い傷は避けているが、斬撃が見えない。どこから斬撃が襲うかが予測できない。どうすれば...。


「思いついたぞ。リリアに勝てる方法を...!」


 リリアのウィンドウエッジから学んだ。俺も同じように見えない攻撃を繰り出せば、相手も対応できなくなるはずだ。


「テレポートとマナショットの合成魔法。マナポートショット!!」


 俺にしては良い名前が浮かんだ。マナショットをテレポートによって瞬間移動させることによって、相手はどこからマナショットが来るかわからない。例えリリアだろうが、どこから攻撃が来るか、分からなければ、対応ができないだろう。


 そう思っていたが、それは誤算だった。


「シャドウステップ」


 リリアは、シャドウステップを使い、魔法をすべて避けた。どんだけ強くなってんだよ...。マジで。


 俺が負けを認めようとした時だった。


「私の負けだよ。もう魔力切れで魔法が使えないよ」


 あ、勝っちゃたの?? 本当に奇跡だな。


「さすが、ヨウマ。こうなることを予想して、戦ってたんだね」


「あ、ああ。まあな」


 適当に戦っていただけだが、良いとするか。


 試合が終わり、俺達は家に帰っていた。リリアは、疲れながらも、俺に話しかけてきた。

 

「ヨウマも凄い強くなったね。驚いちゃったよ」


「ありがとう。リリアもかなり強くなってるよ」


 リリアがここまで強くなってるのは本当に驚いた。


「教会でのスキル鑑定まで、残り二週間だけど、頑張ってね」


「おう!!」


 家に入ると、ミルラとテイラが既に夕食の準備をしていた。


「今日は遅かったな。どうせリリアと遊んでたんだろ」


「まあね」


 家族には、リリアの事を半年前に話している。隣の家ということで、親との交流もあるらしい。


「ヨウマ。教会の事は知ってるか?」


「一応知ってるけど」


 そういえば、親からは教会の事を話されていなかったな。


「10歳になると、教会へ行き、スキルを鑑定してもらうんだ。スキルによって未来が変わるといっても過言ではない」


「わかったよ。父さん」


 俺はそう言って、自分の部屋へ戻り眠った。




___2週間後...




 翌朝、俺は早起きして教会へ向かう準備をしていた。


「おはよう。父さん、母さん」


「おはよう。今日は早いな」


「今日は教会に行かないといけないから」 


 そう。今日はスキル鑑定の日だ。俺は、緊張と期待が入り混じっていった気持ちで家を出た。


 家を出ると、隣にはリリアの家族が教会へ向かう準備をしていた。


「おはよう。ヨウマ。今日はスキル鑑定の日だけど、どう? 緊張してる?」


「そりゃあ緊張してるよ。だってこの結果で、冒険者ギルドに入れるかも決まるし」


「そうだね。お互い良いスキルを獲得することを祈ろう」


「あぁ」


 リリアはまだ準備をしているようだったから、俺達は先に教会へ向かった。


 教会へ着くと、既に大勢の人たちが集まっていた。見るからに富裕層の子供や、貧しそうな子供まで、様々な子供たちが今日のスキル鑑定のために、教会へ訪れていた。みんな緊張しているようだ。


 お。リリアも到着したみたいだぞ。


「また会ったね。ヨウマ」


「おう。たくさんの人がいるな。いざ目の前にすると凄い緊張するな」


 ヤバい。緊張しすぎてお腹痛くなってきた。


「それでは、スキル鑑定の儀式を始める」


 始まったか...。


「じゃあ、俺が一番初めだ」


 誰かが、神父の前へ向かう。 神父が持つ水晶が光だし、やがて周りが光に包まれていく。


「これで、あなたのスキルを確認できるはずです」


「やった!! Cランクスキルだ!!」


 周囲からは拍手が聞こえる。なるほど、スキルは自分しかわからないのか。


 一つ言い忘れていたが、スキルにはランクが存在している。上からA、B、C、D、Eの順番だ。Cランク、まあ平均のランクってとこか。


 そいつに続いて、色々な人たちが鑑定されていく。


「私の武器はDランクか...」

「そんな...! Eランクなんて」


「あんまCランク以上の武器は出ないな」


「そうだね。そろそろ私も鑑定してもらいに行こっかな」


「本当か!? 頑張れよ。リリア」


「うん!!」


 リリアは風属性魔法を使えたりと、才能があるからCランク以上が妥当か。


 リリアが神父の前に立ち、辺りが光に包まれる。 


「え? Aランクスキル...」


『えぇ〜!!』


 周りの人がざわついている。Aランク。スキルの中では、最も位の高いスキル。この世界でAランクスキルを持っているひとは3000人にも満たないという。


 リリアが俺のところへ向かってくる。


「ヨウマ!! やったよ。Aランクだ!!」


「やっぱり凄いな。俺も続けて鑑定しに行くか」


 やっぱり、めっちゃ緊張する〜。 


「大丈夫。ヨウマは凄い才能を持ってるから」


「ありがとう」


 俺は、神父の前へ向かう。


「お願いします」


 水晶が光だし、辺りが光に包まれる。


「こ、これは!?」


 この瞬間、俺の持っているスキルが判明した。

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