俺を殺そうとする大大大好きな殺し屋に愛の告白をしてみたところ、同棲することになりました!

さい

第1話 愛の告白

 俺こと坂本秀太郎、高校二年生には好きな人がいる。

 名前は黒宮玲奈。

 まるで雪のように肌は白く、それと対で闇のよな真っ黒でサラサラな長い髪。

 スタイルはモデル級。

 そんな彼女はもちろん、モテモテだ。

 よく俺は彼女のストーカーをする。

 犯罪だってことくらいわかっている。

 でも、抑えられないほどに俺は彼女が好きなんだ!!


 はあはあ、と息を荒くさせながら俺は走る。


 五月下旬。

 放課後、今日もいつものように彼女のストーカーをしていた時のことだった。

 

 俺は見てしまった。

 路地裏、彼女が一人のサラリーマンをナイフで殺している現場を。


 同時に俺は彼女と目があってしまった。


 嘘だろ……。

 流石にそんなこと……。

 黒宮さんが人を殺す?

 一番遠い存在だろ。

 なら、俺が見たのは?

 幻覚?

 夢?


 頭の中が混乱する。


 路地裏から出ようとしたその時、目の前には、


「見たよね?」


 黒宮さんの姿があった。


 次の瞬間、目にも止まらぬ速さで彼女の手に持つナイフが俺の腹部を突き刺した。


 痛い。

 当たり前だ。

 お腹にナイフを刺されたのだから。

 なのな、こんな目の前に黒宮さんがいるという事実に痛覚が麻痺してしまったようだ。

 一瞬にして痛みが消えていく。


 あー、可愛い。

 本当に可愛いなあ。


 俺は彼女を抱きしめた。


「黒宮さん……俺、黒宮さんのことが」


 やっべ、目の前がクラクラするなあ。

 死ぬのかな俺。

 どうせ死ぬなら、死ぬ前に伝えよう。


「大好きです」


 全て打ち明けてしまおう。


「好きになってからAVを観るのをやめました。黒宮さんを妄想しながらシコるようになりました。そのくらい俺、黒宮さんが好きなんです。」

 

 キモイことぐらいわかっている。

 しょーがないだろ。

 好きな人以外でシコるだなんて失礼すぎるだろ?


「そのくらい俺、好きなんです。俺と……」


 彼女を見ると、いちごのように真っ赤になっていた。


「嬉しい……」


 返り血ではない。

 明らかに皮膚が赤くなっていた。


 照れてる黒宮さんも本当素敵だなあ。


 俺は笑顔で言った。


「俺、黒宮さんを本気で幸せにできる自信があります。俺と付き合ってください!!」


 と。


 同時に目の前が真っ暗になった。



「ん……」


 後頭部に何やら柔らかい感触がする。


 目を開けると、目の前には黒宮さんの顔があった。


 ということは、この感触は……。


 黒宮さんの太ももだった。


「お、おはようございます……?」


 慌てて立ち上がり、俺は顔を真っ赤にしながら、


「く、黒宮さん!?」


 俺は見知らぬ部屋で目を覚ました。


「おはよう、シュータロー」


 顔を赤くしながらそう言う黒宮さん。


「いて」


 腹部に激痛が走る。


 そうだったな、黒宮さんに刺されたんだった。


「ごめん、刺した」

「ううん、愛の傷だから大丈夫」


 そう、これは黒宮さんから俺への愛の傷なんだ。

 きっと一生消えないであろう、愛の傷!!


「殺しの現場見られたから、殺そうとしちゃった。けど、愛の告白を聞いて私……」


 手で顔を隠して、黒宮さんは、


「嬉しくなっちゃった。私もショータローが好き」

「ほ、本当!? え、てか、なんで俺の名前を……」

「殺し屋たるもの学校の人の名前は全員覚えてる」

「すご!!」


 おいおい、こんなことあるのかよ!?

  

「じゃあ、俺と付き合ってくれるんですか!?」

「うん」


 しゃあああ!!

 あー、よかった。

 刺されてよかったあああ。


「でも私、付き合い方全くわかんない……今までに付き合ったことなんてないから……」

「本当!? えっ、めちゃくちゃ嬉しい。初めての彼氏になれるだなんて!! 俺も黒宮さんが初めて彼氏です!!」

「嬉しい……。私、殺し屋だけど好きになってくれる?」

「もちろんですよ!! 大好きです!!」


 こんなことあるか普通?

 好きだった人が殺し屋でしかも、一度殺されかけたんだぜ?

 さらにそこから付き合うことになるだなんて。

 あー、俺は何で幸せ者なんだ!!


「じゃあ、今日から一緒に暮らそ」


 しかも、同棲するんだぜ?

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