呪われた我

いのさん

第1話 呪われの皇子誕生(1・禁忌の魔女)

 外は雷鳴が鳴り響きゴウゴウと風が吹きすさぶ夜に我はオーレライ帝国の帝王城の一室で第一皇子として産まれた。

 産まれ落ちると


「皇后様立派な男子で帝国の跡継ぎですよ。」


と言う声が聞こえた。

 それで産まれたという事は解ったのだが・・・産まれたばかりなのかあまり目が良く見えないが産婆・・・本当にしわくちゃ婆さん・・・の手から産褥さんじょくの疲れと髪が汗で濡れてはいたが美貌の女性に抱かされる。・・・う~んこの人が皇后様で我の母親か?


 前世での母親は早くに亡くなったが・・・???・・・エッ・・・我は転生生まれ変わったのか?

 思い出した我は前世では老衰で死んだようだ。・・・前世???・・・我は大岩流古武術道場の総帥大岩義明であり、強大な権力と富を手に入れてはいたが老衰・・・そう言えば100歳を越えて死ねば・・・!

 そうだその時後光がさしているにもかかわらず真白な姿の神が現れてこの世界に転生させられたようだ。・・・どうも前世では101歳の誕生日を迎えた日にいきなり木が枯れるようにして老衰で死んだ辺りの記憶しかなく天に昇って・・・行き真白な姿の神とのやり取りもあいまいなのだ。


 生まれたばかりの身体では我の思い通りに身体を動かす事が出来ず無闇にジタバタするだけだ。

 1週間後、我の生誕を祝う会が城の公式な式典や謁見を行う為に建てられている巨大な円形の建物で行われた。

 我の生誕を祝う為にと帝国各地に散らばって住む著名な魔女5人のうちの4人が集められていた。


 先ずは誕生を祝して皇帝は我に


『ヨシヤ・オーレライ』・・・ヨシヤて・・・義明と似てる!?


と名付けられた。・・・オーレライは帝国名でもある。

 次に我の為に集められた著名な魔女達は我に祝福の言葉と能力を与えてくれることになった。

 その著名な魔女達は一人目は我の額に手を置くと何やら


「○*%○#△*&$△・・・

 かの者に湧き出すような知恵を与えん!」


と唱えると我に本当に湧き出すような知恵を与えてくれた。・・・その時我は前世で培ってきた膨大なこの世界にはない知識を思い出した。

 またそのおかげでぼんやりとした視野が少しだけだが鮮明に見えるようになった。・・・一人目の魔女は我を驚いたようにして見つめると


「前世の記憶を持つ賢者様?」


つぶやいて熱い物にでも触ったかのように額から手をどけた。


 その呟きを隣で聞いていた二人目の魔女は少し引き攣ったような顔になり、何事か考えてから、ゆっくりと我の額に手を置くと


「○〇##△◇□&&$△・・・

 かの者に湧き出すような魔力と魔法の力を与えん!」


と唱えながら暖かな魔力を注ぎ込み始めた。

 確かに二人目の魔女の手から我の身体の中を何か暖かい物・・・これが魔力だと一人目の魔女からもらった知識がささやく・・・が体の中を通っていき魔法・・・我の固有魔法である風魔法・・・を覚えた。・・・体を通っていた魔力が体の中で大きく膨らみいきなりはじけた。・・・魔力を注いでいた魔女が膝をついて驚いて我を見て


「魔力が底なしになった!?本当に賢者様では?」


と呟いて彼女もまた熱い物に触れたかのように額から手をどけた。


 それを横で見ていた三人目の魔女もまた何事かしばらく考えて、我の額に手に持った魔法の杖を置き


「○**□$#%△*#&$△・・・

 この世界を救う勇者にならん。・・・かの者に勇者の紋を与えん。」


勇者の紋を魔法の力で魔法の杖の先を筆のように使って我の額に書き上げていく、勇者の紋が我の額に描きあがったのかその勇者の紋が我の額に浮かび上がる。

 周りで見守る人がざわめく、勇者の紋を書き終えた三人目の魔女が


「世界を救う勇者にならんことを!」


と唱えてがくりと膝をついた。・・・その途端不思議な事に眩しい程に光り輝く光の人型の人間が、他の人には見えないのか我の身体に入り込み聖(光)魔法が使えるようになった。

 これは二人目の魔女のおかげか?光の人型のおかげか?聖(光)魔法が使えるようになったのだが。・・・どんな理屈か解らないが光魔法が使えると理解したのだ。

 それに光魔法が使えると分かった途端、光の身体を持つ何かが我に向かってニコリと微笑み


『勇者ヨシヤよ、私の聖魔法を君に与えた。』


と言って聖魔法を残して天に昇っていくのが見えたのだ。

 そう言えば勇者とこの魔女が言うが天に昇った光の人型が勇者!?


 その時突風が吹いて頑丈に造られているはずの窓が


『バーン』


と言う音共に大きく開き、はじけ飛んだ。

 その嵐の突風とともに黒ずくめの怒りの形相の女が現れたのだった。

 その怒りの形相の女が


「禁忌の魔女たる妾をこの者の生誕の祝いに呼ばぬとは何たる不敬か。

 おやこ奴の額に描かれたのは勇者の紋か・・・勇者の紋は魔王の紋と表裏一体。

 妾からも誕生の祝いだ。

 勇者の紋を魔王の紋に書き換えてやるは。」


とニヤリと笑いながら手にした禍々しい黒々とした魔法の杖の先を我の額に置く。

 禍々しい黒々とした魔法の杖の先にドス黒い靄が集まり禁忌の魔女が



「💀💀💀✖✖✖○△◇・・・

 この世界を破壊する魔王にならん。・・・かの者に魔王紋を与えん!」


と勇者の紋の上をドス黒い靄によって魔王の紋へと書き換わり始める。

 我は勇者の紋が魔王の紋へと書き換わる痛みに


「フンギャギャギャ・・・」


と泣き叫ぶだけだった。

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呪われた我 いのさん @kiis907595

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