第311話 聖海の港街ティンポート



「長旅ご苦労さん……着いたぜ、人間どもの国によ……」



「ティンポにゃ」



「ティンポートだよ」



 テズキャット・リポカの港街アヘーツクを出発して丸二日、遂にオレたちは魔海と聖海を越えてシェンドラ王国へと帰ってきた。

到着したのはシェンドラ王国の王都アンスーラに最も近い港街、ティンポート。

ここの港で入国手続きをして街に入り、そのまま街道をまっすぐ進んで王都に入ることができる。



「あれが、王都アンスーラか……」



「でっかいわふ」



 聖海を背にしてティンポートの街を眺めると、背後に巨大テーマパークのような建造物が見える。

周囲を高い塀に囲まれ、その内部にメガネのパリミキみたいな洋風の城がそびえ立っている。

いやパリミキは通じないか……某浦安のネズミーキャッスル的なやつね。



「んにゃ? ホムラ見るにゃ! お城の上に金色の玉……キンタマが浮いてるにゃ!」



「略すな略すな」



「……キンタマ?」



 クロムが言うように遠くに見える城のてっぺんをよく観察してみると、たしかにそこには金色の球体のようなものがあり、ギラギラと光を反射しているのが確認できた。

オレにはあれが何だか分からないし、浮いているのかどうかも不明だが、視力の良いクロムにはしっかりと見えているのだろう。



「ジョーズはアレが何か知ってるか?」



「さあな……オレサメは仕事上、今回みたいに海を渡ってシェンドラ王国にもよく来るわけだが、港から先には行かねえからな……」



「まあ、それもそうか」



 テズキャット・リポカの魔城チェルノにはあんな丸っこいやつ無かったし、シェンドラ王国の王城ならではものなのだろうか。



「フジテレビの本社にゃ」



「お台場じゃねえんだよ」



 クロム曰く城の頂上に設置されているわけではなく浮遊してるってことだから、魔法か何かで浮かしてんのかな……



「まあ、行ってみればわかるか」



「まずは港にある入国ゲートで手続きだ……アンタらの活躍を祈ってるぜ……」



「ジョーズ船長、ありがとわふ!」



「世話になったな」



「いいってことよ……魔海が恋しくなったら、またオレサメとシャーチー86号の所に来い……」



 こうしてオレたちは魔海の運び屋ジョーズと別れ、久々にシェンドラ王国の旅路を再開するのであった。



 ―― ――



「えー、テズキャット・リポカからの渡航許可証の確認が終わりまして、こちら問題ありませんでした。続きましてギルドカードの確認を行ないます」



「マジかよ」



 ティンポートの港にある入国ゲートでシェンドラ王国に入るための手続きを行なっていたオレたち。

神魔将のクマコが直々に手続きしてくれた渡航許可証は問題なく確認が終了したが、なんと身分証代わりのギルドカードの確認もやらなければならないらしい。



「渡航許可証だけじゃダメなのか……?」



「テズキャット・リポカからのスパイの侵入を防止するという目的もありますから。提出いただいた渡航許可証の申請書類には、ロムロァン渓谷からテズキャット・リポカに入り、魔海・聖海を渡ってシェンドラ王国に戻ってきたことになっています。事実であればギルドカードにロムロァン渓谷の入出国ゲートの手続きログが残っているはずです」



「あ、そうなのか」



 いやそんなの残ってねえよ……キヴァと一緒に秘密の抜け道使って移動したよ……



「ま、マズいにゃ……このままじゃクロたち不法移民にゃ」



「移民ではないけどな」



 そんなことをヒソヒソ話しつつ、怪しまれないようにギルドカードは素直に提出する。

いざとなったらオレの魔力レベルバグり疑惑のある文字化けギルドカードで不具合扱いにしてスルーしてもらうか、巨獣化したセナに乗って強行突破するしか……



「えー……はい、ギルドカードの移動ログも問題ありません。入国許可証を作成するので少々お待ちください」



「えっ、あ、はい……?」



 あれ……なんか大丈夫だったな。なんで?



「あ、そういえば渡航許可証の備考にホムラさん宛てのメッセージの記載がありますよ」



「え、なんですかそれ」



「我がチェルノバッド研究所の技術は世界一ィィィィーーーーッ! って書いてあります。まあ、魔王軍特有のイキった落書きでしょう」



「…………」



 ビエンこれ、お前やったなあ……



「ログ改ざにゃっ!?」



「クロム、シャーラップ」



 こうしてオレたちは『正式に』入国手続きを終えてティンポートの街中に入ることが出来たのであった。

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