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 願った。

 一輝くんが早くここに来てほしいと。


 一輝くんに早くこの恐怖から救ってほしい。



 お願い‼

 一輝くんっ‼



「……結菜ちゃん」



 来てほしい、早く。

 一輝くんに。


 そう願っていると。

 その男の子が私の名前を呼んだ。



 なぜ知っているのか。

 男の子が私の名前を。


 そのことに驚いた、ものすごく。




 それと同時に。

 恐怖も感じている。


 知らない男の子。

 その子が私の名前を知っているなんて。



「あの……

 なんで私の名前を……?」



 驚きと恐怖。

 それらが混ぜこぜになりながら。

 訊いた、恐る恐る。

 その男の子に。



「『なんで』って……

 結菜ちゃんの名前を忘れるわけないじゃない」



「え?」



 その男の子の言葉。

 驚いた、ものすごく。


 だから出てしまった、思わず。

『え?』と。



「え?」



 そんな私に。

 驚いていた、その男の子も。



「結菜ちゃん、

 忘れちゃったの? 僕のこと」



 その男の子は。

 とても悲しそうな表情かおをして。

 私の方を見ていた。



「えっと……」



 そんな男の子の様子に困ってしまう。



「結菜ちゃん」



 私の対応に。

 ますます悲しそうな表情かおをしてしまった男の子。



「僕だよ」



「え?」


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