第43話 父の思い出、銀の剣
1474年5月、陽射しが柔らかく降り注ぐ京都。足利義政(33歳)は、庭のベンチに腰を下ろし、静かな時を過ごしていた。傍らには年老いた母(銀粉蝶)がいる。母、重子は倍賞美津子みたかったが、死後地獄で修業をして、顔を変えた。
周囲には彩り豊かな花々が咲き誇り、小鳥のさえずりが心地よい音楽を奏でていたが、彼の心には暗い影が漂っていた。
彼は目を閉じ、遥か昔の出来事を思い起こしていた。あれは1441年、嘉吉の乱の年。彼の父、足利義教(ガッツ石松)が赤松満祐(郷ひろみ)の手によって奪われた命の日だった。まだ幼かった義政にとって、その出来事は人生を一変させる衝撃的な瞬間だった。
あの日、義政は父のそばで遊んでいた。突然、城内に大きな騒ぎが起き、父が動揺した表情で彼を呼び寄せた。「義政、こちらに来るんだ!」その声は、慌ただしく不安を煽るもので、幼い義政には何も理解できなかった。
その後、城は混乱に包まれ、敵が城内に侵入する様子を目撃した。赤松満祐の影響力と野心は、父の周囲に多くの敵を生んでいた。義政は父の手をしっかりと握りしめ、運命を共にした。
義政の脳裏には、逃げる父の姿と彼を背負い、命を懸けて戦う毅然とした表情が浮かんでくる。しかし、その瞬間、壮絶な戦闘が繰り広げられる中で不意に響いた銃声、父の叫び声が義政の心を貫いた。その瞬間、世界は暗転し、彼は何もかも失ってしまった。
父の死は、彼の心に深い傷を残し、それ以来彼は孤独な戦いを余儀なくされた。父が築き上げた権力と安定は、一瞬にして崩れ去ったのだった。義政は自身の運命と責任を感じ、重荷を抱えながら成長していくことになった。
目を開け、義政は庭の花々に目を向けた。彼は過去を振り返り、一層の覚悟を新たにする。父の教えを胸に、自身の道を進む決意を固めていた。嘉吉の乱の悲劇は、彼に深い教訓を与え、今の彼を形作っていた。
「父上、私はあなたの意志を受け継ぎ、平和な国を築くために戦います。もう二度と、無意味な争いを繰り返しはしない」彼は心の中で誓い、静かな庭を見つめながら新たな未来のために進む決意を固めた。過去は消え去ることはないが、それを糧にすることで、見えるべき未来があることを義政は理解していた。
この日の静けさの中で、義政は自らの信念を再確認し、彼の足を踏み出す。彼の心の中には、父の無念を晴らすため、そして自らの運命を切り開くための強い意志が芽生えていた。
梅雨の京都、街は雨に煙り、湿気が肌を触る。足利義政は、ひときわ活気のある郭(くるわ)の中を歩いていた。商人たちが声を張り上げ、華やかな衣装を身にまとった女性たちが踊る中、義政の目は険しい表情を崩さなかった。今日、彼は交渉のために商人たちと会う予定だったが、ただの商談ではない。御所の安寧を脅かす暗雲が近づいていた。
突然、周囲に殺気が漂う。彼は敏感にその異変を感じ取った。何者かが彼の背後に迫っている。義政は素早く手にした剣を鞘から抜き放った。
「誰だ!」義政の声は、静寂の中に響き渡った。
その瞬間、影が彼の前に現れた。袴姿の剣客が、目を光らせながら立っていた。名も無き彼は、義政に向かって不敵な笑みを浮かべる。
「私は煙のような男、あなたの未来を見守る者だ。」彼の言葉には、ただならぬ強い意志が宿っていた。
義政は剣を構え、不敵な男に対峙する。彼は危険を察知し、真剣なまなざしでその動きを見極めた。この男こそ、京の裏社会を牛耳る存在であり、今まさに彼と和議を結ぶために現れたのだ。
剣客の名は影山(福士蒼汰)。彼は義政に静かに語りかける。「冗談ではなく、この血生臭い争いを終わらせるためには、あなたの力が必要だ。」
義政はその言葉の重さを理解し、構えを緩めた。「私に、何の得がある?」
影山は一瞬、微笑みを浮かべた。「私たちは、共に力を合わせることで、京をより良き場所にすることができる。私の知略とあなたの権力、二つが合わされば、必ずや大きな変化をもたらせる。」
義政は彼の言葉を反芻し、心の中で葛藤した。彼にとって安全な道などない。しかし、もしかしたら、彼の持つ銀の剣を使うことが、この危機を乗り越える唯一の方法かもしれないと感じた。
影山は義政に、彼の持つ銀の剣について語った。それは代々受け継がれるものであり、特別な力を秘めていると言う。剣には、持ち主の意志を具現化する力があり、それを使うことで彼らは悪を討ち、京を平和へと導くことができるという。
「その剣を使うことで、私たちの軍が勝利を収められるかもしれない。」影山の目には決意が宿っていた。
義政は剣を手に取り、その輝きを確認した。再び不穏な気配が近づいていることを感じながら、彼は意を決して影山とともに立ち上がった。
二人は協力して、京の町を巡り、影響力のある人々と意見を交換した。そして、彼らの信頼を得ることで、力を結集する計画を進めた。急速に広がる勢力を建立し、京の衝突を静めるための新たな和議が形成されつつあった。
しかし、彼らを妨げる存在があった。裏社会を牛耳る者たちが影響力を振るい、陰謀が動き出していた。それでも、義政と影山は銀の剣を手に、運命を切り開いていく。
彼らの戦いはまだ始まったばかりだったが、義政の心には確かな希望が芽生えつつあった。新しい時代、平和な京を取り戻すために、彼は果敢に立ち向かうのだった。
先の見えない旅路ではあったが、銀の剣は決して彼を裏切ることはないと信じていた。
時は平安時代、京都の鴨川。静かな川面に霧が立ち込め、何か不気味な気配が漂っていた。人々は、この地に伝わる伝説を思い出していた。それは、かつての崇徳上皇の怨霊が現れるというもの。彼は政争に敗れ、讃岐に流され、その後、悲劇的な死を遂げたと言われている。
ある晩、若い僧侶の瑞寛(藤原竜也)は仲間との修行を終え、帰路に就こうとした。すると、霧の中から低い呻きが聞こえてきた。その声は、かつての栄華と権力を持つ上皇の苦悩を語るかのようだった。
#### 第二章: 影の訪れ
瑞寛は恐れを抱きつつも、その声を無視することができなかった。「何があったのか、教えてほしい」と彼は叫んだ。突然、霧が晴れると同時に、目の前に白衣を纏った上皇の影が現れた。彼の顔には悲しみと怒りが入り混じり、目は燃えるような赤だった。
「私の怨念を受け止めよ」と、崇徳上皇(陣内孝則)は静かに呟いた。「正しい王がいないこの国で、私はただ恨みを抱え、苦しんでいる。」
瑞寛は彼の言葉に耳を傾けると同時に、自らが何をなすべきかを考えた。「上皇よ、どうすればあなたの思いを晴らすことができるのでしょうか?」
崇徳上皇は冷たい視線を向けながら言った。「私の名を忘れ去ったこの世に恨みを、私の望みを叶える者が現れなければ、永遠の苦しみの中から逃れることはできぬ。」
この言葉を受け、瑞寛は彼の意志を汲み取ることを決意した。「私があなたの想いを伝え、正義を果たします。どうか、私に力を貸してください。」
翌朝、瑞寛は上皇の伝説に関する書物を探し始めた。彼は流された上皇の背景や、彼を支えた人々の物語を読み解きながら、真実を明らかにすることこそが彼の使命だと感じていた。
彼は上皇が流される際、どれほど無念だったかを知り、その苦しみに共感した。崇徳上皇が本当に望んでいたのは、権力ではなく、正義のある社会にあったのだと確信した。
瑞寛は多くの人々と共に崇徳上皇を冥福に導くための儀式を執り行うことを決意した。彼は、上皇のために社を建てること、そして彼の名を広めることで、彼の意志を伝えようとした。
儀式の日、瑞寛は霧が立ち込める中、崇徳上皇の名を高らかに呼び上げた。「崇徳上皇、あなたの怨念はもう必要ありません。我々はあなたを忘れない。正義を取り戻すために尽力します!」
その瞬間、風が吹き抜け、鴨川の水面が波立った。瑞寛はその瞬間、崇徳上皇の怨念が解かれ、霧が晴れていくのを感じた。
上皇の影は徐々に薄れ、優しい微笑を浮かべていた。彼の怨念は解かれ、安らぎを得たのだった。瑞寛は感謝の意を込めて頭を下げた。
「ありがとう、上皇。これからの京は、あなたの名を忘れることはありません」
この後、崇徳上皇の名は、しっかりと人々の記憶に刻まれ、永久に残ることとなった。瑞寛は、京の人々と共に彼の意志を継いでいくことを誓ったのだった。
新たな時代を迎えることとなった京は、崇徳の想いを抱きしめ、再び栄華を誇ることになるのであった。
瑞寛は朱雀門近くにある祠から室町時代にワープし、畠山弥三郎に仕えた。
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