第5話

僕は1つ思い当たることがあった。彼女は声が出せないのではないか。歌は歌えるが言葉は発せない、もしかしたらそうなんじゃないかと。



「ねぇ、声が出ないの?」



その言葉に彼女は数秒黙ったまま曖昧に笑って歌う。返事はない。昨日は再会を喜ぶような楽しそうな歌だったけど、今日は少し悲しそうな歌。



僕が質問をしたら彼女は応えてくれる。



「昨日からずっと歌ってるの?」



彼女は首を振る。なるほど、ずっと歌ってたわけじゃないのか。なら、



「どうして朝は歌ってたの?」



その答えに彼女は僕を見つめた。それがきっと答えなのだろう。その答えは僕にはまだ分からない。なぜ彼女がそこで僕を見たのか。

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