シンデレラと恋の病【完】

咲坂ゆあ

1話・ガラスの靴では脆すぎて

第1話


 今思うと、私は一番好きなもの、をなかなか決めきれない性格だ。だって、好きなものをひとつに絞ったらもったいない気がするの。


 真夜中のコンビニ、こたつで食べるアイスクリーム、平日朝八時の二度寝、しっぽまであんこぎっしりのたいやき、課題のない金曜の夜、焼きそばと一緒に食べるご飯、アツアツのチーズ、花瓶に活けたばかりのブーケ。


 お気づきかと思うけれど、食べることが何より大好きな私の今日は稀に見る、ラッキーが重なった日でもあった。


 土日の課題は授業中に提出してハッピーな金曜の午後。ちなみに金曜は大学の日替わり定食が大好きな包み焼きハンバーグってだけでご機嫌な日でもある。そんな午後。


 バイト先の事務所でたいやき(大好きな白あん)を差し入れに貰って私は超ご機嫌だった。


 このご機嫌は、とあることによって台無しになる。



 「きょ……今日も不在なの……!?」


 

 頭上を照らすシャンデリア。花瓶の上で死んだ花が生き生きとした姿で出迎え、まるで今から舞踏会でも始まるの?って言わんばかりの空間に私の落胆が響いた。

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