年の差
P.10
「、…」
何か返そうと口を開いたところで、ちょうど授業終了のチャイムが鳴った。
それにどこか安心している、俺。
何も言えなかったのは、チャイムのせいでも、図星だったからでもない。
無邪気に笑う顔に、何も言葉が浮かんでこなかった。
本当に、意味がわからない。
「あ、起きた」
チャイムを合図に起き出すダチを見て、楽しそうに笑いながらそう言った。
「ん~、おはよ~」
「おはようじゃないよ、もう。次は起きてるように言ったのに」
「だって眠ぃーんだもん」
「だってダリぃんだもん」
「ダルいっていい若者が何を言う。……あれ?今何歳だっけ?」
「15だけど?」
「15!?若っ」
「え?何歳?」
「私?あ、何歳に見える?」
そう言ってニッと笑う女子大生。
「18?」
ダチの一人がそう言うと、
「え、うそっ、ありがとう」
と嬉しそうに笑った。
若く見られて嬉しかったらしい。
けど、
「いや、16っしょ」
「14?むしろ、12じゃね?」
実年齢より断然幼く見える彼女をからかってダチが口ぐちにそう言うと、
「……12って、小学生なんですけど。……もしかして馬鹿にされてる?」
ブスっとした顔をしてそう言った。
それはなんだか可愛くて、思わずフッと笑ってしまった。
「冗談だって。で、何歳なの?」
「21ですけど。もう立派な大人ですけど!」
そうムキになって言う彼女。
「え、マジ?21?」
それにダチは本気で驚いているようだった。
「え?何個上?」
「6個上だね」
「うそ、マジ見えねぇ!」
「……なんか、全然嬉しくない…」
そう言ってぶすっとしょぼくれている君は、やっぱりなんだか可愛くて、とても6歳も上には見えなかった。
そんな彼女を見て思わず笑うと、「笑ったなー!!」と怒る彼女をからかって、その後もいろいろとしゃべっていたら、すっかり仲良くなった。
でも、休み時間の10分はすごく短いもので、チャイムが鳴り、教科担当の先生が入ってきたらその楽しい時間も終わり。
まだまだ話していたかったけど、「今度はちゃんと起きてるんだよ?」と言って、彼女が行ってしまったから、そんな願いは叶わなかった。
授業なんてどうでもいいと思ったけれど、
「次英語かよ~」
とダルそうに言って、早速机に突っ伏そうとするダチを見つけるや否や
「1時間くらいちゃんと授業聞きなさい」
と彼女に起こされ、
授業中に寝ようとするたび「こら」と悪戯な笑みを浮かべて怒られるから、珍しくこの時間はみんな起きていた。
まぁでも、珍しいことは続くものではなく、次の時間は俺以外はみんな寝てたんだけど。
それを見て「また寝てる」と言いながらも、「さっき起きてたからまぁ今日はいっか」とふわりと笑う彼女にまたドクンと心臓が動いた。
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