ちょろいです




「じゃ、コンドームは着けてありますので……高まってきたら、我慢しないで出しきってくださいね」

「承知ですっ、、」


 ぬるっ、ぬるっと彼女は自らの入口に俺の棒を当てて。


 ふと目が合えば、事務的な態度を崩して、神妙な顔に変わる。


「――お兄さん、初めて?」

「えっ⁉︎ あー、まぁ、そっすね……」


 あちゃー、やっぱバレてたか。そりゃあれだけ肩肘張ってたら当たり前だけど。


 するとお姉さんは少しだけ表情を俯かせて。

「――わたしがお兄さんの、初めての相手になっちゃうけど。お兄さんは、それでもいい……?」

 不安げな上目遣い。

 流れる沈黙の長さを数えるような心臓の音を聞きながら――俺は言葉を選ぶ。


「――確かに、戸惑ってる部分はありますけど」

「だよね……」

「――世界を救うためなら、それでいいと思う」

「――……」彼女は目線を下げる。何かしら責任を感じているのだろうか。


「――でも、ホントを言えば、もうそんなことどうでもいいです」

「えっ?」意表を突かれて裏返った声が聞こえて。



「――セックスから好きになるなんて、童貞すぎますかね?」



 我ながら呆れた論理だ。

 お姉さんはただお仕事でこうしてるだけなのに……。


「――……き」

「えっ……?」

「――市原いちはら美月みづき。わたしの名前、覚えて……」

「ッ、」瞬間、瞳を潤ませる。光年の銀河を宿したまたたき。


「ね、お兄さん」

「な、成田っ、です」

「成田くんだね? また会える……?」

「れ、連絡先がわかれば。。」

「じゃ、こーゆー作戦でどぉ?♡」

「ッ、ああぁっ……⁉︎」

 腰を沈めて、俺の愚息を柔らかに包み込む。

 ――童貞、喪失。すみません、需要のない報告でした。


「体験と結びついた記憶は忘れない。――だからこうすれば絶対忘れないでしょ? わたしの電話番号……」

「フツーにメモでいいと思いますっ……、ってぁはああ……っ⁉︎」

「ぜろ、はち、ぜろ……♡」


 腰を動かしながら、彼女は電話番号を囁き出す。


「覚えた?」

「はえぇ……ぜろ、さん、にぃ……」

「合ってなさすぎじゃない⁉︎」

 仕方ないでしょうよ。ナカ気持ち良すぎてアタマ真っ白なんだから。


「もぉぉバカ成田! こうなったら意地でも覚えさせてあげるから!」

「へっ⁉︎ おぅふ、、……」

 ひぃ、キャラ変わりすぎぃ~……ってあっ、らめ。キスと美月さんのナカ気持ちよしゅぎりゅ……。

「てゆか、一番大事なコト聞いていい?」

「な、なんれしょうか??」

「――わたしと付き合ってくれる?」

 会話の流れで強気な感じになってるけど、耳の先まで赤くなって。

 まっすぐに、こちらを見つめている。


 余裕なフリして、ぜんぜん余裕ないじゃん。

 愚問ですよ、美月さん。――答えなんて、これ以外にない。



「それは――ムリ、ですね」

「えっ、、……」

 付き合うなんて無理だ。ここまでされたら当たり前である。


 瞬間、俺はキスで彼女の唇をふさぐ。

「ッ、――……」きゅぅ、とナカが締まって、

 そっと口元を離すと、

「好き……」彼女がささやく。どこか寂しげに。

「――俺もお姉さんのこと、すげえ好きになっちゃったみたいです」

 告げた後、わずか遅れてはっと目を見開いた美月さんは、

「ッ――素直にそう言えっての!」

 もぉ、と恨めしく見つめてくる美月さん。意図に気付いてくれたのだろう。うっすらと涙を浮かべる。


「……わたしチョロすぎ?」

「お互い様じゃないっすか?」

 呆れて告げれば、彼女も「あは、」と照れて笑う。

「じゃ、続きしよっか」

「っ、あ、ハイ」

 そうだ、忘れてたけど処置中なんだった。なんの処置だったっけ……? なんか世界を救うことしか覚えてないけど、まぁなんでもいいや。


「精液の量に制限はないので、お好きなだけ射精して構いませんからね」

「いきなり事務的になれるのすご」

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