第36話

あたしは、澄子が出ていってすぐに眠ってしまった。



ガラガラと立て付けの悪いドアが開く音と、閉まる音が聞こえて重い瞼ををあげる。




澄子帰ってきたのかな…




でも熱が高いみたいで、生理的な涙が目を開けるとポロポロと溢れてもやもやとはっきりとは見えない。




カーテンが開かれて、入ってきた人はベッドの横の椅子に腰掛けた。




「とう、こ…っ?」




発した声は小さく弱々しくて聞こえるのかも分からない。










「馬鹿、俺にじゃなくて自分に布団かけて寝なよ」











夢かもしれない。




大好きで仕方ない彼の声。





生理的な涙は迷惑をかける不安と来てくれた安心のどちらともの意味に変わった。




「辛いね、暖かくしな」




そう言って、あたしの涙を拭い、頬を撫でる神代くん。






「辛いのに朝ごはん作ってくれてありがと」





その言葉だけであなたといれて嬉しくなる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る