Worlds of Fate 〜世紀末の戦士は異世界に挑む!〜
宇宙星
第1話 ゼンセノキオク
核戦争から100年後の地球。人類の大半は消え去り、地球の大気は深刻に汚染されていた。
生き残った者たちは、地球を二層化するという壮大な計画を実行に移した。地上は放棄され、そこには新たな都市が天空に建設された。
高度なテクノロジーと限られた資源を駆使し、選ばれた富裕層や要人、大統領のみが地球の上層都市へ移住することが決定された。
地上では新たな文明が築かれ、天空都市では繁栄と豊かな生活が営まれていた。
しかし、ある日、異世界から現れた声が、上層部を震撼させた。
「このままでは地球が滅びるのも時間の問題です。さらに、地上の人間が反乱を起こし、天空都市を攻めてくるでしょう。我々は新たな技術によってその脅威に対抗しなければなりません。」
その声は冷静でありながらも、まるで天使の囁きのように、上層部の大統領たちの心を揺さぶった。
「クローン兵を作り、新たな戦争に備えるのです。そして、ここをエデンとし、文明の再出発を果たしましょう。」
この言葉に、上層部の人々は飛びついた。彼らは、その計画が地球と人類の未来を守るための完璧な策であると信じた。
しかし、その計画が実は人類を滅ぼす罠であったことは、誰もが知る由もなかった。
異世界の者は、薄ら笑いを浮かべながら、化学施設の秘密の扉を静かに開けた。内部は冷たい光に照らされ、精密な機器とガラスの容器が整然と並んでいた。
彼は一つのガラスケースの前に立ち止まり、内部に収められた少女を見つめた。少女の体は透明な液体に包まれ、微かな光を反射していた。彼の目には愛おしさと満足感が浮かんでいた。
「もうすぐです。私達二人で愚かな人間から、地球を解放しましょう。」
彼は静かに呟き、その手を少女の容器に軽く触れた。
彼が立ち去った後、静寂の中で裸の少女は目を開けた。彼女の桃色の瞳は困惑と驚きに揺れる。
キシ…キシ…パリン!!
その瞬間、透明な液体が静かに流れ落ちていく。ガラスケースが勢いよく割れ、液体が床に流れ出した。
「ゲホッ…ゲホッ…」
少女は咳き込みながら、ゆっくりと立ち上がった。冷たい床に触れると、その感触に驚いたように軽く身震いしながら、裸足で一歩一歩、歩き始める。
ペタ、ペタと響く足音が静かな部屋に反響し、彼女の新たな運命の幕開けを告げていた。
ビーーーッ、ビーーーーッ。
そこに、警報音が鳴る。
地上からの軍が攻めてきたのだ。まだ作りたての上層部へのエレベーターを破壊している。施設が揺れ、足元がふらつく。
混乱に乗じて少女はその場から立ち去る事を決意する。
反乱軍の旗、一つの星が少女の目に入った。
「天空都市を壊せー!!戦争を引き起こした大統領を殺せ!!」
ーータタタタタッ
裸の少女は、上層部の軍隊に見つかると、思い切り走り出した。
ついに天空都市の隅に追いやられる。下では軍旗が揺れ、破壊活動が行われている。
少女は意を決して天空都市から飛び降りたー
望遠鏡で見上げる地上の兵士が声を上げる
「人が降ってきたぞー!!」
「裸の少女だ!!」
そこに、降ってくる少女を助けようと、鋭い目をした17歳くらいの少年が飛び出していく。
「辞めておけ!罠かもしれない!」
「捨ておけ!無謀だ!」
野次が飛ぶ中、少年の目は正義に燃えていた。
「助けられる命を諦めてたまるかよ!!」
少年は一心不乱に走り抜け、空中に放り出された少女をキャッチするために高く飛び上がった。
少年の動きは驚異的な速さで、軍の兵士たちを蹴り上げながら、少女を安全に受け止める。
ーーボスン!
そして少年は少女に上着を羽織らせると話しかけた。
「お前、なんで裸で上から落ちてきたんだ」
少女は困り果てた様子を見せ、無言で俯く。
「……」
「お前、話せねぇのか?」
少女は困惑した様子を見せ、口を開いた。
「あぅ、あうう、」
「言葉が分からねぇのか?」と俺は勘づく。
「そいつは上から来た者だ!牢に閉じ込めておけ!」
グイッ
抱き抱える少年から、少女の細くて白い腕を無理やり引っ張る兵士。
「待ってくれ!コイツは言葉が喋れない!」
ー俺は周りに伝わるように大声で叫ぶ。
「俺達にはソイツを養うほどの余裕がねえ!」
「そうだ!売り払っちまいな!」
少年はそれらの野次を聞くと覚悟を決めた様に少女を抱き寄せる。
「…行こう!お前は俺が守る!」
それから少年は自らの自宅と言える様なパイプ小屋に連れて行った。
「安全とは言えないが…牢よりはマシだ。これから俺がお前の面倒を見て言葉を教える!そしてお前には上の情報を教えてもらう。」
少女は少年の上着を羽織りながら、床にぺたりと座り無垢な瞳で少年を見つめる。
「うっ…まずはちゃんと服を着ろ…目のやり場に困る」
少年のお下がりのボロい服はぶかぶかで、少女の胸が浮かび上がり、太ももが露わになっている。
少年が地面に棒で文字を書きながら、言葉を教えると少女はまじまじとそれを見る。
寒い夜には少年のベッドに潜り込み、少女は身体を寄せ抱き合う様にして眠りについた。
少ない食料を分け合い共に暮らした。
それから少女は虫を捕まえてくると見よう見まねで料理を作くった。不味い料理を二人で一緒に食べたが、温かい気持ちになった。
ある日、少年が傷ついて帰ってくると少女は涙を浮かべて、少年に抱きつき、傷口に手をかざす。
ゆっくりではあるが、傷口が徐々に塞ぎ始めた。
「…お前がやったのか?!すごいや…」
少女はコクリと頷く。褒められた少女は嬉しくなり、少年に抱きついた。
「うわあっ」
この頃になると、少女は少年が話している言葉が少し分かる様になっていた。
「…なぁ、上の事を教えてくれないか?」
少女はコクリと頷くと少年を家の外に連れ出し、棒で絵を描き始めた。
そこには無数の長方形と、その中に入れられてる人の形が描かれていた。
「これは…お前、もしかしてここから逃げてきたのか?」
少女はコクリと頷いた。
少女は絵を描き続ける。
少年は少女の描いた絵を見つめながら、無言で頷いた。彼の目に浮かぶのは、過酷な状況から逃れ、必死に生き延びようとする少女の姿だった。
「これが上層部の様子なのか…。」
少女の瞳は怯えていた。
「お前が逃げてきた理由はよく分かった。でも、お前がこれからどうしたいのか、もう少し教えてほしい」
少女はその問いに応えようとするが、言葉がまだ完全には通じない。代わりに、彼女は心からの強い意志を示すように、少年の手を取り、少女の胸に触れさせた。彼女の瞳には、未来に対する希望と不安が入り混じっていた。
「分かった、君の言いたいことはなんとなく感じ取れるよ」
彼は少女の手を優しく握り、決意を込めた眼差しで見つめた。
「お前がここで過ごす間、何が起ころうともお前を守ると約束する。」
少女はその言葉に安心し、小さく微笑んだ。彼女の目には感謝と、これからの希望の光が宿っていた。
二人はその夜も共に過ごし、支え合うことで心の距離を縮めていった。少年の自宅という名のパイプ小屋は、貧しくても温かい場所となり、二人の絆を深める場となった。
少しずつ、少女は言葉を覚え、少年も彼女の描いた絵や身振り手振りから多くのことを学んでいった。その過程で、彼らの間には深い信頼と友情が芽生えていった。
◇◇◇◇◇
俺とその少女は、最後の瞬間まで一緒にいたんだ。そして、大きな光…放射能の光に包まれていたんだ。
少女の身体は放射線による影響で次第に弱っていき、肌には目に見えるほどの変調が現れ始めていた。頬は青白く、息をするのもやっとの状態だ。
「ねぇ…」少女はかすかな声で、少年の手を握りしめた。「私…また二人で生まれ変わることができたら、もっと幸せな時間を過ごせるのかな?」
その言葉に、少年は彼女の顔を見つめ、震える手で彼女の髪を優しく撫でた。彼自身も放射線に晒され、体力が限界に達しつつあった。
「そうだな…きっと、今度は違う世界で、もっと笑っていられるさ…」
彼の言葉は、静かに響く中で、希望のかけらを残していた。
だが、彼もまた限界が近づいていた。胸を襲う痛みと呼吸の乱れが、体中に広がっていく。少年は意識が遠のくのを感じながらも、少女をしっかりと抱きしめて離さなかった。
その瞬間、放射線の影響が一層強まり、二人の体は徐々に崩れていくように感じられた。肌は焼けるように痛み、意識が白くかすむ。少年は最後の力を振り絞り、少女の耳元で囁いた。
「俺は、世界を変える。お前が望んだ未来を、次の命で必ず作り上げてみせる。だから…」
少女は弱々しくも、確かに微笑んだ。彼女の瞳には、わずかな希望と未来への願いが宿っていた。
「また…一緒にね…」
最後の言葉を口にした瞬間、二人は全ての力を使い果たして抱き合ったまま静かに息絶えた。放射線は彼らの命を奪い取った。
空から降り注ぐ灰の中、彼らの体は徐々に消え去り、風に溶けていくかのようだった。しかし、その魂は消えることなく、未来のどこかで再び出会うことを誓っていた。
「また、生まれ変わったら、貴方を守る。」
「今度は、一緒に変えるんだ。地球の未来を」
◇◇◇◇◇
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