第5話:感情の奪取
数日後、ユウタ、アキラ、サトルは、パラサイトの巣を探すために街の暗い裏通りへと足を踏み入れた。彼らの心には恐れと不安が渦巻いていたが、同時に希望も抱いていた。感情を奪われた人々を助けるため、そしてこの異常を終わらせるためには、何としてでも真実を明らかにする必要があった。
「私たちが何とかしないと、もっと多くの人が感情を失ってしまう。」ユウタが言う。彼の声には決意が込められていた。
「だからこそ、ここに来たんだ。」アキラが応じる。「手がかりを見つけなきゃ。」
「見て、あそこに人がいる!」サトルが指を指した。彼らが近づくと、そこにいたのは無表情な女性だった。彼女の目は虚ろで、周囲の状況にはまったく無関心な様子だ。
「大丈夫ですか?」アキラが声をかけるが、女性は何も答えず、ただ無表情で立ち尽くしていた。ユウタは恐れを感じながら、その女性の顔を覗き込む。
「彼女もパラサイトに寄生されているのか…」ユウタは震える声で言った。「こうして感情を奪われてしまったのか。」
「でも、どうにかして助けられないかな?」サトルは不安そうに言った。「彼女の中に、まだ感情が残っているかもしれない。」
「試してみる価値はあるかもしれない。」アキラが頷く。「私たちの感情を彼女に分け与えられれば、もしかしたら…」
ユウタは、彼女の手を取って目を合わせる。「私たちはまだ希望がある。あなたの心の中には、きっと感情が残っている。」
女性は一瞬、目を瞬きした。しかし、その後すぐに無表情に戻り、何も反応しない。ユウタは焦燥感に駆られた。
「どうすればいいんだ…」彼は頭を抱えた。
「そうだ、私たちの記憶を共有するのはどうだろう。」アキラが提案した。「楽しかった思い出や、愛おしい人たちのことを話そう。それが、彼女の心を呼び覚ますかもしれない。」
ユウタは頷いた。「それができれば、彼女を救えるかもしれない。」
「じゃあ、やってみよう!」サトルは意気込んだ。彼らは円になって、その女性の周りに集まった。ユウタが最初に思い出を語り始めた。
「小さい頃、母と一緒に見た花火大会がすごく楽しかった。空が色とりどりに染まって、みんなが笑顔だったんだ…」彼はその思い出を語るたびに、心が温まるのを感じた。
次にアキラが話し始めた。「友達と行ったキャンプで、夜空の星を見上げた時のことを思い出す。星がこんなに綺麗だなんて知らなかった。それを皆と共有できたのが嬉しかった。」
サトルも続く。「そして、僕は…昔、家族と一緒に過ごした夏の日々が忘れられない。みんなで笑い合って、時にはケンカもしたけど、それが大切な思い出なんだ。」
その瞬間、無表情な女性の目がわずかに輝きを帯び始めた。彼女の手が微かに震え、ユウタたちの顔を見つめ返す。「…私…は…」
「そう、あなたの心にはまだ感情があるんだ!」ユウタは喜びを感じ、続けた。「それを取り戻せるかもしれない。私たちが助けるから、一緒に戦おう!」
だが、女性はゆっくりと後ろに下がり、急に無表情に戻ってしまった。
「逃げて…」彼女の声はか細く、不安を抱えるように響いた。「パラサイトが…私の中に…いる…」
その瞬間、彼女の周りが暗く覆われ、異常な気配が迫ってきた。ユウタたちは驚き、急いで後退した。目の前に現れたのは、影のような存在、パラサイトそのものだった。
「感情を吸収する存在…それがパラサイト…」ユウタは呆然としながら言った。
「逃げろ!」アキラが叫んだ。「このままでは、私たちも彼女のように…!」
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