第8話

優しげに笑った圭吾が言う。


本当なら"嘘"だと切り捨てられたっておかしくない。


それくらい、あの日の夜は、出来事は、幻のようなベールに包まれていた。



それでも信じてくれた圭吾。


夢のような戯言を信じてもらえたことが嬉しくて、あたしは今更ながら泣きそうになってしまった。




「うん…」




そんなあたしをよそに圭吾は花立てに水を注ぎ、花を飾ると、ろうそくに火をつけて線香を焚いた。


白煙が天へ昇り、細く揺らめく。




「俺と夏海君、どっちがいい男だった?」


「え?」




思いがけずあたしは瞬いた。


柄杓を掴んだ圭吾は墓石にそっと水をかけている。

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