第3話 幼馴染の美少女が迎えに来るようになった。

 高校の入学式にタイムリープし、4人の悪友をぶっ倒した次の日。


 朝、準備をして家の玄関を出た瞬間、拓朗は予想外の光景を目にした。


「おはよ、拓朗」


 幼馴染の朝乃木 千尋は片手をあげてヒラヒラと手を振って来る。


「あ、あぁ……おはよう?」


「なんで疑問形なの」


 千尋にジト目で見られる。


「いや、まさか家の前で待ってくれてるとは思わなくて……もしかして迎えに来てくれたの?」


「……まぁね。昨日はうちまで送り届けてくれたし」


 千尋は照れくさそうに髪をイジリながら顔を背ける。


 中学まで彼らは距離を感じていた。そして登校も別々になっていたし、会うこともほとんどなかった。


 タイムリープ前はそのまま疎遠になってしまい、やがてあの4人に……。


(けど今回は違う、昨日あいつらには千尋に手を出さない約束をさせた。もちろんあいつらの言葉なんか信用はできない。けど、今度は何があっても千尋を守り続ける)


 それから彼らは2人で自転車を押しながら歩き始めた。


 千尋の明るい茶髪のショートヘアが春の風にひらひらと揺れる。彼女は風で顔にかかりそうになる髪を手で拭って耳にかけた。


 その綺麗な横顔につい見とれてしまいそうになり、拓朗は顔をそらして口を開いく。


「千尋は高校で部活やるの?」


「んー? やんないかな。中学で頑張りすぎて疲れちゃったし、授業終わったらさっさと帰る」


 千尋は中学まではバレー部に所属していた。


「もしよければさ、放課後遊びに行かない?」


「……別にいいけど、やけに積極的じゃん。もしかして最近わたしと会えなくて寂しくなっちゃった?」


 千尋は茶化すようにおどけて顔を近づけてくる。


「そりゃあ寂しかったよ、ずっと」


「ふぇっ!?」


 拓朗が素直に答えるとは思わなかったのか、千尋は素っ頓狂な声をあげる。


 もし、彼が千尋と距離を感じていたのがほんの数年なら、きっとそんな素直にはなれなかっただろう。


 しかし、彼は10年近く後悔をしていた。自分のせいで千尋をあんな目に合わせてしまい、完全に疎遠になって過ごした長い時間。


「だから、少しでも千尋が楽しく過ごせて、笑ってるところを見られたら嬉しいなって思って」


「わっ、なっ、なに急に……」


 千尋はまるでプシューッと煙が出てしまっているかのように顔を真っ赤に染める。


「千尋、なんか顔色がおかしいけど……」


「~~~!!! ん~! もうぅっ、知らないっ! ばっかじゃないの!」


 千尋はバシッ、っと拓朗の肩を手の平で叩くと、自転車にまたがって走り出してしまう。短いスカートが風になびき、バレーで鍛えた色白の豊満な太ももが露わになる。


 そんなことも気にせず自転車を漕ぐ千尋を、拓朗も自転車に乗って追いかけた。

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