2024年2月

2月17日 スカート しっかり カクテル


1 スカートを履き、ウィッグを被って化粧すれば清楚系美人の出来上がり。これで堕ちなかった男はいない。「隣いい?」ロブロイを渡してきたのは、今日俺がずっと見ていた爽やか君。へぇ、『あなたの心を奪いたい』ね。「ええ」俺に喰われてもいいなら、な。今日の獲物は痛ぶり甲斐がありそうで楽しみだ。


2 短くてヒラヒラのスカート、よく女はこんなの履けるな。男物のランジェリーが見えそうな気がして、しっかりと裾を押さえる。「お待たせ」カクテルを手に戻ってきたのは女装の発案者。おい、そのにやけ顔どうにかしろ!グラスの中身はグランドスラム。2人だけの秘密ってさ。当たり前だ馬鹿野郎!




2月20日 恥じらい あえて ご主人様


1 メイド服の下で熱くなったソレを必死に隠し頬を染めて恥じらう。「ご主人様ぁ…お情けを…」潤む瞳は劣情を煽るが、あえて冷たく言い放つ。「触るな」途端、ぶわりと涙が溢れる。ああ、なんて美しい。ここに来てから1年。ようやく従順になった愛しい子。俺は待てを出したまま、指先で首筋を弄んだ。


2 「おかえりなさいませ、ご主人様」恥じらい?そんなもんねぇ。俺は女装が趣味で、だから女装メイド喫茶のキャストとして働いている。同僚とスキンケアやメイクの話で盛り上がれるしで最高!だがしかし!俺よりも小柄な同僚に迫られるのは想定外だ!「あれ、何恥ずかしがってんの?」やめろ黙れ離れろ!




2月21日 窓 どうしてなの 踵


1 大きな窓は雨粒に打たれてもびくともしない。「どうしてなんだ」広く、低反発のマットが敷かれた窓枠に腰掛け、削られた踵を摩る。じくじくと痛むそこは悪夢の余韻。「駄目だよ。外なんか見ちゃ。あ、窓は塞ごう」不意に暗転する視界。目の上にあるのは冷たい手。耳元に掛かる息。悪夢が、また始まる。


2 窓越しに見えた告白現場。どうせ成功するから最後まで見なくてもいい。痛む胸を押さえて踵を返して旧校舎を後にする。なんでここに来たんだ。家に帰ろう。足早に立ち去る俺を引き止めたのは、後ろから抱き着いてきた幼馴染。「どうしてなの」「お前が好きだからだよ」呆れ混じりのため息が耳を掠めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る