難易度MAXの攻略対象が、わたしを溺愛していたらしいです!?〜いや、あなたはゲームの中のキャラクターでしょ!?って言ってる間にキャラ増えて来た!〜

長月そら葉

第1章 ゲーム世界の攻略対象

第1話 ゲームの中の少女

 ――どさっ。


「痛た……。一体何?」


 わたしは、さっきまでベッドに座ってゲームをしていたはず。女の子を攻略する恋愛シミュレーションゲーム、所謂ギャルゲーっていうのかな。わたしはそれが好きなのだ。

 でも今、わたしはベッドに仰向けになっている。何かがわたしに覆い被さっているのは見えるけれど、怖くて目を開けられない。だって、何か怖いものだったらって考えると無理。


「……い?」

「えっ」


 わたしは思わず目を開けた。だって「愛依めい」ってわたしの名前を呼ばれた気がしたから。

 目を丸くするわたしは、ようやく見たその人が誰かわかって思わず叫んだ。だって、三次元に存在するはずのない、さっきまでやっていたギャルゲーのキャラクターだったんたから。


「あっ……アイリ!?」

「ようやくわかりましたのね、メイ?」


 そのツンッとした表情、言い方、そして声と容姿。間違いない。わたしがさっきまでやっていた恋愛シミュレーションゲーム『プリズムSKY』の攻略難易度MAXの美少女キャラクター・アイリその人だ。


「何で、ゲームのキャラクターが目の前に……? っていうか、ええっ!? 何で触れるの!?」

「一旦落ち着きなさい! 踏むわよ!」

「わぁぁ〜アイリお嬢様だぁ」


 大混乱しているからか、わたしの言動もかなりおかしい。というか、やばい。

 とりあえず何とか踏まれることは回避して、わたしは起き上がってアイリと向き合った。金髪碧眼の美少女が、目の前にいる。なんというか、いい具合にこの感情を表す言葉が見つからない。手っ取り早く言うならば、尊い。

 しかし、感動しているだけでは何も前に進まない。わたしは呼吸を整えてから、目の前の美少女に尋ねてみた。


「あの、貴女はアイリなのよね?」

「そうよ。貴女が好きなゲームのキャラクターってところかしら」

「……そこまでキャラに把握されてるのは、何か変な感じ」


 息を吐くと、ちょっと落ち着いた。それでも、目の前が現実離れしている。わたしはもしかしたら、リアルな夢を見ているのかと錯覚しそうになった。

 けれどその錯覚は、きちんと偽物だとわかる。

 トントントン。部屋のドアがノックされた。


「愛依、どうかしたの。もう遅いんだから、適当に寝てよ?」

「ご、ごめん。お母さん」


 お母さんが、心配して来てくれたらしい。わたしはドアをわずかに開けてお母さんに謝り、それから戸を閉めた。


「……そろそろ寝ないと。明日も学校あるし。でも」

「深夜に来て悪かったわね。じゃあ、また明日」

「え? ま、また明日……」


 わたしがつられて手を振ると、アイリは窓を開けてひらりと飛び降りた。……ここは二階なんだけれども。


「そうだよ、二階!」


 怪我をしていたらどうしよう。常識的なことをかんがえて、わたしは窓枠に手をかけて外を見た。しかし地面にアイリはおらず、見回しても誰もいない。


(……やっぱり、夢?)


 窓を閉め、わたしはゲーム機を片付けて照明を消した。きっとこれは夢なんだと瞼をしっかりと閉じて。

 しかし、わたしは思い知ることになる。あの出会いは、夢なんかではなかったのだと。

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