第40話
波打ち際に立ってリョウを見た。
『……なんか私が緊張する』
「なんでお前が。つか…舞って泳げんの?」
そういえば。
『泳げない。リョウのことでいっぱいで忘れてた。浮き輪あっちに置いてきちゃった』
「人のことより自分の心配だったな。遠浅だし、大丈夫だろ」
私の手を取ってゆっくり入って行くリョウに、私の方が震えてしまう。
「なに、怖いの?」
『ごめん、リョウの気持ちを想像して震えちゃう』
「俺は大丈夫だって言ってんの。あんまり言うならあのブイまで浮き輪なしで遠泳させるぞ」
『無理無理。海ってガッツリ泳ぐ場所じゃないんでしょ…?プカプカ浮いたりビーチボールで遊んだり』
「俺は今日泳ぐ気満々で来た」
『うそでしょ』
話しながら進んでいくリョウの背中を眺めていたらいつの間にか腰辺りまで浸かっていた。
『わ、もうこんなとこまで。すごいね、リョウ。ホントに克服したね』
「全然平気。意外と簡単なことだったな。舞のおかげ」
海の中でハグ。
太陽の日差しが突きつける真っ青な空の下、その開放感で密着ハグも何も恥ずかしくなかった。
そのまま片腕で私を抱いてさらに歩みを進めるリョウに待ったをかける。
『…ど、どこまで行こうとしてる?』
ほぼ引きずられてる私。
「どこまでも」
もう水面は胸の辺り。
『ちょっ…と一回止まろう!』
「ん?」
『リョウはちゃんと泳げるんだよね?…足がつかないところでも』
「誰だと思ってんの?俺海育ち」
それもそうか。…じゃなくて!
『怖い怖い、帰りたい』
「さすがに?」
胸上はさすがに深すぎる。ここまで来たらしがみつく&すがりつく。
「可愛いね、お前」
至近距離で見つめ合って触れるだけのkiss。
イタズラな笑みを浮かべてリョウは私に背を向けた。
『ど、どこに行くの?』
「ここに置いて行くわけねぇだろ。おんぶ」
あ、そういうこと。
後ろからリョウの首に腕を回してしがみついた。
リョウの背中、安心感ハンパない。
「行くぞ」
『う、うわぁ!待ってちょっと怖い怖い怖いから!』
おんぶしたまま手足だけ平泳ぎを始めて、水面スレスレまで私も下がるからホントに溺れそうで怖くなった。
なんていうか……さすが海の男、一生いけるんじゃないかってくらい安定して泳げてる。
そのまま一度も止まらずにみんなのところまで近づいていった。
八重ちゃんは浮き輪の上に乗っていて、その横に楓先輩。ちょっと沖の方に二人で出ている。
菜穂とニッシー、美緒カップルは4人で仲良く浅瀬でビーチボールで遊んでいた。
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