第20話




カチャン







無常にも閉まるドア。




ガチャ




鍵がかかる音。





ドアを背にメガネをかけてパワーアップした南さん。




部屋の中には靴を脱いだ状態の私。






これは非常にまずい状況だと思う。





「あーよく見える。あ、舞ちゃんこんな顔してたんだ、なかなかの美人さんだ」



『…ドア…鍵……南さん?』





「……舞ちゃん、詰めが甘いよ。直前までの警戒は良かったのにね。何も考えずに渡しちゃダメだったね、これ」



言いながらクイッとメガネを中指でそっとあげる。



ゆっくり近づいてくる南さん。



距離を保とうと自ずと部屋の中に後退りしてしまう。




『ちょっと…話し合いましょう。私はそんなつもりで来たんじゃ…』



「俺ね、あの噴水前でちょうどアプリで知り合った子と今日約束取り付けれたんだよね。ゲットーって浮かれた瞬間にああなっちゃったじゃん。それも含めて最悪ってなってたんだけど。だからさ…舞ちゃんがその約束の代わりに俺の相手してくれんなら弁償とか示談とか全部なかったことにしていいけど。どうする?」



更に詰められる距離。



どうしよう…怖い…。



リョウ……。




『お金…払います。弁償するから……ここから出して下さい』





男の人にこうやって詰められる経験はこれまでも何回かあった。




みんな同じ目をしてる。





何回経験してもこんなもの、怖いし震えるし慣れるもんじゃない。




でも…私だってそれなりに経験してきた。





怖い思いもいっぱいしてきた。





その度にリョウに言われてきた言葉。










“堂々としてろ”








「おーおー、こんな状況でも冷静だね。俺もあんまり強引にはしたくないから。合意の元、シよっか」




逆撫でしないように…煽らないように…何か良い手は………。





『…………』




「あ、めちゃくちゃ考えてるね。どうすればここから逃げれるか。残念ながら俺が満足するまでこの部屋から出れないよ、舞ちゃん」



『……………』



「その怯えた目、そそる」




………少しの犠牲で……身が守れるなら…。






南さんの首にゆっくり腕を絡ませ、自らキス。





触れてすぐに離れた。



私の腰を持ってニヤニヤする南さん。




「いいね。…興奮してきた」



あと一押し…。




もう一度唇を自ら重ねる。




口を割ろうと舌を出してきたけどそこは譲らなかった。




もう一度唇を離す。






『メガネ……邪魔だよ…』




両手で自然に取りに行く。




…彼は油断し切ってる。







メガネを完全に外したところで








ギューッ







「ぎゃ!!…っぐぐ…!ぅ…っ」













硬くなったところを思いっきり握り潰してやった。










うずくまった彼をそのまま思いっきり蹴り倒して走って部屋を出た。










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