出会い
第1話
「何やってんの?」
何も言わない私に対して軽い溜め息をつき、その人は私の隣に座った。
「人の質問にはちゃんと答えろよな」
『………』
もう死ぬんだ、何を言われても平気。
「おーい、生きてる?」
私の顔の前で手をヒラヒラさせる。
「生きてっかー?」
今度は顎を指で持って無理矢理上に向かせ、顔をものすごく近付けた。
人の顔がここまで近付いた経験のない私はびっくりして体ごと引いてしまった。
「お、やっと反応した。なーにやってんの?」
『………』
「…また無視ね。…キスしてやろーか」
『……座ってる』
「あぁ?おちょくってんのか?」
『………』
「ダメだ、話になんねぇ」
そのまま仲間のところに戻って行った。
最後に話したのがあの不良か。
そんなことをボーッと考えていた時
『ワッ!』
頬に冷たいものが触れた。
「はははっ、ワッだってよ。ちゃんと大きい声出るじゃん。ほれ、これやるから元気出せ」
そう言って私にフルーツ紅茶の缶ジュースをくれた。
「マニアックすぎ?女の子は炭酸とかよりこういう系の方が喜ぶんじゃねーの?」
『………』
「人からものをもらったら?」
『…ありがとう』
「よくできましたっ」
そう言いながら私の頭をワシャワシャした。
「…なんとなくだけどさ…死のうとか思ってる?」
見事に当てられてピクッて反応してしまった。
「やっぱな。おかしいと思ったんだよなー。顔見たら分かるし。…俺らがいなくなんの待ってんだろ?」
『………』
何も言い返せなかった。図星すぎて。
「…何があったかしんねーけどさ」
そう言って座ってる私の前にしゃがんで両手を握った。
「生きてりゃいいことあるんだって。一人で見つけられねーんなら俺が見せてやるからっ。な?」
この時、握られた手を通じて生まれて初めて人の温もりを知った。
「おいフジー!何後輩口説いてんだよー!」
遠くから仲間の声。
「うっせ悟り開いてんだバーカっ」
「ぎゃはははは!意味分かんねぇ!」
茶化されても私の手を離そうとしなかった。しっかり握ってくれていた。
「で、名前は?」
『…藍原…』
「バーカ、名前っつったら下だろ」
『舞…』
「おぅ、舞か。俺は楓だ。来いよ、みんなに紹介してやる」
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