【エピソード感想】修羅狩り刃/辻 信二朗さま 《1》

【1】◇「参加作」を読もうと思った理由:あり


 架空の異世界を舞台とした、いわゆる和風ファンタジーに分類される作品であるように見受けられますね。私自身、こうした作品はあまり読まないのですが、西洋風ファンタジーには無い魅力があるジャンルであるのは重々承知しております。それゆえに拝読が楽しみでありますね。一方で、やはりジャンル初心者ということで、的外れな感想を述べてしまう可能性もあります。そこはお許し願いますね。



【2】◇全体的な感想内容: 辛口

【3】◇「良くない意味」で気になった点(マイルド)

【4】◇「良くない意味」で気になった点(辛口)

【5】◇「良くない意味」で気になった点(揚げ足取り)


 こちらの作品、上記のオプションを筆頭に、かなりの辛口を求めておられるのですが、よほどのことがない限りは「そう」はならないのではないかと思われます。


 すでに【オプション確認】にて指摘させていただきました、1話あたりの文字数も改善されておられるようですし、自作を大切になさっておられることが伝わってまいります。熱心なファンもおられるようで、書き手としても羨ましい限りですね。以前に感想を投稿させていただいた『夢幻の灯火』も、非常に面白い作品でしたからね。あちらの続きも読みたいところではあるのですが、今回はこちらの作品です。



【6】◇「ネタバレ」への配慮:ネタバレOK

【7】◇「読みながら考察や推理をした内容」の掲載:あり


 また、ネタバレに関しましても、オープンでいかせていただきます。


 考察脳も最初から全開ですが、あくまでも個人的な妄想ですので、使える部分だけを抜き出していただけますと幸いです。



             *



【1】◆【第一巻】 / 序章 修羅狩りの少女:


 いきなりの緊迫場面。そして圧巻の文章力からの始まりです。このジャンルには馴染みのない単語も多々ありますが、丁寧に「ふりがな」を振ってくださっているので非常に読みやすく、意味に迷うこともありませんでした。素晴らしいですね。


 なにやら六尺もの背丈の大男が集団を率い、馬車を襲っている様子。この〝尺〟に対してカッコ付きでセンチメートルを記載している作品も見受けられるのですが、〝大男〟という記載がありますので、メートル表記は無い方が綺麗ですね。ちなみに六尺は、だいたい180センチです。私よりも少しだけ高いですね。



 こんな説明をしている間に、大男が率いていた集団はバタバタと倒れはじめます。何が起こったのかと見やると、なんと少女が一人で男らを制圧してしまった様子。


 相手を殺さずに無力化するという行為は、相手の数倍の実力差を要します。自宅に押し入ってきた強盗を一般人が、「双方無傷で取り押さえる」ことが不可能であるのと同様です。この場面だけでも、少女が「ただ者ではない」ことが窺い知れますね。


 そして、大男から〝修羅狩り〟と呼ばれていることから察するに、彼女が主人公であるようですね。可愛らしさよりも「かっこよさ」に重きを置いた描かれ方をされていますが、彼女の達観した話し方は、いわゆる「のじゃロリ」と呼ばれるタイプのもので、一部の方には、愛でられるヒロインとしても受け入れられそうです。


 正直なところ、誉める部分しかないような状態なのですが、〝揚げ足取り〟でも突くとするならば、少女の名前が判明しないことと、雇い主が誰であるのかよくわからないことくらいですね。しかしながら、これはプロローグ。ここで細かに説明するのは、逆に悪手であるとも言えるでしょう。――すみませんが、完璧です。




【2】◆第一章 乱世を取り巻く歪な世柄 / 第一話 護衛:


 世界観の解説からのスタートです。非常にわかりやすいですね。〝万世一系の皇位が途絶え〟の部分だけが「心から日本を愛する者」としては引っかかるところではありますが、これは異世界の話ですので、今回はスルーいたします。これを語りだすと作品の感想ではなくなってしまいますからね。


 本作の舞台となる〝日輪国〟は、〝第二次戦国時代〟と呼ばれる乱世の只中である様子。こうした〝第二次〟という呼称は過去を振り返る形で名付けられることが一般的なのですが、民衆らが「戦国時代の再来じゃ! 第二次じゃ!」と、自ら騒ぎ立てたのかもしれませんね。もしくは誰かの過去回想の物語であるのかもしれません。


 契約主との話によると、この少女は決して殺生を行なわないそうですね。立派な価値観であるとは思うのですが、こうした状況では些か迷うところです。〝奥御殿まで侵入される〟ということは、他の見張りは敵によって殺害されたとみてもよいでしょうし。こうした拘りがあるのであれば、最前線に立ってもらうべきですね。主人公が「不殺」を貫くといえば、誰もが思い浮かべる漫画があるとは思うのですが、私はあの主人公に対しても、良い印象をいだいていない派でした。


 そして少女の名前が〝くろぎりやいば〟であり、16歳であることが明かされます。刃物を扱うために付けられたかのような名前ですね。どこかの武装組織に育てられたのか、そういった家系の出身であるのかもしれません。


 ここで少しだけ可愛らしい一面も見せてくれますが、彼女の信念は変わらずなのか、それとも成長をしてゆくのかといった部分は、気になるところではありますね。口調の印象からすると、すでに成長を終えてしまっている感もあります。




【3】◆第二話 決裂:


 刃と雇い主との契約延長はならず、刃の〝友達〟も彼の信頼を得ることはできなかった様子。どうやら刃には、少女たちによる修羅狩りネットワークがあるようですね。〝要人の警護のために寝食を共にする〟のであれば、大男よりも女の子の方が嬉しいのではないかとも思うのですが、もはやそんな下心を見せる余裕もないほどに切羽詰った状況であるのが窺えます。良く言えば、真面目な二人といった具合ですね。



 ここでは主に、〝修羅狩り〟と〝殺し屋〟による代理戦争の模様が解説されます。群雄割拠の領主たちは〝殺し屋〟を雇い、他国の領主の首を狙う。そして領主を守る存在が〝修羅狩り〟のようです。そして修羅狩りの実力は圧倒的であり、〝殺し屋が修羅狩りを討ち取った例は無い〟とのこと。


 当然ながら疑問に思うのですが、これって「さっさと修羅狩り同士をぶつけるべき」ですよね。それとも修羅狩りの輩出先は一箇所のみであり、修羅狩り同士は戦わない掟でもあるんでしょうか。そうともなれば、修羅狩り自身が天下を取るのが良いのではないかとも思われますが、どうにも影の存在に徹したがっている様子。もしかすると、乱世を憂いた「守り神」のような上位存在であるのかもしれませんね。


 まだ最序盤であり、そのあたりの事情はこれから明らかになってゆくとは思うのですが、創り込まれた設定の中で、どうにも〝領主〟と〝殺し屋〟だけが、「やられるためだけに創られた存在」であるようにも感じてしまうところではありますね。




【4】◆第三話 凶報:


 タイトルどおり、刃の元契約主であった人物が討たれてしまったようです。なんとなく彼は「死にそう」だと感じていたので、あえて名前も挙げていなかったのですが、予想は的中してしまいましたね。彼の言葉遣いから察するに、序章で仕えていた相手ではなさそうでしたからね。


 しかし刃は、前契約主に相当入れ込んでいたらしく、嗚咽を漏らしてしまうほど。――まさか同一人物だったんでしょうか。序章の雇い主の名前が出ていなかったので、現時点では不明ですね。個人的には「違う」と願いたいところです。



 ここでも〝殺し屋〟と〝修羅狩り〟の関係性が語られるのですが、やはり「修羅狩り同士が戦わない」理由がわかりませんね。


 たとえば殺し屋か修羅狩りの一方が「人外」であり、一切の会話が通じず、無差別に人を襲う存在であるのならば納得はできるのですが。なぜ殺し屋だけが一方的に討伐対象になっているのかがわかりません。領主にとっては「善」と「悪」ではなく、単なる「矛」と「盾」の関係ですよね。有り体に言えば「ジョブ」です。


 私には「絶対に勝てないとわかっている、修羅狩りがいるであろう領主の屋敷に攻め込む殺し屋の気持ち」が一切理解できません。修羅狩りが一般に知られていない存在であるのならばともかく、領主たちには修羅狩りを雇うのが当たり前のように認知されていますからね。貧しい領主が刃を雇っていたことから推察するに、修羅狩りへの報酬が法外なわけでもなさそうですし。むしろ殺し屋の方が、高給取りであるように説明されています。それならば、どの領主も修羅狩りを雇いそうなものです。


 どうにも殺し屋たちが、あたかも「無限に湧いてくるザコモンスター」のような扱いに見えてしまいます。その割には序章の大男のように、しっかりとした個性や感情がありますからね。彼も〝修羅狩り〟の存在を認知しておりましたし。ここのモヤモヤは、なるべく早く解消したいところですね。魑魅魍魎がいる世界とのことなので、たとえば殺し屋が「それ」の類であるなど。そうなると、序章の大男の様子に違和感が生まれてしまいますし。難しいところですね。




【5】◆第四話 苦悩:


 刃に焦点が当たる場面です。ここでの説明を見る感じ、修羅狩りは「派遣社員」のような扱いであるようにも見受けられます。イメージとしては「修羅狩り派遣会社」があり、契約を受けて修羅狩りを派遣する。したがって修羅狩り同士は戦わないといった具合でしょうか。派遣会社に例えた途端、一瞬にして嫌な予感がしてしまいましたね。日本に氷河期をもたらした例の会社と、あの人物らの顔が浮かびます。


 しかしながら、現在の修羅狩りは〝個人事業〟である様子。しかも修羅狩りを組織した幕府はすでに亡く、いわば無法に近い状態と――。これについては後述します。



 刃と、彼女の友人である〝雫玖しずく〟の会話によって、他国の事情も明らかにされるのですが――。正直なところ、疑問は増すばかりです。「殺し屋は修羅狩りとの契約期間を把握している」とのことですが、現に殺し屋は刃がいる屋敷に堂々と攻め入っておりましたからね。仮に「あの殺し屋個人」だけが知らなかったのだとしても、前の契約主は襲撃に対して毎晩のように怯えておりました。つまりは刃がいるにもかかわらず、何人もの殺し屋たちが頻繁に襲ってきていたわけですよね。


 そもそも刃は前の領主に入れ込んでいたのであれば、契約期間にかかわらず「友達として」彼を守ってもよかったのではないでしょうか。少なくとも雫玖は「仕事仲間」ではなく〝友達〟であると明言しておりますし、友人を作ってはいけないわけでもなさそうです。修羅狩りが強大な権力によって統率された組織でもなく、〝個人事業〟であれば尚のこと。泣くほど慕っていたにもかかわらず、「契約が終わったから」と言って引き上げる。このあたりの理由はなんなんでしょうね。


 「真面目で不器用な性格である」と言えばそれまでなのですが、刃の行動原理が今ひとつ掴みきれません。失われる命を憂いているわりには、自身の妙な拘りのせいで命を見捨てているのですから。命を優先していただきたいところです。



 そして殺し屋は「絶対悪」、修羅狩りは「人々の希望の光」のような説明がたびたびなされるのですが、それを素直に受け入れられないのが〝序章〟での大男の存在です。彼は非常に人間的であり、悪人ではあるものの、心の通った登場人物として描かれておりました。彼の姿を最初に見せられていることによって、私としては「殺し屋も大変なんだな。彼には頑張ってほしい」と応援したくなっているんですよね。


 大男との会話が一切通じず、奇声を発しながら襲い掛かってくるなどであれば「殺し屋怖い」となるのですが。殺し屋という「人間」ではなく、文字通りに「修羅」と化した存在であるといった具合に。外見を化物にせずとも、心が「修羅」であると感じることができれば充分です。あそこは刃の「不殺精神」を見せるための場面であったとは思いますが、私は殺し屋の大男の方に注目してしまったんですよね。




【6】◆第五話 依頼:


 雫玖と共に自宅へ戻った刃の元へ、新たな依頼が舞い込みます。〝こう〟というのは「京都」にあたるのでしょうか。良いネーミングですね。皇位が途絶えているのが悔やまれますが。じつは皇統が存続されていたという流れであれば良いのですが、完全に途絶えてしまったのであれば「江戸」ベースでも良いのではないかとも思いますね。私のように、無駄に舌打ちをする読者からの反感も防げますし。


 どうやら刃には貯金もなく、家も立派であるとはいえない様子。やはり修羅狩りへの報酬は、高いわけではないようですね。刃自身も特に仕事を選んでいるわけでもなく、仕事がなければ死活問題であるとのこと。雫玖が刃と戦う可能性をまったく不安視していないあたり、修羅狩り同士が戦わない理由があるのかもしれませんが。読者としては、その理由を知りたいところではありますね。



             *



 ここで〝第一章〟が終了です。話数としては少なめなのですが、色々と語りすぎてしまったこともあり、文字数が多めとなってしまいました。


 したがいまして、ここで一旦【エピソード感想】を区切らせていただきます。あとは次のページにて、各オプションに基づいた感想のまとめを述べたいと思います。

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