【エピソード感想】脳筋!追放勇者の魔法教室/司馬 ばん さま 《1》
◇「参加作」を読もうと思った理由:あり
まずはじめに、本作は企画参加時点からタイトルが変更されておられますね。
元のタイトルは「いわゆる長文タイトル」だったこともあって、しっかりと覚えていないのですが、今回のタイトルは覚えやすくて非常に良いと感じます。私は今のタイトルが好きですね。元々の「読もうと思った理由」では「どんな物語なのかはまったく想像がつきませんので、拝読が楽しみでございます」と述べていたのですが、現在のタイトルですと、どういった作品なのかといった雰囲気も伝わってまいります。いずれにせよ、楽しんで読ませていただきます。
*
◇プロローグ 決戦のレッドドラゴン!:
勇者〝ラグナ・ロック〟と火竜の戦いの場面が描かれておりますね。とても覚えやすい名前でいいですね。召喚された際に『干し肉になるがいい!』とか言い出さなければ良いですが。それは別のゲームですね。
この勇者ラグナの戦歴や、彼が強い理由を「最初に」そして「簡潔に」教えてくれる構成も素晴らしいと感じます。この説明を飛ばしてしまうと「なんでこの主人公こんなに強いの?」と、冷める読者もおりますからね。
ここではラグナの剣が〝剛剣サザンクロス〟という名であることや、装備に魔法を付与するエンチャントが施されていることなどもわかりました。ユニーク武器に魔力付与、最初から引き込まれる要素がてんこ盛りですね。
また、文章に関しては、地の文は〝良い意味で〟やや硬めではあるものの、感情が籠もっているタイプの地の文ですので、非常に取っ付きやすいです。例えるならば、酒場で吟遊詩人が語っているような雰囲気ですね。難読漢字には「ふりがな」が付いているのも高評価です。
◇第一章 勇者ラグナ立志編 / 第1話 凱旋!勇者ラグナ・ロック!
ドラゴンの首を持ち、〝ガンバーランド王国〟の〝王都ガンバラ〟へと凱旋したラグナ。彼の従者の名前は〝セバスチャン〟でしたし、本作は固有名詞が非常に覚えやすいですね。セバスチャンはキツネ耳の獣人のようです。そして、かなりの美少年とのこと。これは一部からの人気が高そうですね。
ラグナは戦闘力こそ高いものの、あまり頭がよろしくないようですね。16歳で勇者として旅立ち、通貨の単位がゴールドというと、ドラクエ的な世界観でしょうか。極力読者がイメージしやすいものを並べることは、特に序盤では重要な点であると考えます。これも良い構成であると思いますね。
高笑いと共に市民の前を練り歩くラグナとセバスチャンでしたが、なにやら周囲が彼らへ向ける視線はあまり良いものではない様子。そして国王から言い渡された言葉は賞賛ではなく〝国外追放の刑〟でした。
◇第2話 追放!勇者ラグナ・ロック!
いきなり言い渡された追放処分に対し、申し開きをするラグナとセバスチャン。謁見の間には重鎮たちが並ぶなか、ラグナと王は口喧嘩のようなやりとりをしています。どうやらラグナに対する仕打ちの裏には〝金〟が絡んでいる様子。
この場面の地の文ですが〝怪訝〟にもふりがながあると良いのではないかと思われます。読めない方には難読ですし、前後の文脈的に「けげん」とも「かいが」とも読み取れますので、ここはふりがながあった方が、迷うことがなくなるでしょう。
◇第3話 何者⁉闇夜の訪問者!:
時は遡り、ドラゴン退治に出かける前夜の場面ですね。ここではラグナが孤児であることや、内心では国王に深い恩義を感じていることなどが示されました。そして自身の〝勇気〟を、なによりも誇りに思っていると。まさに王道の主人公ですね。
◇第4話 結局追放!勇者ラグナ!:
王宮の場面へと戻ります。どうやらラグナの元を訪れた〝財務大臣〟はニセモノだったよう。ラグナは計算のみならず、人物の顔を覚えることも苦手であるようです。
まさにタイトルどおりの脳筋――と、ここで気づいたのですが、このタイトルは「勇者が魔法教室を開く」わけではなく、「勇者が魔法教室に通わされる」といった意味なのかもしれませんね。それならば「追放勇者〝と〟魔法教室」の方が適切であるとは思うのですが、これはこれで良いのかもしれません。
ニセモノの件に対する誤解は解けたものの、結局ラグナは追放となってしまいます。ここで気になるワードは〝ミレー村〟ですね。なんらかの理由によって火災に見舞われたことを察することはできますが、大賢者によって口止めされてしまいました。〝
捨て台詞と共に王宮を去るラグナでしたが、どうやら追放は「ただの処分」ではない様子。もしかすると、彼を学校に通わせたいという親心なのかもしれませんね。
◇第5話 勇者の決意と美貌の未亡人:
エピソードタイトルが落ち着きましたね。「〇〇!勇者ラグナ!」で貫き通してほしかったところでもありますが、わかりやすさが第一です。
登場人物の個性にばかり目がいきがちですが、本作は情景描写が素晴らしいですね。人物の服装や特徴のみならず、〝入城時に番兵に預けてあった剛剣サザンクロスを受け取る〟といった描写があることによって、ラグナたちが訪れた場所が格調高い王宮であったことを感じさせてくれます。雰囲気としてはラノベよりも、古典ファンタジーに近いのかもしれませんね。このバランス感覚は、私は非常に好みです。
そして、やはり「地の文」には感情がありますね。急に人格を持ったかのように、率先して説明を始めてくれました。〝非常に紛らわしくて不便極まりないのだが、王家の風習などというものは概してこんな物かもしれない。因習であろう〟とまで語りはじめてしまっては、完全に一人のキャラとして成立してしまいます。とはいえ読み手としては、わかりやすくて助かります。
この場面で重要なのは、美しき王妃〝マレーネ〟の登場といったところでしょうか。彼女の夫である先王は病に倒れ、未亡人となってしまったようですね。美しいとはいえ、6歳児の母親。彼女はヒロインではないとは思われますが、どうなのでしょう。ラグナは19歳ですし。もしかすると、彼は年上好きなのかもしれませんね。
◇第6話 追放されたら入学しようぜ!:
オプションにて見所にも挙げておられる〝第6話〟ですね。エピソードタイトル的には「繋ぎの回」にも思えるのですが、張りきって拝読させていただきます。
宿へ戻ってきた二人。宿に名前が付いているのも好みです。世界観に深みが出ますね。――と、言うかラグナは3年もの間、ずっと宿暮らしだったということでしょうか。これまでの会話から推察するに、世界を飛びまわっているわけではなく、この王都ガンバラを拠点としていたようですので、王も住み家を与えてあげればよいのにとは思います。これまでにも何度も褒賞を与えられているようなので、尚更ですね。
とはいえ、セバスチャンが給仕をしていることから察するに、一種の賃貸契約のような状態にあるのかもしれません。たしか『アトリエ』シリーズのどれかでも、そういったものがありましたね。
そして〝8万ゴールド〟あれば、一生食うに困らない金額であるとのこと。そう考えれば、王が追放と共に寄越した〝5万ゴールド〟は、じつに破格であったことが窺えますね。そしてラグナとセバスチャンの互いを思いやる優しさも出ております。
ここで〝大賢者ミスラン〟が再び登場。転移系の使い手は、総じて優秀な人物ですからね。そして強いのは確定です。そんな彼の口からは、ミレー村の詳細と、王の真意が語られます。なによりも、明らかにラグナの興味を〝魔法〟へ向けさせようとしておりますね。若干強引にも思えるのですが、彼の性格を考えれば、こうでもしなければ「学校へ行こう!」とはならないでしょうからね。グッジョブです。
かくしてガンバーランド領内の〝魔法学園グリーンモア〟へ入学することを決めた二人。国外へ追放された勇者が、正体(――と、おそらくは実力も)を隠す理由づけにもなっておりますね。非常に良い構成であると感じました。
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この〝第6話〟で〝第一章〟は終了ですね。感想としては少々短いのですが、オプションに指定されておりました〝第6話〟を通過いたしましたので、これで各エピソードの感想を終えさせていただきます。
あとは次のページで、各オプションに基づいた「まとめ」を述べたいと思います。
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