【エピソード感想】エンゲージリンク/坂条 伸さま 《1》

 こちらはオプションへのコメントにて〝「参加作」を読もうと思った理由:なし〟が選択されておりますので、さっそく本編の感想へと入らせていただきます。


 また、ネガティブなオプションとして〝「良くない意味」で気になった点(辛口)〟が選択されておりますので、少し踏み込んだ感想となっております。



 先にお伝えさせていただきたいのですが、本作の感想は性質上、「あらかじめ〝通し〟で読んだ上で、記憶をさかのぼる形で感想を書く」という形式を執らせていただきます。そのため「現時点では判明していない名前」などを、感想内では先出ししております。本作は「名前が判明した後に、実際に呼ばれる名前が決定される」という展開が多く、本名と呼び名が一致しないことが多々あるためです。


 したがいまして、「読みながら感想を書く」という、これまでのフォーマットでは感想を書くことが非常に困難であったことが理由です。


 もちろん、だからといって「駄目な作品」だというわけではございません。こうした流れそのものには、非常にリアリティもあります。あくまでも私が勝手に決めたルールによる、私側の問題です。ここはお間違えのないようにお願いいたします。



             *



>第1話 転生×登校


 語り手が〝夢〟を見ている場面からの開始です。〝おれ〟なる人物が主人公なのか、この夢は本当に夢なのか。謎と興味が描きたてられる、良い書き出しであると感じます。その夢の中で、ある〝女性〟が亡くなってしまった模様。〝おれ〟が〝ぼく〟になり、〝わたし〟へと変わる様子は非常に印象的ですね。


 〝生命の終焉〟など、やや硬いような言い回しが散見されますが、見所として〝厨二感溢れる設定〟が挙げられておりますので、ここは純粋に高評価です。


 そして場面が切り替わり、〝命音みこと〟なる人物の場面へと移ります。幼馴染からの〝今日は女の子〟という発言があることから、少女であることが窺えます。フルネームは〝あま命音みこと〟です。なんとも神々しい名前であると感じます。


 幼馴染の〝はなゆき〟とは家族同然の付き合いであるらしく、毎朝こうして主人公の世話をしてくれているようです。


 私が「幸崎」であるせいか、彼女の名前をどうしても「こう」と読んでしまいそうになりますが、それは私だけの問題ですので、どうにか慣れてまいります。



 命音と幸は今日から高校生であるらしく、〝国立探索者高等専門学校、通称『探専』〟の生徒となるようです。ここからは世界設定が説明されます。


 ややメタな説明に思われる箇所もありますが、命音に〝前世の記憶がある〟ことや〝その世界には魔法は無かった〟と語られていることから「世界を外側から見た」メタな視点が入ったとしても違和感は無いように感じます。この世界でも西暦が使われており、東京が在り、北欧神話が存在することを察することができます。


 ここでの重要な用語は〝魔素マナ〟と〝魔詛マソ〟でしょうか。命音は自身の〝一日ごとに勝手に性別が変わってしまう魔法〟を制御するため、魔物を倒して魔詛マソを取り込む必要があるようです。主人公が戦いに身を投じざるを得ない目的が非常にわかりやすく、良い流れであると感じます。



 なお、本作はエピソードの最後に、あとがきとして専門用語の解説が入っています。こういったものは読者目線では「どう」なのでしょうね。良いとも良くないとも言えません。読みたい人は読むでしょうし、飛ばす人は飛ばすでしょう。私も昔はやっていたのですが、今では「設定資料集」を別作品として作成しております。


 私の読み手のスタンスとしては『専門用語を無理に覚える必要はない』であると示しておりますので、今回は〝Tips〟を読まないということで感想を進めてまいります。純粋に物語内に書かれている内容のみを拾ってゆきますので、読者の理解度を計る「ものさし」としても使っていただけるのではないかなと。




>第2話 魔法×位階


 命音と幸が〝探専〟へと到着し、自己紹介を始める場面からのスタートです。この〝探専〟なのですが、パッと見ではなんなのかわからないとも感じますので、「探専高校」などの略称でも良いのではないかと感じました。是非ご一考ください。


 また、本作の「語り」は命音の一人称なのですが、本日入学したばかりのわりには「担任教師の情報」について詳しすぎるような気もいたしますね。最初は名前と担当教科だけでも充分ではないかと感じます。


 もしくは命音が〝彼は、去年まで現役の迷宮探索者として活動していた新任教師だ〟とのではなく、「彼は、去年まで現役の迷宮探索者として活動していた新任の教師とのことだ」のように「先生自身が説明したと受け取れる表現」にしておくと、より自然であると思います。目上の教師を〝彼〟と呼ぶのは、少々達観している感覚はありますが、これも「厨二」で乗り切ることはできそうです。


 命音の魔法ギフトは〝三身流転トリニティ〟であり、効果は性別の変化。そして幸の魔法ギフトは〝溟晶の理ニクスマグナ〟らしいです。〝触れると熱と魔力を奪う雪を生み出す〟ということから、攻撃系の能力だと推察できます。それにしても名前がかっこいいですね。


 自己紹介を終え、教師からは〝それぞれ四人で班を作るように〟と指示されます。当然というべきか、特に探索には役に立ちそうもない魔法ギフトを持った命音と、危険な魔法ギフトを持った幸は余り者となりました。現実ですと悲しいですが、「主人公の適正」としては通常どおりと言えますね。迷宮は最大六人の班で行動するということで、古き良きダンジョン探索のテイストを味わうことができそうです。


 最終的には教師からの指示により、班を組むことができなかった〝十八女さかり〟とつなの二人を加えた、四人パーティが結成されました。かなりの難読漢字ですね。ふりがなが付いていて本当によかったです。ありがとうございます。


 ただ、ルビの付け方なのですが、〝十八女馨さかりかおる〟のようにまとめてしまうと盛大にズレますので、「十八女さかりかおる」のように一文字ずつ振ると綺麗に表示することができます。当然ながら〝三身流転トリニティ〟などは、そのままで大丈夫です。


 この二人にも少々癖があるようですが、良い人であるようです。彼女らの能力に関しては一旦流します。ここで重要だと思われる箇所は、栂野藤子が女子であり、十八女馨が男子であることと、四人はそれぞれ「下の名前」で呼び合うことに決めたという点です。ふじかおるですね。こうした「呼び名」をめぐる展開がかなりの頻度で出てまいりますので、今後は「主人公が実際に呼ぶ名前」での記載のみをいたします。


 班も結成し、実際に迷宮へと赴く場面なのですが、ここで引率を行なうことになる魔法士ギフテッドたちが加入します。彼らの自己紹介と〝ランク〟に関する解説も一旦流します。女性の〝たかしな〟と男性の〝ひらつか〟の二人の先輩が加入しました。


 こうした名前や能力といったものは、道中などで少しずつ小出しに紹介していくと無駄がないのですが、「この世界なりの自己紹介の方法」ということで一定の没入感はありますね。お笑い芸人が先輩らに「所属事務所と何期生であるか」を名乗るようなものです。ああしたものを見ると、「業界っぽい」と感じるのと同様ですね。


 とはいえ、ファンタジーの読み方に慣れた読者でなければ「専門用語が多すぎてついていけない」と感じてしまう可能性はありますね。私は前述したとおり、無理に覚えるつもりはありませんので大丈夫です。


 引率の高階と平塚も知り合い同士であるらしく、実質的に三つのバディが一組となっている状態ですね。安定感はありますが、一つ間違えると不和が起こりそうです。



 Tipsは読まないとは言ったものの、目に入ってしまったので。天皇陛下が予知の魔法ギフトをお持ちだったという設定は非常に良いですね。大東亜戦争を回避できたという展開もよろしいのではないかと。しかしながら、あの戦争の直接の原因はアメリカの主導による「通商破壊」によるものなんですけどね。目的は日本を前線基地として、中国を手に入れるためですが――。そこは置いておきましょう。




>第3話 迷宮×魔物


 実際に迷宮に入る場面からのスタートです。主人公らは〝魔導銃〟という武器を標準装備しているようですね。説明を見た感じ、魔力をそのまま打ち出す武器といったところであると認識しました。こういう物はワクワクしますね。


 迷宮へ入る場面にて、主人公は〝酩酊感〟に襲われるのですが、高校生が「酩酊」と言うと少々引っかかってしまいますね。「目眩めまい」などが妥当でしょうか。しかしながら、風邪を引いた際などに感じることもありますので、特に意識して読まなければ大丈夫ではあると思います。今回は「辛口」のオプションですので、指摘を多めにさせていただいております。愛を込めて。


 最初の迷宮は屋外であるようですね。迷いの森といったものか、「世界樹の迷宮(ゲームのタイトル)」のような感じでしょうか。しっかりと迷宮内の描写がされているのも高評価です。さりげない描写によって、二人の先輩の個性もしっかりと出ていますね。登場したばかりにもかかわらず、早くもキャラが立っています。


 ただ、特に読み方が難しい〝かおる〟には毎回ふりがなが欲しいところですね。個人的には〝幸〟も「コウ」と読みがちです。


 また、私は厨二病なので読めるのですが、〝けんげん〟や〝たおされる〟などにもふりがながあると、詰まりがないのではないかと思います。


 高階さんの〝雲鏡矛盾アイギスのたて〟もお披露目ですね。味方を支援するための魔法ギフトであると同時に、実際に〝盾〟も出現します。描写がスマートで無駄がなく、イメージしやすく描かれていると感じました。かっこいいですね。



【 支給され試し撃ちをした際にも思ったが、音や反動などは殆どなく、まるで玩具のようだ。】


 この部分なのですが、〝支給され〟を消し忘れたか、「支給された際の試し撃ちでも思ったが」などの誤字であると思われます。ご確認いただけますと幸いです。



 魔物アダプターには〝獣魔〟と〝妖魔〟の二つがあり、ゴブリンなどの空想っぽい実体は〝妖魔〟に分類されるそうです。この辺りの説明も必要な情報が揃っていて無駄がなく、タイミングも適切であると感じました。色々と想像もふくらみます。


 初陣を勝利で飾ったものの、「お約束」というべきか、高位の魔物である〝シャドウウルフ〟が群れで登場してきました。まずはチュートリアルといった感じで、二人の先輩が前線に立ち、戦い方を指南してくれます。このエピソードは、ほぼほぼ先輩たちの見せ場といった感じですね。非常に安定しております。




>第4話 覚醒×襲撃


 構成としては安定しているのですが、物語では激戦が続いています。


 ピンチからか疲労からか、なにやら幸が〝目覚めた〟模様。ここの場面は素晴らしいですね。比喩でも誇張でもなく〝良い意味で〟鳥肌が立ちました。〝世界に溶ける〟や〝世界に響く〟といった表現も私は大好きです。


 どうやら〝目覚めた〟というのは〝第二魔法〟のことを指しているようですね。〝神話を補完する〟といった言い回しにも、想像を掻きたてられます。このエピソードはまさに「神話覚醒」といった場面で、夢中で読みふけってしまいました。



【 馨が、どう見ても重そうな右手の長槍を片手で軽々と振り回すと、槍に触れたフォレストウルフの身体は一瞬も抵抗できずに千切れてちりへと化した。】


 この部分にのみ〝フォレストウルフ〟が登場しているのですが、もしかすると誤字でしょうか。また、〝ちりへと化した〟の部分なのですが、「ちりと化した」か「ちりへと化す」などとする方がリズムが良くなるのではないかと感じますね。もちろん、現状のままでも大丈夫です。


 あとは〝べっこう〟〝もや〟〝らちがい〟あたりには、ふりがながあると良いかなと感じました。〝殲滅〟は――おそらく厨二病ならば読めますね。




>第5話 天嵐×転身


 魔物の攻撃によって気を失った主人公の精神世界からのスタートですね。


 ここで多用されている〝降る〟なのですが、「くだる」とふりがなを振っておいた方が良いかもしれません。初見では「る」と読んでしまいますからね。〝つむる〟にも、ふりがながあると良いと思われます。



 ここで一人称が〝俺〟に変化しましたね。これまでの〝私〟も凛々しい口調だったので大差は感じないのですが、しっかりと「男性的な力強さ」は伝わってまいりました。個人的には〝俺〟の方の主人公が好きですね。素直にかっこいいです。


 そして主人公の第二魔法は日本神話に由来しているようですね。かれの〝命音みこと〟という名前的にもぴったりだと思います。トリニティ(三位一体)から察するに、「キリストかな」とも考えていたのですが、さすがに扱いが難しいですからね。


 主人公が戦闘中にも性別を変化させながら攻撃するというのは、まったく新しいのではないでしょうか。〝おれ〟が〝わたし〟となって〝私〟となるのも場面を想像できて良いと思います。さすがに毎回ですと、少々くどいかもしれませんが。




>第6話 日輪×流転


 主人公の無双状態といった場面ですね。一見すると三人称視点になったようにも思えますが、自分自身を俯瞰しているといった状態でしょうか。ここまで読み耽っていると意図は充分に理解できますので、演出としては良いのではないかと思います。


 どうにか窮地を乗り切った六人。高階さんの言うとおり、本当にしつこかったです。シャドウウルフ。話数でいうと3話、ここまでの半分は戦っていましたからね。昔プレイした3DダンジョンRPGで、無限増殖する犬にジリ貧で負けたことを思い出しました。まったく勝ても負けもせず、1時間くらい連打しておりました。


 どうやら今回の目的は、主人公らの〝第二魔法〟を覚醒させることがメインだったようです。みんな活躍してはいたのですが、やはりMVPは高階さんでしょうか。彼女のサポートが無ければ使えない大技が多い印象でしたからね。支援職は有能です。今後もかれらに付き合ってくれるのか、そういった点も楽しみなところです。



             *



 さて、これで投稿されている全エピソード、および〝まとめ読み〟の範囲を読み終えましたので、一旦感想を終えさせていただきます。あとは次のページにて、各オプションに基づいた感想のまとめを述べたいと思います。

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