【エピソード感想】イデアの海/kinomiさま
>◇「参加作」を読もうと思った理由:あり
特に強く惹かれた部分はタイトルですね。〝イデア〟の意味を知っているかどうかでも、本作への印象が変わってくるのではないかと思われますね。
私は「なんだか難しそう」と感じると共に、「これは面白そうだ」とも感じました。あらすじからは抽象的かつ、幻想的な雰囲気が感じられます。こうした「非日常」を感じる物語は大好きですので、拝読が楽しみです。
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>予約時刻自動実行_その時間そこに存在したはずの追憶
〝渡良瀬 夏〟なる人物が書き記したと思われる、なんらかの文書が掲載されておりますね。もしくは文庫本の先頭によく書かれている、なにかの引用文みたいなものでしょうか。どうやらこの人物は、「なにかを間に合わせようとしていた」ことを察することができますね。こうしたものはあとで読み返すと意味がわかったりしますので、個人的には大好きな演出です。
>idea_first_wave/01_あるいは現の蒼海にて
主人公と思われる〝私〟が誰かに起こされる場面からのスタートです。まずは物語に入る前に、文章の質感が「美しい」と感じました。どうやら〝私〟は〝人間〟にこだわっている様子。人間以外の実体が存在している世界観なのかもしれませんね。
どうやら〝私〟を起こした人物は、赤い眼鏡を掛けた女性である様子。〝概念〟や〝実体〟という単語から、やはり私が最初にイメージしていたものと、大方は合致しているようですね。これは読み進めるのが楽しみです。
この眼鏡の人物から語られる〝概念女子高生〟という言葉。人類が持つ「女子高生」というイメージの結晶みたいなものでしょうか。どうやら主人公は「それ」ではなく、しっかりとした実体を有しているようです。
現在、二人が居る場所は、どこか現実ではない特殊な空間であるようですね。この場面の幻想的な描写は本当に美しいです。どこか退廃的な雰囲気も感じますね。
この眼鏡の女子高生の名前は〝ナツ〟というようです。前回のエピソードにも似た名前が出ておりましたね。そして主人公の名前は〝ハルカ〟であることもわかりました。ナツはサバサバとした、研究者のような口調をしておりますね。
この場所が何なのか、どうやらナツにもわからないとのこと。そしてハルカに対し、自分と一緒に来るようにと促します。
>02_叙情的に解かれる距離の正体の一つ
引き続き、駅のような不思議空間の場面ですね。足場が途切れていたり、物が無数に浮かんでいたりと、私のイメージではアクションゲームの空中面といった感じでしょうか。赤い配管工ならばともかく、普通の女子高生には難易度が高そうです。
ハルカは不思議空間に動じることもなく、冷静に呼吸の可否や物体の質感、重力の働く方向などを確かめておりますね。彼女も研究者肌の聡明な人物であるのかもしれません。読み手の没入感が損なわれることもなく、良い語り手であると感じます。
対するナツは、かなり不思議な話し方をするようです。なんだか色々な「属性」のキャラクタが交じり合っているかのようですね。読者の持つ「キャラ」という概念が具現化された存在であるかのようにも読み取れますね。彼女を理解しようとすればするほど理解できなくなるのですが、それが彼女の良い点であるとも感じました。
ナツと共に〝駅〟の中を進みながら、ハルカは自身の考察や心情のような言葉を並べます。ここの感想はナツと同様ですね。「ちょっと難しいんだけどわかる気がする」と。まさにそのとおりです。
ハルカの話を聞き、ナツが鞄から、〝二丁の銃〟を取り出します。それぞれ黒と銀色をしているようですね。それをどこへ撃ったのか、そもそも撃たなかったのか。曖昧なところも何かの伏線になっている可能性がありますね。いや、もしかすると意味などないのかもしれません。この「ありのまま」の情景が非常に心地よいですね。
続いてナツが取り出してハルカに見せたのは、古い携帯電話のようですね。アンテナが付いているということは相当古い機種であるようですが、ハルカは特にリアクションをすることもなく〝ケータイ〟であると言い当てています。そして今度はリンゴ製のものだと思われるスマホを取り出してみせました。
どうやらナツは「ガラケー」は存在しているが、「スマホ」は存在しない世界から来たようです。そんなナツはハルカに対し、〝私よりも未来から来た〟と推察してみせました。どうなのでしょうね。アンテナ付きの携帯に対して、特に違和感を示してはおりませんでしたので、ハルカは実は〝女子高生〟ではないのかもしれません。
ここでナツの変わった口調の理由も明かされました。どうやら自身の「時代も含めた出身地」をハルカに悟られないようにしていたとのこと。しかしながら、いまでは彼女のことを信用し、自身のフルネームである〝渡良瀬 夏〟の名を教えました。
さて、ここまでを拝読した感じの印象ですと、本作は「SFミステリ」といった趣の物語であると感じました。つまり私の大好きなやつですね。ハルカを信用してみせたナツですが、彼女の言葉をそのまま受け取ってはいけないような気もします。
とはいえ、まだ物語の着地点なども、まったくもって不明です。これは〝良い意味で〟予測ができない展開が期待できますね。
>03_航るママチャリ波動理論
不思議な序文からのスタートですね。「紙の本」を読み進めているような感覚が味わえます。私は非常に好みですね。
ハルカとナツは〝門番〟が遮る道を突破したようですね。改札のようなものでしょうか。ハルカも認識の一部を失っているものと考えられますので、「信頼できない語り手」としての要素も有しておりますね。目の前の物体は何のイデアが原型となっているのかと、どこかタイトルの意味を感じさせる場面でもあります。
この場所は眩しいながらも、太陽のような明確な光源は見当たらないとのこと。もしかすると、周囲の空間は「空」というよりも、「青い広大な閉鎖空間」のような状態なのかもしれませんね。
先へ進むと建物が綺麗に削り取られた光景があり、通路は途切れてしまっておりました。完全に空中で孤立した状態となってしまったようですね。
しかしナツには秘策があるらしく、ハルカをある場所へと案内します。そこにあったのは〝ママチャリ〟でした。どうやらこれは空を走れる、伝説の選ばれし乗り物らしいですね。こうした言い回しが入っているのも良い点であると思います。
やはり冷静な科学者タイプの二人であるためか、すぐに「いくぞー!」とならないようで、色々と推理や考察を行ないます。ここの場面は緊迫感があって良いですね。浮いているものと浮かないものの違いも気になってまいります。
そしていよいよママチャリに二人乗りし、飛び立つ場面。〝瞬時に巡り膨らむ不安と期待の風船、どうか私たちを釣り上げて〟という表現がとてもお気に入りです。この場面と台詞は間違いなく印象に残りますね。
>04_概念と実体のアンサンブル
不思議な序文からの開始です。これは誰の意識なのでしょうね。前回は〝波動スクーター〟というSFチックな物が登場していましたが、今回はポラロイドとインスタントカメラです。一見すると、同じ時代に存在しているとは思えませんね。――と、いうことは、これはハルカの言葉なのでしょうか。
空中を飛ぶママチャリに跨るナツとハルカ。ナツの運転技術はなかなかのもののようですが、やはり独特の不安定感とスリリングさが伝わってまいりますね。360°が「空」という空間は、もはや明るい宇宙とでも呼ぶべきでしょうか。そこでも〝下〟を強く意識してしまうのは、やはり「空」であるからなのでしょうね。
二人は円盤状の陸地を発見し、その上へと降り立ちます。どうやらアスファルトで舗装された道路が円形に切り取られたものだったようですね。ここにはガードレールや電話ボックス、そして民家やコンビニらしき建物などがあるようです。電話ボックスがあるということは、古い時代のものでしょうか。
ママチャリを降り、ここを探索することにした二人。人影もありましたが、セピア色に色あせてしまい、動くことはありませんでした。これがナツの言う〝概念女子高生〟であるらしいです。停止してはおりますが、触ると柔らかいようです。私ならば血が流れるか試してみたり、中身を確かめたくなったりもするのですが、彼女らはこの不可解な状況においても、しっかりと倫理観を保持しているようですね。
この「色を失くす」ということも、何かの暗示となっているようですね。建物は屋根だけが切り取られたように浮いていたりということから、さながら作りかけのゲームの町のようにも感じますね。謎は増えるばかりですが、同時に興味も尽きません。
>05_ガベージコレクション
ハルカとナツが「この空間」を探検すると決めた矢先、何かを感じ取ったナツがただならぬ様子で走り出します。急展開といった場面ですね。
たびたび思っていたのですが、妙に「カメラ」を思わせる言葉が登場しておりますね。前回の〝04〟の序文はカメラに関するものでしたし、ピントや
どうやら〝島が消える〟瞬間に遭遇してしまった二人。この場面の様子から察するに、存在そのものを絡め取られてしまうといった状態でしょうか。ハルカはナツに抱きしめられることによって、この窮地を逃れたようです。非常に良い場面ですね。
島が消えたあとには、すでに存在している島に、新たな変化が起きるようです。最初にハルカが目覚めた〝駅舎の島〟にも変化が起こっておりますね。と、いうことは、ハルカは島は消えたことによって出現したということなのかもしれません。
ここで改めて、互いの友情を確認しあった二人。〝一緒に〟のあとに続く言葉がきになりますね。果たしてこの空間はなんなのか。ハルカとナツは元々どこからやってきたのか。非常に気になるところです。
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さて、物語は序盤なのですが。感想の文字数が多くなってしまいましたので、区切りの良いと感じた〝05〟にて、エピソードの感想を終えさせていただきます。そして次のページにて、各オプションに基づいた感想のまとめを述べたいと思います。
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