【エピソード感想】妄想彼女とスピッツと/@fkt11さま 《1》

>◇「参加作」を読もうと思った理由:あり


 まずはジャンルが「ミステリ」とのことで、是非とも拝読させていただきたいなと感じた次第ですね。〝良い意味で〟不可解なコピーも良い感じです。あらすじによると、タイトルのスピッツはロックバンドとのこと。実在するあのバンドなのかどうなのか、そういった点にも興味をそそられました。


             *


>承前/0-1


 主人公の語りによる開始ですね。かなり〝夜の散歩〟が好きな様子。じつは私も夜の散歩が好きで、頭の中を整理する際には出歩いておりますね。最近は日本語ではない大声が聞こえてきたりで少し物騒ですが。いったいどうなるんでしょうね。


 〝目からビーム〟のくだりは非常に好みですね。一気に好感が持てました。〝根拠のない全能感〟もわかる気がいたします。支配者になった気分になるんですよね。


 さて、推理と考察が〝あり〟とのことなので、現状を把握しながら読み進めてまいりましょう。現在は9月。街には野良猫ないし地域猫がいる。〝桜池神社〟と〝もみじ公園〟という場所がある。街には自販機があり、夜に帰宅するサラリーマンがいる。人工衛星が見えることがある。――どうやら田舎でも都会でもない、下町といった風情を感じますね。一番好きなタイプの街かもしれません。


 主人公は〝桜ヶ丘高校〟の2年生のようですね。どうやらめんどくさい警官からの職質を受けてしまった模様。こういう警察は心底嫌いですね。個人的にも、警察に対しては良い感情を持ち合わせておりません。


 そんな主人公〝守山〟の窮地を学習塾の講師〝東堂〟が救います。しかしながら、守山は彼のことを知らず、一方的に自身の個人情報を知られている様子。


 この東堂の会話術も見事ですね。一番の〝面倒事〟であった、無能な警官たちを撃退してくれました。――と、読者の私は思ったのですが、やはり守山くんは自分のプライベートな情報を知っている東堂の方を警戒している様子。無理もないですね。


 しかし東堂は本当に「いい人」だったらしく、純粋に守山くんの助けに入ってくれただけのようでした。ここのタネもお見事ですね。今のところ、完全に作者さまの術中にはまっているような気がいたします。


 最後の会話の場面にて〝ユーミン〟と〝スピッツ〟の名前が出たことから、やはり実在のバンドのことであることがわかりますね。私はあまり詳しくないのですが、とりあえず「スピッツの曲の知識は無い」ということで進めさせていただきます。




>0-2


 日が変わり、学校帰りに母親から頼まれたお使いを済ませる守山くんの場面からスタートですね。商店街にあるスーパー。ウチの近所にもありますが、やはり下町っぽさを感じますね。コンビニ至上主義というか、時おりスーパーに行くのを恥ずかしがる高校生もおりますが、彼はそういった俗なタイプではない様子。


 守山くんは夜のみならず、夕方の景色も好きなようですね。その点も相まって、情景描写が繊細で目に浮かぶように描かれております。そして駅前にて見つけた〝東堂塾〟の看板。守山くんは先日のお礼を兼ね、塾へと向かうことにします。


 しかし、塾に居たのはまったくの別人――むしろ先日の〝東堂〟がまったくの別人だったようですね。こちらの〝本物〟との会話から、様々な推理が展開されます。二日前に出会った東堂、改め〝口髭紳士〟はただの〝いい人〟だったのか、それとも?




>妄想彼女/1-01


 〝有賀つぐみ〟という人物への言及からの開始ですね。〝ちょっと変わった女の子〟とのことですが、趣味や容姿など、かなり事細かに語られています。彼女も守山くんと同じクラスにいるようですね。


 この有賀さんは、いわゆる「不思議ちゃん」といった感じでしょうか。何度もUFOを見かけたことがあるとのこと。私も最近見ましたね。とても美味しかったです。


 しかしながら、守山くんとの会話を見るに、有賀さんはかなり頭が切れる様子。どちらかというと「天才」に分類されるタイプですね。そして彼女の愛読書は〝月刊ムー〟と。なかなかのトリックスターのようです。そんな彼女に守山くんは好意をいだいている様子。――ちょっとだけ解る気もいたします。


 ある日のこと。不意に有賀さんの口から弟の〝航太〟が人を殺したかもしれないとの不穏な言葉が告げられます。物語が動き出した感がありますね。



 ここで文章についてなのですが、〝せき〟には「ふりがな」があると良いかもしれません。〝堰を切って〟とありますので、読める可能性もあるのですが、ちょうど話が「乗ってきた」場面で読み詰まってしまうのは、非常にもったいないかなと。


 あともう一点。この〝1-01〟では、少し場面転換がわかりづらくはありますね。冒頭のUFOのくだりが「回想」だったならば、会話を『 』などにしてみたり、日付が変更された場面の空行を2行にしてみるのも良いかもしれません。現状のままでも意味不明というわけではありませんので、もちろんこのままでも大丈夫です。




>1-02


 有賀さんから聞いた事情を、守山くんが思い返すといった場面からの開始ですね。もしかすると、この部分だけが三人称になっていたのかもしれませんが、守山くんの語りと似ていることもあり、私はそのように受け取りました。


 〝夜中の一時という時間帯があることは知っていたが、それを経験したことは一度もなかった〟という表現によって、二人の特殊性が良く表現できていると思います。こうした表現があることからも、語りが守山くんらしく感じた部分ですね。


 ここでの有賀さんと弟・航太の会話が衝撃的ですね。ここは一旦、伏せさせていただきます。どうやら〝ハマモト君〟という人物が、先日亡くなったとのことでした。




>1-03


 守山くんの場面に戻ります。やはり〝1-02〟は彼の語りだったようですね。――と、思いきや。目の前にいるのは、なんと〝東堂〟でした。かなり場面が飛んだように思いましたが、すぐに状況が説明されるために〝良い意味〟での驚きとして作用しておりますね。テンポも良く、お見事であると感じます。


 ハマモト君は病気で亡くなったようですね。相談相手である東堂は、どうやらあまり乗り気でないというか、守山くんをたらい回しにしようとしている印象があります。いまのところ、口髭紳士の方が頼りがいがありますね。




>1-04


 守山くんによって、航太の体験談が語られます。有賀さんからかなり詳細に事情を聞いていたようですね。信頼関係が築けているのが窺えます。


 どうやら有賀さんの弟・航太は桜池神社の〝秋祭り〟に出かけていた様子。風情があって良いですね。ここの、子供ならではの〝小遣い〟のくだりは、作品世界のリアリティを深める一助となっていると思います。


 例のハマモト君は、かなり嫌な奴のようですね。私はこうしたタイプには、いっさい容赦いたしません。異世界ファンタジーならばブッ飛ばす展開が期待できるのですが、現代が舞台ですと、そうはまいりませんからね。――とはいえ、すでに故人ということで。この場面は読み飛ばしつつ、続きを読み進めてまいります。


 ハマモトをやりすごした航太は、なにやら不思議な店に迷い込んでしまった様子。店主はどこか浮世離れした男性のようですね。店の名前は〝丹波屋〟と言うそうですが、どうにも要領を得ません。売られている物もガラクタばかり。


 もしかすると、航太は丹波屋で怪しい呪物でも買ってしまったのでしょうか。鈴虫を飼うのはオススメしません。夜、とても眠れたものではなかったです。


 そして古びた細い木箱を購入してしまう航太。店主の言い値と航太の全財産がまったく同じだったところなどは、もはや怪しさしかありませんね。どうやら〝手の届かないところを掻いてくれる孫の手〟が入っているそうですが、〝決して箱を開けてはいけない〟とのこと。昔話に登場しそうなアイテムですね。非常にワクワクいたします。本当に「孫」の「手」が入っている可能性もありますからね。しかしながら、今のところ、ハマモトの死因とは結びつかないような気もしますが。


 ――と、思いきや。航太は素晴らしい使い方を思いついたようですね。




>1-05


 守山くんの場面に戻ってまいりました。どうやら東堂と二人で、航太へのインタビューを行なう様子。すると東堂は探偵役、守山くんは助手といったところでしょうか。そうなりますと、東堂があまり乗り気でなかったくだりも深みを増しますね。


 本作の舞台は〝マック〟のある地域のようですね。こちらには〝マクド〟しかありませんので、私の地元ではなさそうです。高校生が〝軽くお茶して〟という言葉をさらりと使うのは、なかなかレベルが高いかと。守山くんはモテるのかもしれません。


 そして、当日。東堂と合流した二人。すでに東堂と守山くんは、かなり打ち解けているようですね。良き人生の先輩か、年上の友達といったところでしょうか。とはいえ礼儀は弁えているあたりが、守山くんの良いところです。


 東堂からの有賀さんへの質問を終え、三人は航太の元へと向かいます。ハマモトの死因は、予想通りのものだったようですね。とはいえ、様々な原因が考えられますので、まだ呪術的な力によって命を落としたと決めつけるには早計です。




>1-06


 航太の部屋へと入った三人。苦手科目こそあるものの、身近にレポート用紙があるということは、かなり頭は良いのかもしれません。私であればチラシの裏か、ルーズリーフあたりで済ませてしまいそうですからね。東堂からの問題を解く航太の様子を見ても、やはり頭の良さが窺えました。とても良い場面です。


 実物の木箱を眺める東堂の様子も臨場感があって良いですね。ここは間違いなく見所ですのであまり多くは語りません。東堂に対する見方も大きく変わりました。どうやら中に入っているものは、私の予想どおりのものである可能性が高いですね。




>1-07


 東堂の見せ場が続きます。これは意味がわかるとニヤリとする場面ですね。そうでなくとも読み進めると、おのずと理解できるかと存じます。


 この場面、〝信頼して欲しい〟となっているのですが、ここは〝信頼してほしい〟とするのが正解ですね。「信頼して」、「何かが欲しい」わけではなく、「信頼してほしい」ためですね。私にはこうした曖昧な説明しかできませんが、よければ見直してみてください。とはいえ、私もよく間違えてしまうのですが。



>1-08


 引き続き、箱の力を試す実験が行なわれます。この辺りも伏せた方が良いですね。まだ本作のリアリティが〝良い意味で〟どの辺りにあるのか不明なことも相まって、「何が起きてもおかしくはない」という状態です。トリックなのか、オカルトなのか、この東堂は何者なのか。まったく興味は尽きませんね。



             *



 さて、まだ〝妄想彼女〟の章は半分のところなのですが。これで一旦、各エピソードの感想を終えさせていただきます。この章タイトルも気になりますね。まさかの「妄想オチ」かとも考えたのですが、実際に実験しているわけですからね。本当に結末が予想できません。非常に面白かったです。

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