【エピソード感想】風見鶏令嬢、救世主になる!?/ノエルアリさま 《1》

>◇「参加作」を読もうと思った理由:あり


 インパクトのある「タイトル」に心を惹かれました。この〝風見鶏〟とは果たして比喩なのか。関西弁を使うということは転生者なのか。どういった形で〝救世〟するのか――。興味を掻きたてられるといった印象ですね。


 〝作品の方向性を見失っている〟とのことでしたので、この感想が作者さまの一助となれれば幸いです。コメディとのことで妙なプレッシャーはあるのですが、あくまでも真面目な感想を述べさせていただきたく存じます。




>第1話 風見鶏令嬢、誕生


 主人公の語りによる世界観の解説からのスタートですね。堅実な始まり方であると思います。教会による世界統一。言語・文化・習慣までも統一された世界というのはディストピア感が満載ではあるのですが、ワクワクする世界観でもありますね。



 そうですね、これは先に触れておいた方がいいでしょう。これには〝良い意味〟と〝良くない意味〟の両方を含んでおります。仕方のない部分というか、正解のない部分といったところですね。あくまでも個人の考えとしてお聞きください。


 やはり「地の文からして関西弁」というのは、強烈な個性ではあるのですが、いきなり読者を選別してしまう手法ではありますね。


 なぜなら関西弁に馴染みの無い方には、意味がしっかりと伝わらず、さらに「私のような大阪生まれ大阪育ちの者」にとって、「これ発音おかしないか?」と違和感を抱かせる部分が出てまいりますと、途端に「なんやエセやないか! やんならちゃんとやらんかい! ほんま頼むで」と感じてしまうためですね。


 こうした関西弁が「お笑い」や「がめつい商人」といった、記号化された使い方をされることで、怒りをいだく人がいるのと同様ですね。大阪人は「全員が吉本芸人」ではありませんからね。私のように忌避をいだく者も住んでいます。


 ですので、こうした手法の作品を読むためには、読者側からも「歩み寄る」必要があるわけですね。書き手側としてもガッツリとした関西弁を書いてしまうと「ここ、どうしても読みづらくなってしまうな」という部分が出てしまうはずですから。


 たとえば〝思うとります〟の部分などは、発音的には「おもとります」となるわけです。しかし、この字面を見た感じ、どうしても「誤字」だと感じる感覚の方が先行してしまうわけですね。「とります、って何?」といった感じに。


 これを避けるには中間というか、ギリギリ「誤字ではない」と、はっきりわかるラインを攻める必要があるのです。しかしながら、そのラインはガチ関西弁の使い手からすると「誤字っとるやろが」となるわけですね。


 つまり、こうした事情を、読み手側も汲み取り、歩み寄る必要があるわけです。なので、どうしても「読者は選ばれてしまう」というわけですね。



 はい、ということで。


 ここからは「汲み取った読者」としての立場になり、あまり関西弁の部分には触れずにストーリーを追ってまいりますね。肝心なのはストーリーですからね。


 主人公の名前が〝ニーナ〟であることと、〝トコナミア〟という国の公爵令嬢であることなどがわかります。いわゆる「箱入りで育てられたお嬢様」ではなく、かなり自由奔放で破天荒な性格のようですね。


 ここでライオネルというイケメンが登場するのですが、彼もなかなかぶっ飛んだ性格の様子。ぶっ飛んだ者同士ということで、展開もぶっ飛んでいて面白いですね。それでいて「なぜニーナが異端審問にかけられたのか」の理由も明確に描かれており、構成としても非常に納得のできる流れであると感じました。


 そして最後は本当に〝風見鶏〟となってしまったわけですが。どこまでが本当のことなのかよくわからないところも味がありますね。このニーナの自由さも相まって、「信頼できない語り手」としての面白さも加味されているのではないでしょうか。




>第2話 風見鶏令嬢、“ポイ活”を始める。


 前回のあらすじから開始です。やはり堅実に物語を進めようとされておられるようで、私としては良いやり方であると思いますね。この作風ならば、こうしたメタなネタもアリであると感じます。


 風見鶏となったニーナがいきなり苦難に見舞われておりますね。所々に差し込まれる〝尻の穴〟が個人的にはお気に入りです。下手に飾らず、さらりと言うあたりがコメディらしくて良いですね。14歳のお嬢様が言っていると思うとじわじわきます。


 さらに新キャラも登場ですね。チャラい口調の守護天使〝チャランヌ〟です。彼のストレートな名前には、普通に「素」で笑ってしまいました。これまでの堅実さからの、〝良い意味〟での落差ですね。


 そしてチャランヌの協力もあり、ニーナは風見鶏状態のまま無事に街の子供たちを救う。こうして〝フラミンゴス・ポイント〟を貯め、元の姿に戻って教会の連中に復讐するのが彼女の目的であると。作品の実際の着地点がどこであれ、やはり「主人公自身がいだく目的」が序盤に示されるのは良いですね。


 ここのポイントの流れはスピード感も相まって、一気に作品世界に引き込まれましたね。本作のだいたいの方向性も見えはじめたということで、ここで本作のファンになった方も多いのではないでしょうか。もちろん私も、その一人ですね。




>第3話 風見鶏令嬢、笑いに走る


 声を取り戻し、少しだけ人間に近づいたニーナ。そんな彼女の元へ、偉い司教が訪れる場面からのスタートですね。


 ここは素直に「面白い」の一言ですね。しっかりと世界感に沿ったギャグが展開されておりますし、没入感を損なうことなく笑わせていただきました。


 主人公が動けない、つまり場面転換ができない状態で物語を進めるのは難しいことだと思うのですが、しっかりと話が進んでおりますね。素晴らしかったです。




>第4話 風見鶏令嬢、戦慄が走る


 司教の前で〝奇跡〟を起こそうと奮闘するニーナ。無事にポイントも稼ぎ、ライオネルも再登場ですね。


 どうやらニーナの両親は物凄く強いようで、三人の兄がいることもわかりました。ただ、次男の名前が〝ジオン〟なら〝クワバタマン〟よりも、もっと「それっぽいもの」に振り切った方が良かったかもしれませんね。おそらくジオンという名前を聞けば、多くの方が「あの公国」を思い浮かべると思いますからね。メタな作風ならば、軽いパロディも受け入れられるのではないかと考えます。


 あと、ここの〝お婆さんを無事に確保(つまりは逮捕)〟というのはギャグなのか誤字なのか判断できませんでした。「実はお婆さんの方がヤベェ奴」だったとも受け取れるのですが、〝保護〟の誤用なのかなとも考えられましたので。




>第5話 風見鶏令嬢、説明責任を果たす?


 ニーナの兄らの詳細が語られますね。次男のジオンに続き、長男〝チョコビッチ〟と三男〝サンタモニカ〟とのこと。なんと彼らは三つ子だとか。


 この〝サンタモニカ〟なのですが、サンタ(セイント、つまりは聖人として認められた者に与えられる称号)の名付けは、教会が支配する世界的に許されるのか否かは少し気になるところですね。これはあくまで世界観を考察したうえでの感想ですので、決して良くない意味ではないですからね。それだけの現実性を持った世界を構築されておられるということで、〝良い意味〟としてお受け取りください。


 そしてジオンは、やはりジオンでしたね。一度スルーしてからの直球勝負。とてもお見事です。声を上げて笑わせていただきました。


 この三人の中では、やはりチョコビッチがお気に入りですね。部屋を妹の写真で埋め尽くしているという点が素晴らしいです。


 最後は新たな守護天使〝ユルンヌ〟の登場と、いきなりとんでもない展開に。まったく予測不可能ですね。読んでいて非常に楽しいです。




>第6話 風見鶏令嬢、幼稚園の学芸会を思い出す


 どうにか惨劇は回避されたものの、衝撃的な事実が明らかになりましたね。この世界の仕組みもさらに深堀りされておりました。


 世界観を重視する私としては好きな展開なのですが、本作を完全なるコメディとして見た場合ですと、ここまでが完全にギャグ路線だっただけに、このシリアスさ加減でも、割り増しで加算されたといったところでしょうか。




>第7話 風見鶏令嬢、悪魔と悪魔狩りに出会う。


 大天使に続き、今度は悪魔〝トラスト〟が登場ですね。彼の性格は一発で把握できましたので、とても親しみが持てました。間違いなく好きなキャラですね。さらには第三天使〝ガリンヌ〟も登場と、盛り上がってまいりましたね。


 どうやら、この風見鶏にも秘密が隠されている様子。この世界のことが、ますます気になりますね。もちろん〝良い意味〟です。




>第8話 風見鶏令嬢、天使と悪魔の賭けにされる


 大天使と悪魔の真剣勝負ですね。どんなに滑稽に見えることであっても、真剣に取り組む様子はかっこいいものです。臨場感もあって良いですね。しっかりとこの場面がイメージできました。また、こうした対決の場合、「どちらが勝つのかがわからない」という利点がありますからね。戦闘シーンのような感覚で読めました。


 そして、この世界には「カクヨムに似たなにか」があるらしいと。非常に興味深いですね。おそらくは教会が保有する大書庫かなにかなのでしょう。




>第9話 風見鶏令嬢、“ポイ活”の落とし穴を知る


 勝敗は決し、迷子の少女の運命が決定されました。ここは人情話ですね。ここまでの流れが流れだっただけに、素直に感動いたしました。やはりトラストが良いキャラをしていますね。


 さらに世界観の深堀りもされましたね。悪魔の定義が明確になされているのも、良い点だと思います。あれだけのメタやパロディがありながらも、しっかりと「生きた世界」になっております。これは作者さまの描き方がお見事である証左ですね。



             *



 さて、現段階での最新話まで辿り着きましたので、これで各エピソードの感想を終えさせていただきます。あとは次のページにて、各オプションに基づいた感想のまとめを述べたいと思います。

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