第4話:箱根と大磯と三浦海岸から続く道なのに
母の実家が三浦海岸にあった。
幼き頃、家族5人で頻繁に里帰りをした。
箱根を越える連続カーブに、父の運転する小さな軽自動車はよく揺れた。
心配性な「小さなわたし」は、前を走る大きなトラックが怖かった。
ちいさな掌はいつも緊張していた気がする。
大磯ロングビーチ沿いを通るころ、やっと掌から力が抜けたのを思い出す。
通り過ぎるだけの海沿いの賑やかしい楽園。
「おとな」や「おかねもち」があそぶとこなのかな。
緊張が解けて少しだけ眠くなってきたわたしの憧れだった。
何年か前に父は免許を返納し、三浦海岸の母の実家は昨年更地になった。
あの道を通り、あの場所に行くことはもうなくなってしまった。
あの道を通り、あの場所に行った日々を思うと、少し苦しくなる。
あの道を通り、あの場所に行くことがなくなった道の先を進んでいるだけなのに。
ロングビーチはいつまでもそこにあってほしい。
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