第8話 異母妹の変貌

 そして、わたしは、


「これからは、気品のある態度を取り、継母と対決する。絶対に屈服させてみせる! そして、わたしを救けでくれなかった父親やボワデシャール公爵家の人たちも、屈服させてみせるわ!」


 と決意をしたのだ。


 十二歳になり、学校に入学した後は、この方針に沿って行動した。


 わたしが継母の言うことに対し、反発するようになったので、毎回、言い争いが発生するようになった。


 しばらくの間は、勝負がつかないことが続いていた。


 しかし、わたしが成長していくと、次第にわたしの方が優勢になってきた。


「あなたはそれでもお父様の妻なのですか? あなたはわたしのことを『魅力のない人』とおっしゃっておられましたが、そっくりそのままお返しいたしますわ。あなたのような方は、ボワデシャール公爵家には必要ありません。シャルドリックス公爵家に戻られることをお勧めいたします」


 と言って高笑いをすることが多くなっていた。


 すると、継母は、父親に救けを求めるようになった。


「わたしをルナディアーヌがイジメるのです!」


 という調子で。


 父親は、


「お前の母をなぜイジメるようなことをする! 母を敬いなさいとあれほど言ってい

 るというのに!」


 と言ってわたしを叱ってくる。


 本来は継母の方を先に叱るべきなのに、父親は継母に甘いので、そういうところは全くない。


 わたしはそういう父親に腹が立って仕方がなかった。


「お父様、先にわたしをいじめてきたのは、この方です。なぜお父様は、この方の肩ばかり持つのでしょうか? まずこの方をお叱りください。わたしだけが叱られることについては、全く理解できません」


 わたしは、そう言って反論をすることが多くなっていった。


 ルゼリアはわたしの二歳下。


 幼い頃は、わたしとつかず離れずの位置にいて、わたしもそれほど気にする存在ではなかったのだけれど、九歳になった頃から、継母の影響で周囲に対し、傲慢な態度を取ることが多くなってきた。


 わたしに対しても、姉を姉とも思わない態度を取り始めてきていた。


 最初のうちは、


「まだ子供だから」


 と思ってなるべく気にしないようにしてきた。


 しかし、ルゼリアが学校に入学してしばらくすると、


「わたしはあなたよりも魅力があります。あなたなど姉と呼ぶ言われはありません」


 という言葉を口にするようになっていた。


 わたしはこの言葉に対し、


「何を思い上がったことを言っているの! わたしはあなたの姉なのよ! あなたよりもずっと魅力があるの。お姉様ときちんと呼びなさい!」


 といつも叱りつけていた。


 今思うと、この頃から継母とルゼリアは、王太子妃の座を狙って動き出していたのだろう。


 だから、そのような言葉が出てくるようになっていたのだと思う。


 当時のわたしは、そのことを全く知らなかった


 また侍女を始めとしたフィリシャール公爵家の人たちに対しても、厳しい態度を取るようになっていた。


「なぜわたしを救けてくれなかった!」


 という腹立たしい思いがあったからだ。


 とはいうものの、決してイジメをしていたわけではない。


 オーギュドリュネ殿下は今、わたしに対して、


「ボワデシャール公爵家の人たちもイジメていたそうだね」


 と言っていた。


 しかし、わたしは、腹立たしさをそのまま態度に表して接していたのではない。


 気品を持った態度で接していた。


 それは厳しい態度として現れるのはあたり前のことだ。


 厳しい態度ではなく、柔らかい態度になってしまったら、気品のある態度とは言えなくなってしまう。


 断じてイジメではない。


 継母の方がよほどボワデシャール公爵家の人たちをイジメていたと思っている。

 ボワデシャール殿下は何を言っているのだろう?


 そう思いたくなる。

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