第95話

***


「…ん…?」



ゆらゆらと心地良い揺れで、蝶は目を覚ました。



「え…?」



「…目覚めたか。」



低い声が、耳元から聞こえた。



この声は、



「斎藤?」



「お、起きたな。おはようさん。」



「山崎さん…此処は?」



「小芝がおるんは、斎藤はんの背中やで?」



「いや、そうじゃなくて…え?」



だんだんと目覚めてきた頭が、その意味を理解すると蝶は一瞬固まった。


が、すぐに自分のいる位置を確認する。



筋肉質な背中。


両手で握った、その着物。


そして、少し迷惑そうにこちらを眺める斎藤の顔。



「倒れた小芝をおぶってくれてんのや。感謝しいや。」



「…すまない、斎藤。」



「…ああ。」



見上げれば、空はもう真っ暗だった。



随分と時間が経っていると見受けられた。



…何故、ここにいるのだろう。



「っはは。不思議そうな顔すんなぁ」



「私は…一体どうなっていたんだい?」



「覚えてないんか。」



「…子供を助けて、火消しを手伝う為に走って。それから、被害を小さくするために家を壊すのを手伝ってて…あ。」



思い出した。

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