第83話

ザクッ



下手人は原田の投げた刀によって倒れた。



「竹内、大丈夫か!?」



辺りに敵がいないことを確認しつつ、永倉はその隊士、竹内を抱き起こす。



「おい、竹内!」



少し揺れた拍子に、負傷した胸から更に血が流れ出た。



心臓に最も近い胸を刺されている、致命傷だった。



血を失ったせいで、顔は真っ白。



力の入らない唇はわなわなと震えていた。



「…局、長は…?」



「無事だ。だから、しっかりしろ!」



無事。



その言葉を聞き、彼は安心したようにほうっと息をついた。



薄っすらと開いていた目は、段々とその光を失っていく。



「永倉、さん…最後まで、戦え、ず…すみ、ま…」



それ以降、開いた口からは何も語られる事は無かった。



「…竹内。」



もう吐息を感じられない体の前で、永倉がぐっと奥歯を噛み締める。



いつの間にか隣にいた原田は、静かに俯いた。



「竹内、君…。」



それまで唖然としていた近藤は、動かなくなったら体に少しずつ近づいて言った。



「…私の為に、最期までよく戦ってくれた。とても立派な最期であった。君の死は無駄にはせんぞ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る