第34話

「お前…な…者…っ」



口からも血を吐き出しながら、男は蹴られた腹を押さえつつ立ち上がる。



もう体力も限界なのか、振られる剣に僅かな隙が出来ている。



蝶はそれを避けながら、冷静に苦無を懐から準備していた。



その時、



「うっ…!」



男の刀の切っ先が蝶の右腕を斬りつけた。



利き手をやられたことに気を取られ、蝶は一瞬視線を逸らした。



男はそれを好機とみなし、勢いもそのままに蝶を床へ押し倒す。



「…っ」



勝利を確信した男は、不敵に笑いながら蝶の首に刀を当てた。



一方、蝶は抵抗するも力ではやはり男には敵わない。



「お前には、散々な目に遭わされたからねぇ。普通に殺しちゃあ、面白くないだろ?」



そのままスッと刀を下せば、蝶の細い首に真っ赤な筋が出来る。



「ほう…よく見れば、女か?」



「それがなんだ…!」



男の目が怪しく光った。



「そうだなぁ。逝く前に、いっちょ遊んでやろうか。」



「蝶さ、ん!お前、やめ…ごほっごほっ」




沖田が制するも、またも咳き込み倒れる。



彼の体は、やはり悲鳴を上げていた。



「沖田、動くな。」



「ここに来てまで仲間の心配か。随分と余裕だな?」



「仲間?残念だけどそれは違う。」



男の言葉に、ふっと蝶は鼻で笑った。



顔を動かす度、その首からは血が零れる。



「こいつらのせいで暫く絶食状態なんだ。大迷惑さ、ほんと。」

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