30. 見えないお化け

 アリソンの三角帽がふわりと浮いた。目を懲らしてみるけれども、宙に浮いた帽子以外何も見えなかった。

 若鳥には何かが見えたらしい。翼を大きく広げて一声威嚇すると、帽子はアリソンの頭の上にポトリと落ちた。

 黒猫が呆れた様子で尻尾を揺らす。若鳥は満足そうに翼を閉じて鼻を鳴らした。アリソンは感嘆する。あれほど小さかった鳥が、立派な貫禄を身につけた。そろそろ大きくなったころかしら。

 アリソンは宙に視線を向ける。空ばかりで何も見えない。けれど、黒猫と魔鳥は何か見えているらしく、見えないお化けとお喋りをしている。魔女の目にも見えないなんて、たいしたもの。

 仲間にしたいと思った。でも、どうやって話をすれば良いのかしら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る