第6話 転生ヤモリ、自分について知る
『あ〜……さて、どこから話そうか?』
(正直、私はなんもわかってないからなぁ……どこからでも良いよ?)
というか、私は別に乗り気な返事をしてないのに説明するんだ。
まぁ、ありがたいから聞くけどさぁ?
『ん〜……この世界について説明するって大口叩いちゃったけど、僕も何十年単位でここから出てないからなぁ……取り敢えず、この場所について説明しようか』
(うん? ……うん)
なんか、聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするけど……気のせいだよね?
『ここはね、
……ぅうん、困った。今の一文の中に、なんもわかる情報がなかったぞ。
さてはルビア、説明下手だな?
(そもそも、魔素って何? 魔素溜まりって?)
仕方がない。私がガイドになってやろう。
『魔素は、ここに漂ってる心地良いやつだよ。魔力の元になるものでね? 大抵は、どこの空気にも含まれている良いものなのだけど……
(つまり、ここは魔素溜まりってこと?)
ふぇ〜……やっとわかってきたよ。
全く、世話が焼けるな。
あ、お礼は解毒したヘビ肉食べ放題で良いからね?
『そうだよ。そして、魔素溜まりの周りでは、魔素の影響で変異してしまった動物や環境が生まれてしまうんだ。それが迷宮と魔物。ここは外の世界で【始まりの地】と呼ばれている迷宮だね』
ふんふん? ……つまり、ここの巨大蜘蛛様とか巨大カエル様とか巨大ヘビ様とか巨大イナゴクソ野郎は、外の世界にはいないってことね!!
うわぁ〜、良かった〜!!
外で行ってもあんな奴らがいたら、マジで絶望するとこだったよ。
こちとら、外の人間が文化的生活を送っている事に賭けて生きてんだからな!!
んぁ? 待て。迷宮で生まれた生き物=魔物……?
私、もしかしなくても衝撃の事実に気がついてしまったぞ。
(……もしかして、私も魔物?)
『うん、そうだね』
(うがぁぁぁあああ!! なぁに軽く頷いてくれてんですかルビアのアホォ!! 私、流石に全長が一メートルを超えてるヤモリが普通のヤモリとかいう無茶を言う気はないけどさぁ……)
マジかぁ……ショック。
……まぁ、ヤモリかヤモリ型の魔物かの二択なだけだし、どっちもどっちか。
『なんなら、エメルはここの本当に異常な魔素濃度に耐えれてるし、その翠色の体の色も独特だから……多分変異種だよ。君は元の種族、 チュトラリー・ゲッコーよりも魔法適性が高いんじゃないかなぁ?』
ヒュゥッ!! 魔法が使えるって?
ヤモリになっただけじゃ飽き足らず、魔法まで使うのかぁ……もう人外まっしぐらだね!! ……最初から人外は人外だけどね!?
『外に出ない限りは大丈夫だけど、魔物ってだけで
(え……? 私、外に出たいんだけど……)
なんてことだ。
この世界は、私をイジメるのがそんなに楽しいのかっ!?
私は、ただ……外に出て、ぬくぬくと布団に包まりながら本を読みたい。
それだけしか望んでいないのに……!!
それだけが!!
いきなり死んで、気づいたら魔物に転生させられて……そんな散々な状況での、私の唯一の望みなのに……!!
必死になって訴える。
お願い、どうしたら外に出ることが出来る?
『……そんなに、出たいんだ?』
(うん!! どうしても、私は本が読みたいから)
『そっか……なら、役に立てるかはわからないけど助言くらいはしようか。出入り口にいるマザー・スパイダーを倒せるくらいに強くなったら、外には出れるよ。アイツがこの迷宮と外を隔てる役割をしているからね。……強くなって困る事はないだろうから、僕も少し手伝おう』
(ありがとう!!)
ルビアの言葉に喜んで、踊り狂っていた私は……ほんの少し悲しそうな、ルビアの瞳に気が付かなかった。
何はともあれ、こうして自分のことを知った私はやっと……夢の実現に向かって、一歩踏み出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます