第4話 魔法で手助け
よし、魔法で服装、髪色も変えたし、これなら俺がアレンってバレないだろう。
流石に俺の名前は悪名高いからな、変装をしないと注目を浴びてしまう。
そんな事を考えながら、俺は周りの街並みを見て感動してしまう。
「ここが……王都」
俺はフィオガルラ王国の王都、「リバーン」の街並みを見て、心が躍るのを感じていた。
モニター越しに見る画面とはまるで違う、リアルな景色。
俺は賑わう街の喧騒を背に、人々の熱気を感じながら噴水がある広場へと足を進めていく。
「てか、こうやって見ると色んな種族がいるんだな」
フィオガルラ王国には、動物と人間の特徴を持ち合わせる獣人族、尻尾が生えた可愛らしい種族まで、実に多彩な住民が共存している。
この世界には数え切れないほどの種族が存在していて、それぞれが独自の魅力を持っているのだ。
そんなことを考えながら広場へ向かうと、背後から突然声を掛けられる。
「す、すみません! ここ周辺で黒色のバッグを見ませんでしたか?」
振り向くと、そこにいたのは冒険者のような服装を纏った女性。
彼女の背には煌びやかなマントを羽織り、水色の髪と水のように澄んだ瞳を持っている。
「すまないが、俺は見ていない。ここら辺で落としたのか?」
「そ、それが……つい数時間前、冒険者ギルドから報酬を貰いまして、ここ王都で色々買い物をしていたのですが、目を離している間に私のバッグが盗まれてしまいまして……」
「盗まれたのか、それは災難だったな。そのバッグは一人で探しているのか?」
「いえ、一応私のメンバーも手分けして探してくれています」
(話を聞く限り、この人は冒険者のクランに所属しているのか。ただ、この広い王都を数人で探すには無理があるな)
「俺も探すのを手伝いますよ。ちなみに、バッグの中には何が入っているんですか?」
「バッグの中には銀貨数枚と「赤い宝石」が入っています。宝石は最近、A級魔物を討伐した際にドロップしたアイテムでして、余りにも綺麗だったので売らずに持っていたんですよ」
その言葉に、俺の心がざわめく。
赤い宝石、それは間違いなく「レッドストーン」だ。
確か魔物から低確率で入手できるアイテムであり、プレイヤーたちの間では非常に危険なものとして知られている。
なぜなら「レッドストーン」を持っている者は、恐ろしい組織「黒神」に狙われる運命を背負うことになるからだ。
その組織は、ある神を崇拝し、その神を召喚するために「レッドストーン」を何百個も必要とするという。
「分かりました、では手分けして探しましょう」
「ありがとうございます! あ、そういえば自己紹介をしてませんでしたね。私の名前はユキと言います。冒険者をしていまして、「雪」というクランに所属しています」
「冒険者だったのですね。俺の名前はアレンです」
「ではアレンさん、情報が集まり次第、皆と合流したいので、あの噴水に3時間後、集合で良いですか?」
「ええ、構いませんよ」
「ありがとうございます! ではまた後で!」
ユキは明るい笑顔を残し、情報収集のために別の場所へと移動していく。
(さて、あの能力を使った方が早そうだな)
レッドストーンには莫大な魔力が宿っている。
なら魔力の場所が分かる、3
ただ、少々時間がかかるため、あまり使われない魔法ではあるのだが。
「まあ、人助けだと思って使うか……」
俺は人気のない場所へと移動し、《アルカナクラス》の魔法を発動させる。
王都は広大なので、探すのに少々時間を要するだろうが、あの魔力を感知することが出来れば一発で見つけられるはず。
そんなことを思いながら、俺は魔法陣を展開し、盗人の居場所を探すのだった。
―――
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