序盤で殺される悪役貴族に転生した俺、前世のスキルが残っているため、勇者よりも強くなってしまう〜主人公がキレてるけど気にしません

@Soraran226

序章

第1話 大人気ゲームの悪役貴族に転生してしまう

「とうとうクリアしたぞ……っ! これで王国編クリアだ!!!」


 夜中の11時、俺は部屋で歓声の声を上げる。


 俺が挑んでいたのはエロゲ「剣と魔法のファンタジー」の最高難易度、王国編だ。


 王国編は相当やり込まないとクリア出来ない難易度となっており、クリアするのは至難の領域だ。


 ただこのエロゲ、クリアして終わりではないんだ。

 

「ステージをクリアすると最後にえっちシーンの絵が出て来るんだよな!」

 

 王国編では、メインヒロインや王女、可愛いメイドなど、魅力的な女性キャラクターが勢揃い。


 立ち絵は何度見ても飽きないレベルの絵であり、俺は絵師さんが出している画集を全部揃えていた。

 

「えっち画像もこれで終わりか……ちょっと寂しいな」

 

 このゲームは王国編で終わってしまう為、もう俺はこの甘美な画像を見ることが出来ない。


 全てのルートもクリアしてしまったし、特別やり込めるような要素は無いため、もうやる事が無くなってしまった。

 

「もう11時だし、そろそろ寝るか……」

 

 俺はPCを付けっぱなしのまま布団に潜り込み、そのまま寝てしまう。


 最近残業が酷いし、会社の人間関係も上手くいってないからもうヘトヘトなんだよな。

 

「はぁ……起きたら横に美少女とかいねえかなー」

 

 俺はそんな淡い夢を描きながら、ゆっくりと目を閉じていく。


 明日から仕事だし、早く寝ないとな……。


 ★


「アスト様、朝です」

 

「ん……まだ寝たい」

 

「そういう訳にも行けません、明日から魔法大学が始まるのですよ。早起きは習慣化しておいた方が良いかと」

 

「何を言って……ええええええええ!?」

 

 不意に飛んできた女性の声に、俺は驚いて目を覚ます。


 俺の目の前にはメイド服を着た美少女が立っていた。

 

(ど、どうなっているんだ!? こ、この人ってリュカさんだよな!?)


 リュカとはエロゲに登場するメイドの名前だ。


 戦闘はサポートもでき、魔法も使える優秀なメイド。


 リュカはプレイヤーからも人気があり、その美貌には誰もが目を奪われてしまう。

 

「どうかされましたか? アスト様」

 

 リュカはまつ毛の瞳をパチクリさせて、俺を見つめている。

 

(ま、まずいな。こう見えてリュカは観察力に凄い長けている。俺が転生者だってバレたりしたらどんな目に会うか分からないな)

 

「す、すまないリュカ。少し悪い夢でも見ていたようだ。それで、少し確認したい事があるのだが……俺の名前はアストで合っているよな?」

 

「はい、間違いありません」

 

 まじで俺はゲームの世界に転生してしまったようだ。


 しかも転生先は悪役貴族であるアスト。


 めちゃめちゃ外れの転生先だな。


 アストはアストリア王国の公爵令息だ。


 家系は名高い魔術師の一族であり、アストの父は3級魔法まで使う事が出来る。


 ゲームの設定だと、確か魔力は血統によるもので決まっているはず。


 この部分の話だけを聞いていれば当たりの転生先だと胸が高鳴る所だが、ここからが悪夢の始まりなんだ。


 俺が転生したアストってのは、潜在能力に恵まれてはいるが、性格がゴミ屑だ。


 平然とメイドを使い倒し、平民に対しては奴隷同然のような扱いをしている。


 容姿に関して言えば、顔立ちは良いものの、性格が終わっているのでゲームのストーリーではよく魔法学校で仲間外れにされていた。


 勿論、悪役貴族というのもあり、序盤で主人公である勇者にボコされるざまぁ対象。


 悪事が次々とバラされていき、最終的にはアストリア王国から追放されるというオチだ。

 

「リュカ、一旦頭の中を整理したいが故、部屋から出てもらえるか?」

 

「かしこまりました。ではあと数十分後にローリン様が来ますので、整理がつきましたら庭に足を運んでください。ローリン様がお待ちです」

 

「ああ、分かった」

 

 俺がそう言うと、リュカはすぐさま部屋から出ていき、俺を一人にしてくれる。


 忠実で献身的なリュカだが、これには理由がある。


 リュカは過去、アスト家に救われたというエピソードがあり、今は忠実に使えているメイドだ。


 アストがどんなに酷い性格でもついてきていたのがリュカだった。


 そういう忠実さがプレイヤーにも評価されていたんだがな。


 俺はリュカが部屋から出て行った事を確認し、口を開く。

 

「まずは……状況確認だ」


―――



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