第14話

芹菜が駐車場までダッシュしている

5分間の出来事──…





「っあ…お疲れ様です、一ノ瀬です。」




海吏はすぐさま芹菜の上司に内線を繋ぐ





「そちらの進藤という男性社員ですが、来月オープン予定の新店舗の立ち上げの応援に長期で出張に出してもらってもいいですか?彼、優秀だと聞いたので臨時でボーナスも出すと伝えてください。まだ若くて独身だそうで…5年くらい本社に戻れなくても大丈夫ですよね?期待してると伝えてください、では─…」





早口で要件だけ述べて通話を終了させようとして、もう1つ大事なことを伝える






「あぁー…あと"一ノ瀬 芹菜"という女子社員ですが、以前から勤務態度が悪いという話しを耳に入れていたので。もう一度"新人研修"を受けてもらうことになりました。進藤さんが出張に出られた頃に戻る段取りで調節しますので、よろしくお願いします。ではこれで、失礼しますね。」




内線を切ってすぐに部屋を出て駐車場に向かう。これで芹菜はモヤシ男.進藤とはもう顔を合わすことは二度とない。





若い独身の男、上の人間に"期待している"と言われ臨時でボーナスまで貰えたとなると、俄然やる気がみなぎって仕事に精を出すか、長期出張にメンタルをやられ退社するかの二択。





─…タダの"一ノ瀬 芹菜"に構う余裕なんて、もはやあのモヤシ男には残されていないという訳だ。






誰の女に手を出したのか分かってないみたいだから、優しく遠回しに"仕事"という形で分からせてやった。やり方次第では名誉挽回できる機会をあげたつもりだ。優しいよね、俺って。





そんなことよりも、モヤシ進藤が出張に出るまでの間、芹菜は出社しなくてよくなった。"研修"という名の隔離。家から一歩も出してやらない、なんて当たり前だよね。だってアイツ浮気したし。俺以外の人間に触れられてるし。






会社でのアイツの立ち位置を、俺が全身を使って教え込んでヤらねぇと。あー…大変な研修になりそうだなぁ、ダメな社員は徹底的に調教しないとね?

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