第9話

別に私じゃなくてもできる仕事。誰でも出来る、パシリみたいなその程度の仕事。





「一ノ瀬さーん、コピー…両面でっていつもお願いしてるんですけど、、」




『っあ…す、すみませんっ!!!』





働くのが嫌だって思っているわけじゃない。でも楽しくて働いている訳でもない。私がここで働く理由なんてひとつしかない。





「っあ…専務っ、なんでこのフロアに?!」



「うわ〜…肌キレイ、色白いし…人形みたい」



「いや、彫刻じゃね?あれはもはや人間国宝」



「同じ"一ノ瀬"でも天と地の差だな、お前」





トンっと同期の男性に肩を叩かれて、ビクッと身体が飛び跳ねる。いやー…"同じ一ノ瀬"なんですけどね、ほんとうは。





私の勤め先は…何を隠そう、旦那サマである海吏サマが専務をされている会社で。





ここは海吏の家が代々引き継いでいる大きな会社。つまり社長は海吏のお父様で、私にとってはお義父さんにあたる人ということになる。






お義父さんにあたる人…なんてよそよそしい言い方をしたけど、お義父さんとはとても親しくさせてもらっている。だからコネ入社みたいな形で私はここに入社させて貰えたわけで。






──公私混同…したくないから、お前が嫁だってことは伏せておく。





っと、入社が決まった時から海吏にキツく言われていたので、私はタダの"一ノ瀬 芹菜"というかたちでこの場所で働いている。

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