プロローグ



幾度の困難を乗り越えやっとの思いでようやく人間として再生する事が出来たあい

その、喜びは簡単に表現できるような嬉しさではなかった。



『洋太ぁ~、飯出来たぞ』

笑顔満点でリビングから大声で洋太を呼ぶあい

『分かったよ、あいちゃん、コレ終わらせたら直ぐ行く』


洋太は相変わらず絵本の仕事で忙しい毎日を送っていた。

あいはそのアシスタント、でもあいにとってはアシスタントの事等どうでも良かった。

ただ洋太の側に居られるそれだけで十分幸せだった。



「おれ、もう絶対、離れないからな、洋太」

洋太を両手で力一杯抱きしめながらあいは永遠の愛を誓っていた。


しかし、あいは未だ自分が”ビデオガール”としての人間として再生されている事等とは全く知る由もなかった。



『洋太ぁ~~~、お~~い、早くしろよ、折角作った飯がさめちまうじゃん』

すこしふてく気味な声で洋太にプレッシャーを掛けるあい

『ごめん、ごめん、もう終わるから』

一度始めるとキリが付くまで終わらない洋太

あいは両肘をテーブルの上に付き両手を頬に添えながらにやけていた

ようやく洋太が二階の仕事部屋から下りて来た

『ごめんねあいちゃん』

あいの目の前で両手を併せて謝る洋太

『もう、遅いぞ洋太、先に食っちまおうかなって』

顔をそっぽに向け怒ってるように見せかけるあい

真剣に謝る洋太の姿を見て

『冗談だよ、ジョ・ウ・ダ・ン、さあ、食べようぜ』

いつもの笑顔で二人の食事は始まった


二人の毎日はいつもときめいていた




『おれ、もう、消えないんだよな』

『うん、あいちゃんはもう消えないよ』

『もう、洋太と離れなくていいなだよな』

『うん、俺があいちゃんを離さないよ』

『もう気持ち押さえなくて良いんだよな』

『ああ、俺はあいちゃんが好きだ』

『おれもだよ、洋太』



しかしそんな二人の幸せな日々は長くは続かなかった

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