第2話 伊吹、異世界に降り立つ

「それで、君は……コスプレイヤーか何か?」

 銀髪の少女をじろりと見た。

「こすぷ? なんじゃ、それは」

「子どもがコスプレなんてしないか」

「子どもじゃないぞ!」

「どう見ても子どもだろ。その髪色以外は」

 髪色は、高齢者によくある色だろうとは思うが、それよりも透き通っていて、でも頭皮が見えるわけでもなく、サラサラと流れて……ないけども。

 おかしい。

 今日は風が強い日なのに、髪がなびいてない。俺が受けるはずの風も全くない。

 そして、ずっと疑問に思っていたが、少女は五センチほど浮いている。人って浮くと、足の指や甲が自然と下に流れるんだなと、関係ないことを考えてしまった。


「そろそろなんじゃが。おかしいのう。時間が戻らん」

「時間?」

「時間を止めているのじゃ。少ししか止められなくてな、もう戻っていてもおかしくないんじゃが……ん!」

 その時、空気が急に震えた。

 空気は震えているのに、地面や建物は全く揺れていなかった。

「今度は何!」

 俺がそう叫ぶと、鉛のように重たく、心に響くような声がした。

「運命をねじ曲げた」

 とても低い聞いたこともないような声が、空気を震わせているのか。

「これは」

 ノジャ……名前を聞いていないので、少女を勝手にそう呼ぶことにした。

 ノジャが何かを話す前に、その低い声は話を続けた。

「それは必要がなくなった。いらない。私の世界には不要」

 声が大きくなり、俺は耳を手で塞いだが、何の役にも立たない!

「異界のモノ共々!」

 ガタンっという音に俺は驚き、目を瞑った。


 再び目を開けると、俺の目の前には木がたくさん生えていた。街並みはどこに行ったんだ。

「何なのじゃ」

 ノジャは相変わらず隣にいるようだ。

 俺はノジャの言葉を聞きながらも、辺りを見渡した。

 ……木しかない。他にあるとすれば、茂み。

「さっきから、何が起きているんだ」

 俺は、ため息をつきながら、気だるくなり地面に体育座りした。


 失敗した。

 地面はほんのりと濡れていた。草に付いた雫をスラックスが思いっきり吸っているのがわかる。

「冷たい……」

「濡れてる所に座るからじゃよ」

「どうでもいいや。誰かこの状況を説明してくれよ」

「すまんのじゃ」

 謝られても、状況が全くわからないので、許したら良いのか許さなくて良いのかわからない。

 ただ一つわかるのは、ここには全く見覚えがないことだ。森や林には来たことがないし。

「とにかく、森だか林だかから、出ないとな」

 俺は濡れてしまったスラックスが気持ち悪いと思いながら、立ち上がった。

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イマジン 準備号〜仲間が強すぎるので、俺は強くならなくて良いらしい〜 夜須香夜(やすかや) @subamiso

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