精力だけは旺盛な陰キャモブ高校生の俺、子供を作ったら偉い世界線に転移したらハーレムだった件

月白由紀人

第1章 会合編(第1話~第13話)

第1話 山城澪 その1

「私を……孕ませてください♡」


 私立彩雲学園高等部。二年二組の放課後の教室には、俺、三河晴斗みかわはるとと、クラスメートの山城澪やましろみおの二人しかいない。


「私、子供が欲しいんです。卑しい女だと思われるかもしれませんが、ずっと晴斗君のこと、狙ってました」


 そう言いながら、熱いまなこで火照った顔を向けてくる澪を、窓からの夕陽がまぶしく照らしている。


 澪といえば、長く艶やかな黒髪に深い瞳が印象的な、学園の高嶺の花だ。容姿端麗で成績優秀なお嬢様で、とても先ほどの様なセリフを口にする女生徒だとは思えない。


 だがしかし、今はブラウスの上からもわかる大きく膨らんだ胸を震わせながら、赤く色づいた口からは吐息が漏らし……。俺を見つめている顔は、発情したメスそのものにしか見えない。


「確か……」


 俺は、今日の朝起きてからの記憶を呼び覚ましながら、澪に確認する。


「子供を作るのが凄く偉くて社会でもてはやされて、普通の人ならそれだけでもう上級国民扱い……なんですよね?」

「はい!」


 澪は、顔をほころばせて、想いを吐露してきた。


「確かに私の家は裕福な旧家で、小さいころから英才教育も受けてきました。何不自由なく育てられて、何の不満もないと思われるかもしれませんが、子供の頃から憧れてきたんです!」

「ええと……なにに?」


 澪の勢いと情熱に押されながら、俺がなんとかたずね返すと、澪がいきなり言い放ってきた。


「シングルマザーにです! シングルマザーって、女の憧れじゃないですか!」

「え? そう……なんですか?」

「はい! 女として生まれたのなら、一度はシングルマザーになってみたいじゃないですか!」

「い、いやそれは……。たとえば生活費……とか、どう……すんですか?」


 その俺の疑問にも、澪は微動だにしない。


「なにを言っているのですか? 国からの無尽蔵の報奨金で、タワマンでも豪華な一軒家にでも住み放題じゃないですか?」

「そうなん……ですか!」

「はい! 愛する殿方との愛し子を一人で独占、育てられるんですよ。もうその責任と充実感は、社会の頂点と言っても過言ではありません!」


 キラキラした目を向けて熱弁してくる澪に、一遍の迷いも感じられない。俺は何と返答しようかと、迷っていると、澪が畳みかけてきた。


「あ。勘違いしないでくださいね。世の中にはこのご時世、子供さえ出来ればお相手は誰でもいいという風潮がありますが、私はそうではありません」

「俺、イケメンでもない、ただのモブなんですが……?」

「謙遜なさらないでください。不肖この私、このクラスに入ってからずっと晴斗さんを見てきて、この他人想いの優しい殿方なら身をゆだねてもいい、ぜひ身をゆだねて激しく私を満たして欲しい……と、ずっとお慕い申し上げてました♡」

「そうなの!?」

「はい!」


 驚く俺に、澪がハッキリと答えてきた。


「晴斗さんの心根は私自身で確かめましたし、晴斗さんが人並み外れて精力旺盛で、それはもうものすごく激しくて女性が我を忘れるくらいで、カラダを重ねれば絶対に妊娠すること間違いなしと、学校裏サイトでも有名な話なんですよ」

「え? なにそれ!?」


 ぽっと、言ってしまって恥ずかしいという様子で、両頬に手を上てる澪。確かに俺は、モテないわりに性欲だけは旺盛で、この世界線にくる前は一人で毎日何度も過酷してたのはそうなんだが。


「ふつつかで淫らだとお思いでしょうが……いかがでしょうか。時間も頃合いですし。このあと駅前に直接出向いて……。その……。あの……。ホテルで……というのは?」


 澪が、言うのが恥ずかしいという様子の上目遣いで口ごもりながらも、その瞳に期待を溢れさせて俺を見つめてくる。


「いや……。それは……」

「晴斗さん。この澪に、お情けを……頂けないでしょうか?」


 うるうるとした瞳で見つめてくる澪。俺が煮え切らないと、澪はとたんに顔を曇らせた。


「私のこと、お嫌いですか? それとも、私に、女性としても魅力が足りませんか?」

「いや。澪さんは素敵です。クラス委員としての姿を尊敬してますし、女性の魅力もバッチリです!」

「私と肌を重ねて、私を攻めてくださるの、嫌ではありませんか?」

「嫌だなんて。むしろこちらから頼みたいくらいですがでもしかし……」

「なら、善は急げです! 二人で、健康にも世界にもよい汗を流しましょう!」


 澪がぱあっと顔を華やかして、俺の手を取る。その輝いた瞳と性欲には逆らえなかった。俺はその澪と連れ立って校舎を後にしながら、この世界線はいったいどうなってるんだ……と、今日の一日を振り返るのであった。

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