第50話 援軍

「やっと抜けた! 風間さんモコちゃん大丈夫!?」

「ピキィ~!」


 どうやら秋月は無事穴から抜け出すことが出来たようだ。その後ラムの縄も解き駆け寄ってきてくれた。俺の側には心配そうな顔をしたモコもいる。モコだって近藤からの攻撃でボロボロだというのに俺のことを心配してくれて――俺はモコを抱きしめたくなったが決着がついたと思うと肋がズキズキ傷んできた。

 

 それでも片腕を伸ばしてモコの頭を撫でてあげることは出来た。


「モコ、よく頑張ったな。偉いぞ」

「ワン!」


 モコが尻尾を振って吠えた。何だか笑顔になってる気がした。


「風間さんもモコちゃんも酷い怪我……痛いよね?」


 秋月が心配そうな声で聞いてきた。


「正直言うとかなり痛いけど大丈夫だ」


 心配かけてはいけないと俺はなんとか立ち上がった。


「無理しちゃ駄目だよ」

「大丈夫だ。それよりあいつら――」


 近藤と金沢は倒したがまだ残ってる。まぁあいつらは戦う根性はなさそうだが。そんなのがあれば俺たちが戦っている時になにかしてきただろうからな。


「風間さん肩をつかって」

「大丈夫だって」

「いいから!」


 結局俺は秋月の肩を借りる形で歩みを進めた。なんとも情けない思いだが正直言えば助かる。


「お前ら観念しろ。二人は倒したからな」

「ワン!」

「ピキィ~!」


 俺が連中に向けて言い放つとモコとラムも続いて声を上げた。すると連中に動きがあったわけだが――


「ははっ、あはははははははッ!」


 連中の一人が突如大声を上げて笑い出した。何だ? 自棄やけにでもなったか?


「どういうつもりか知らないけど、ケジメはしっかりつけてもらいますからね!」


 ムッとした様子で秋月が言い放った。まぁ散々好き勝手しておいてこの態度だからな。不機嫌になるのもわかる。


「馬鹿が! 俺たちが何もしてないとでも思ったか? 既に連絡済みなんだよ!」


 笑っていた男がスマフォの画面を見せながら言い放った。連絡済みだって? 一体誰と――


「よぉ。来たぜ」

「ハハッ、マジでのびてるぜ近藤の奴」

「金沢もかよ情けねぇなぁ」


 声がして振り返るとニヤニヤした顔の男が三人立っていた。まさか、呼んだというのはこいつらか……。


「お、カワイコちゃんいるじゃん。ラッキー」

「男は邪魔だな」

「女に肩を借りてるような奴だ。どうせ大した事ないだろう?」


 そういった男たちはそれぞれ手斧、剣、金棒を手にしていた。更に三人ともジョブストーンの嵌った腕輪をしていた。最悪だ。この状況で三人なんて無理が過ぎる。


「秋月、俺が気を引くからモコとラムを連れて逃げろ」

「ちょ! 何言って」

「ワン!」

「ピキィ!」

「いいから!」


 そう言って俺は秋月から離れて鍬を構えた。モコとラムも心配そうにしているが、なんとかスキルを一発使えれば目眩ましぐらいにはなるはずだ。


「馬鹿が逃がすわけねぇだろうが」

「そうですよね! やっちゃってくださいよ」

「たく調子のいい奴だな」

「ま、いいか。そっちは冒険者みたいだからな。また人狩りやろうぜ」


 そう言って舌舐めずりをしだす三人。物騒なことまで口にしているのもいる。これは意地でも逃さないと。


――ブォンブォンブォブォブォォオオン。


 その時だった。どこからともなく激しい音が聞こえてくる。これは排気音か? かなりけたたましく鳴り響いていて、しかも段々と近づいて来ていた。


「あん? 何だこの音?」

「流石! 更に援軍を呼んでくれたんですね!」

「いや、他になんて呼んだか?」

「いや、俺は特に――」

  

 近づいてくる轟音に三人組の男も動揺しているようだ。だけどこの連中が呼んだわけじゃないってことは一体――


 俺がそんなことを考えていると遂にダンジョンのすぐ側まで音が達し、かと思えばダンジョンの入口から白と黒の二台のバイクが飛び込んできた。


「な、なんだ!」

「誰だこいつら!」


 三人組の男が驚きの声を上げた。この反応を見るにやっぱりこいつらの仲間じゃないんだな。


 飛び込んできたのは見た感じ大型のバイクだ。両方ともナナハンぽいな。両方とも二ケツでやってきている。四人ともヘルメットをしていて顔はわからなかったがただ一つだけ確実なのは四人揃って特攻服姿だということだ。


 特攻服の色は白で背中には般若の刺繍が施されている。なんとも言えない迫力だ。そんな二台のバイクがドリフトを決めながら寸分狂わぬ動きで同時に止まった。


「やれやれ。緊急だっていうから来てみたら見知った顔がいたもんだねぇ」


 この声は、女性? しかも何だか聞いたことのある声のような――そう思いながら固唾をのんで見ていると、バイクから降りた四人がヘルメットを脱いだ。驚いたことに四人とも女性だった。


 しかもその中の一人、あの長い金髪と鋭い瞳には確かに覚えがあった。そうだ、公園で知り合った鬼姫だ――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る